神さまに捧ぐ歌 〜推しからの溺愛は地雷です〜【完】

新羽梅衣

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カーテンコールに花束を

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 どろどろになった体を綺麗にしてベッドに入れば、途端に眠気が襲ってくる。目をしぱしぱさせていれば、律がゆるりと髪を撫でる。


 「改めて優勝おめでとう」
 「……ありがとう」


 いつもより低い、静かな声が耳に響く。じんわりと実感が湧いてきて、やっと律に伝えられると思ったら心臓が一段とうるさくなって、眠気なんて消えてしまった。


 「あのね……、僕、事務所に入ろうと思う」
 「うん」


 様々な業界・業種の説明会に行ったけれど、どれもピンとくるものがなかった。そんな時、律のコンサートを初めて生で見て、ビビっときた。

 自分を卑下してばかりの僕が、歌うことは自信を持って好きだと言える。歌を仕事にできたら……。そんな未来を描いてしまった。

 もしもファイナルで優勝できなければ、律の住む世界は諦めようと思っていた。だけど何とか優勝できたから、まずは律に伝えておきたいことがあった。
 

 「いつか僕がデビューして、律が許してくれる時が来たら……、一緒に歌ってくれないかな」
 「…………やだ」


 煌びやかなステージじゃなくていい。お客さんだっていらない。貴方と一緒に歌えれば、それだけでいい。だって、それが僕の夢だから。

 律の反応を見るのが怖くて視線を逸らしながら言えば、返ってきたのは明るい声色なのに残酷な拒否の言葉。

 やっぱり僕なんか、律の隣に立つのは不釣り合いだ。律だってそう思ってる。身の程知らずな自分が恥ずかしい。

 鉛玉をいくつも飲み込んだみたいに、ずんと胃の中に冷たくて重たいものが溜まっていく。けれど、表情を曇らせる僕の手を取った律は、小さく笑みを零す。


 「これ以上待てないよ」
 「え?」
 「それに俺は一度きりなんて嫌だ。ずっと一緒に歌っていたい」
 「何を言って……?」


 律の言葉の真意が理解できなくて、首を傾げる。以前名刺を貰った事務所に入って、いつか共演できればいいなと思っていただけなのに。


 「ふふ、ちゃんと見てないんだね」
 「?」
 「楠木さんの名刺、貰ってるでしょ」
 「え、」


 腰が痛むのも忘れて、がばりと起き上がる。慌てて財布から数枚の名刺を取り出せば、確かに律の所属する事務所の名前が書かれた楠木さんの名刺が一番後ろにあった。

 貰ったときはどこの事務所のものかなんてそこまで気にする余裕がなかったから、全く気がつかなかった。口をぽかんと開けて固まる僕の前に跪いた律は、左手を取って薬指に口付ける。


 「俺とデビューしてくれる?」
 「……うそ」


 それは、僕らだけのプロポーズ。
 夢にも思っていなかった言葉に声が震える。


 「嘘じゃない。楠木さんにもずっと前から言ってあるし、俺たちはもうそのつもりで動いてる」
 「でも、だって、……僕なんか、」
 「紡はどうしたい?」
 「……僕が隣にいてもいいの?」
 「紡の夢は俺の夢でもあるんだよ。これからもずっと、隣にいてよ」
 「っ、うん」


 ぐしゃりと顔を歪めればすぐに抱き締められる。そして甘い口付けを交わせば、余計に涙が溢れてくる。

 そんな僕を愛しげに見つめるのは、最愛の神さま。僕の愛を受け止めて、夢を叶えてくれる唯一無二の存在。

 まだ、僕の夢は叶ったわけじゃない。
 これから進むのが茨の道だと分かっていても、もう引き返さない。

 何があっても大丈夫って、信じられる。
 隣にいるのが律だから、僕らはきっといつまでも夢を見ていられる。


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