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一番星は泡沫を泳ぐ
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しおりを挟む期待と緊張で心臓がうるさい。
目の前の獲物を品定めするようにじいっと僕を視姦する極上の男。それだけで呼吸が荒くなって、露になった肌がピンクに染まる。
それを視認した律は口角を上げる。欲望を隠そうともしない律は少し怖いけど、あまりにも妖艶で魅惑的だった。
「紡の気持ちに気づかなくてごめん」
「……ううん」
ぐずと鼻を鳴らせば、目元に唇を寄せられる。たくさんの謝罪の代わりに、何度も贈られるキスが嬉しい。熱っぽい視線に焦がされそう。
お互いの呼吸とリップ音が部屋に響く。ぬるりと唇の間から入ってきた舌を絡めて、絡め取られて、その気持ちよさに頭がぼーっとする。
耳を擽られて身を捻じれば、両手で頬を覆われて逃げ場がなくなった。律に身体の自由を掌握されていることに歓びを感じる。まだキスしかしていないのに、もう何も考えられないぐらいぐちゃぐちゃだ。
ようやく唇が離れて、唾液が口の端から垂れていくのも気にならないぐらい、はあはあと荒く息を乱す。ぺろりと舌なめずりした律は、そんな僕を見下ろして目を細めた。
「……ずるい」
「何が?」
「いつも律ばっかり余裕ある」
僕はキスだけでこんなに乱れてしまうのに。
大人で経験者の余裕が羨ましい。そう思っていれば、僕の手を取った律が自らの胸に当てる。
ドクドクと自分と同じような速さで主張する心臓の音を感じて表情を伺えば、律は恥ずかしそうに白状する。
「俺だって余裕ないよ。臆病なくせにかっこつけて、大人ぶってるだけ」
「…………」
「ずっと紡に触れたかったのに、紡を怖がらせるのが嫌で、断られたらどうしようって逃げてた」
「……僕は律になら何されてもいいのに」
「そんなこと言ったら付け上がるから駄目。……かっこ悪くて、泣かせてばかりでごめん」
「律は、いつでもかっこいいよ」
「今だって、こんなに緊張してるのに?」
「うん、律でも緊張とかするんだね」
「ふ、俺をなんだと思ってるの」
「神さま」
即答すれば、律は「そうだったね」と諦めたように笑った。
「……でもね、これからはちゃんと恋人として隣に立ちたいから、神さま扱いするのはもう止めるって決めたんだ」
すぐには無理かもしれないけれど、ただの東雲律を愛したい。芸能人として見るじゃなくて、彼自身をちゃんと。
それはここ最近ずっと思っていたこと。告白すれば、律はしみじみと喜びを噛み締めるように口角を上げた。
「ありがとう。好きだよ、紡」
「うん、僕も」
「もう止まれないよ」
「律の、好きにして」
額を合わせて、鼻を擦り合わせる。甘い声で囁かれれば、それだけで骨抜き。
掠れた声で懇願すれば、律の瞳の炎が再び燃え上がった。
指先や唇、視線、律の全てが僕を好きだと訴えかけてくる。
脇腹を通りすぎて、何の膨らみもないそこを柔く撫でられる。ぞわと背筋が震えて身を捩るけれど、律の手は止まらない。
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