108 / 114
カーテンコールに花束を
1
しおりを挟む【side R】
JTOの収録を終えた後、すぐに紡と一緒に家に帰りたかったけれど、とある計画のためにスケジュールを詰め込んでいるせいでテレビ誌のインタビューとCM撮影の仕事が残っていた。
今はインタビューは終えて、ハウススタジオでのCM撮影中。表情はにこやかに取り繕いながら、内心早く帰りたいと急いていた。これまでは空虚な家に帰ることを憂鬱に思っていたのに、紡がいるというだけで全くの別物になってしまう。
「律さん、顔」
「分かってる」
スタッフさんがセットを変えている間、つかの間の休憩。パイプ椅子に座ってスマホをチェックしていれば、楠木さんに叱られる。
眉間に皺が寄っていることは自覚していたけれど、そろそろイライラも溜まってくる。どうして今日に限って、二時間も予定より遅れているんだ。
今頃、よく頑張ったねと紡をどろどろに溶けるほど甘やかして、優勝をお祝いしていたはずなのに。計画が全て狂っている。
時計を見れば、もう少しで日が変わる。俺の帰りを健気に待つ紡はまだ起きているだろうけれど、今日はかなり疲れたはずだ。ソファで寝落ちる前にベッドに入るように連絡すれば、すぐに『待ってるよ』と返信が来た。
「はぁ~~」
「律さん?」
「早く紡に会いたい」
「漏れてますよ、抑えてください」
綺麗にセットされたメイクや髪型が崩れてしまうことも忘れて、机に突っ伏してもごもご言う。『律の顔が見たいから』なんて、可愛すぎるだろ。
最近やっと一緒にいても緊張することが減ってきて、こうやって素直になってくれるのが嬉しくてたまらない。帰ったらすぐに抱きしめてキスをしよう。そう決めた俺は表情を引き締めて、セットに足を進めた。
深夜二時を過ぎた頃、ガチャと音を立ててドアが開く。それを聞きつけた紡がリビングからひょっこりと顔を覗かせて、俺を見つけるとぱたぱたと駆け寄ってくる。その顔があまりにも嬉しそうだったから、たまらずぎゅうっと抱きしめた。
「ふふ、おかえり」
「ただいま」
何度もしたありきたりなやりとりも、紡となら毎回新鮮で嬉しくて、心が弾む。背中に回される腕に幸福感で満たされた。
お風呂に入ったからか、少しぽやぽやしている紡をベッドに押し込んで、手早くシャワーを浴びた。寝ていたらそれでいい。無理に起こすつもりはなかった。
音を立てないように寝室に入れば、布団で顔の半分を隠した紡と目が合った。健気に待っていてくれたことにきゅんと胸が鳴る。
寝ててよかったのに、なんて無粋なことは言わない。代わりに「ありがとう」と言えば、宝石のように輝く瞳が甘く蕩けた。紡の体温で温められたベッドに潜り込めば、紡が口を開く。
「今日の僕、どうだった?」
わくわくと、褒められるのを待つ子犬のような紡が可愛くてたまらない。
「最高だったよ。頑張ったね、紡」
まろい頬を撫でれば、照れながらもその手に擦り寄ってくる。嗚呼、俺の恋人が可愛くてどうにかなってしまいそう。元々人前に出るのが苦手なタイプなのに、あんな大勢の前で愛の言葉を伝えられて興奮しないわけがない。
14
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。
泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。
ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。
高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。
そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。
文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。
ひろいひろわれ こいこわれ【完結済み】
九條 連
BL
母を突然の事故で喪い、天涯孤独となった莉音は、ある夜、道端で暴漢に襲われかけたところをひとりの男に助けられる。
莉音を庇って頭を殴られ、救急搬送された男は青い瞳が印象的な外国人で、一時的な記憶喪失に陥っていた。
身元が判明するまでのあいだ、莉音がその身柄を引き受けることになったが、男の記憶はほどなく回復する。男は、不動産関連の事業を世界的に展開させる、やり手の実業家だった。
この出逢いをきっかけに、身のまわりで起こりはじめる不穏な出来事……。
道端で拾ったのは、超ハイスペックなイケメン社長でした――
※2024.10 投稿時の内容に加筆・修正を加えたものと差し替え済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる