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第三章 クリミナティ調査編
第52話 2日前 前編
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酷く頭が痛い、昨日ラフォスに派閥の事を伝えてからと言うもの、ろくに眠れず、ずっと国王暗殺作戦の事を考えていた。
彼は自分に何を伝えたいのか……派閥に誘われたのはラフォスの件もありごく普通の事と思っていたが良く良く思えば第三派閥のイルフォード家からは勧誘を受けていない……グレルドの派閥は考えれば考えるほど怪しかった。
彼は派閥に加入させてくれたにも関わらずラフォスに事を伝えると言う頼みだけをしてそれ以外は何も話さなかった……後日話があるとも言っていない、それにラフォスにグレルド派閥へ入ったと伝えた時のあの悲しげな何処か哀れむ様な表情……不自然だった。
何十時間にも及ぶ長考の所為で寝れず目の下にクマが出来ている、ランスロットは必死に目を擦り眠気を堪えると一階へと降りて行った。
「ひどい顔、ランスロット」
目を擦りリビングに入ってきたランスロットの顔を見てマリスはそう呟く、鏡を見なくとも自分の顔が疲弊しきって居るのは分かっていた。
だが妙だった、毎日鍛えて居る筈なのに数十時間寝ずに考えただけでこんなにも疲労するものなのか……不自然だった。
「マリス様……俺の体に何か異変ありませんか?」
「異変……別に感じない」
ランスロットの身体を見回すがマリスはそれらしき物を感じない、身体がダルく重かった。
今日は街の調査を行いアウデラスに報告すると言う仕事がある……休む訳には行かなかった。
「それじゃあマリス様……街の調査に行ってきます」
「気を付けて」
リビングを出ようとするランスロットにそう優しく声を掛けるマリス、その言葉にランスロットは振り向くと笑顔で頷いた。
初めてマリス様から心配の声を掛けてもらった……だが裏を返せばそれ程に自分は疲弊しきって居る、早い所調査を終わらせて休みたかった。
ランスロットは扉を開け外に出る、外は雨が降りしきっていた。
今の時刻は凡そ9時、だが雨雲の所為で陽は刺さず、辺りは薄暗かった。
「こう言う時に限って雨か……」
小さく文句を言いランスロットは玄関に立て掛けてある傘を手に取ると広げる、そして降りしきる雨の中を歩き出すと商店街へと向かった。
貴族が住む居住区から商店街へ近づくにつれ見かける人々はごく一般的な市民ばかりになって行く、雨なのにも関わらず商店街は活気に満ちて居た。
飛び交う声、雨にも関わらず多い人通り、傘がぶつかっても誰も何も気にしなかった。
「調査と言われてもな……」
具体的に何をするのかは聞いていない、一先ず街を歩くが特に他国と変わりもなく赤茶色のレンガで作られた家が立ち並ぶ街並み、だが流石に貴族が住む居住区の近くに位置するだけあってゴミなどは無く裏路地も綺麗に掃除されて居た。
ふらふらと裏路地の方に足を踏み入れる、大通りから離れれば離れる程辺りは静寂に包まれて行く、外の空気を吸うだけで悪かった気分は多少マシにはなっていた。
雨粒が傘を打つ音だけが鮮明に聞こえる、誰も居ない、なんの声も聞こえない静かな裏通り……心休む空間だった。
「俺は……アルカド王国の守護者補佐として相応しいのだろうか」
ふと唐突な不安感に襲われる、アルセリス様がどんな意図を持って守護者補佐に任命したのかは分からない……守護者補佐の中で自分は一番弱い、下手すれば守護者の配下にも強い人物は居る……何故そんな自分がマリス様の下で補佐としてやらせてもらって居るのか分からなかった。
自分の取り柄と言えば忠誠心の強さくらい……漠然とした不安がいつしかランスロットの表情を暗いものにして居た。
いつしか捨てられるのではないか……そんな気がしてならなかった。
何故急にこんな事を考え出したのかは分からない……だが何故か不安で仕方が無かった。
「お兄さん……暗い顔してるね」
立ち止まり空を見上げて居るランスロットに掛かる一人のどっちらの性別とも判断しかねる中性的な声、その声にランスロットは視線を落とすとそこには金髪ショートの少し薄汚れた元々は白だった服を着た少女……だろうか、見た目的には少女が傘もささず雨に濡れて立っていた。
「色々あってね……傘もささずに君はどうしたのかな?」
そう言いランスロットは少女を傘に入れる、何か……諦めきった様な目をしていた。
「僕はどうもしてないよ」
「どうもしてないって言っても……」
僕と言う一人称が妙に引っかかるがランスロットは特に気に留めることも無く少女を見る、少し不思議な雰囲気だった。
「お兄さんは何でそんなに暗い表情をして居るの?」
そう首を傾げ尋ねてくる少女、彼女に言った所で分かるかは分からない……だが誰かに話して置きたい気分だった。
「たまに……自分は誰にも必要とされて居ないんじゃないかって思うんだ、昔は皆んなに慕われていた……でもそれは飽く迄過去、現在の自分には何の価値も無い、そんな気がしてね」
「そんな事無いと思うよ、人間誰かしら何かの価値は持って居る、必要としてくれる人も居るしね」
「どうしてそう思うんだ?」
「例えば……彼処で寒そうに身を震わせてるあの子、あの子は貴族の出身で基本的に様々な人を下に見ていた、でも最近家族全員が貴族に暗殺されてああやって一人ぼっちになったんだ、一見無価値な彼だけど彼に見下されて居た人達には価値があるんだよ、殴られる事でね」
そう言い寒そうに身を震わせて居るボロボロになった服を着た少年を指差す少女、彼女の言っている事に多少共感出来るかも知れなかった。
だが……そんな価値に何の意味があるのだろうか。
「成る程……僕よりも過酷な状況下に居る人は一杯居るって事だね」
「そう言う事、だからお兄さんは無価値じゃ無いよ、僕にこうやって傘を差し出してくれる優しさもあるんだしね」
そう言って笑う少女、その言葉を残すと少女は駆け足で何処かへと行ってしまった。
アルセリス様に必要とされたからアルカド王国に居る……それなのに自分は無価値などと言う考えはアルセリス様に失礼……気持ちを入れ替えなければならなかった。
ランスロットは頬を叩くと気合を入れ直す、裏路地で油を売って居る暇は無かった。
昨日の王暗殺作戦の真偽が気になる……じっくりとクリミナティ調査をして行くつもりだったがあれが本当なら時間は無い……一先ずグレルドの屋敷に侵入して探る必要があった。
今日は幸いにも雨、番犬などが居ても雨で音は消え匂いも無くなる……だが念の為夜まで待った方が良さそうだった。
「それにしてもさっきの子は誰だったんだ?」
突然現れて颯爽と消える……不思議な子だった。
最後まで性別も分からずじまい……もっとも謎だったのはあの服装、孤児なのだろうか。
そんな事を考えながらランスロットは雨が降る裏路地を水溜り踏みしめ歩いて行った。
彼は自分に何を伝えたいのか……派閥に誘われたのはラフォスの件もありごく普通の事と思っていたが良く良く思えば第三派閥のイルフォード家からは勧誘を受けていない……グレルドの派閥は考えれば考えるほど怪しかった。
彼は派閥に加入させてくれたにも関わらずラフォスに事を伝えると言う頼みだけをしてそれ以外は何も話さなかった……後日話があるとも言っていない、それにラフォスにグレルド派閥へ入ったと伝えた時のあの悲しげな何処か哀れむ様な表情……不自然だった。
何十時間にも及ぶ長考の所為で寝れず目の下にクマが出来ている、ランスロットは必死に目を擦り眠気を堪えると一階へと降りて行った。
「ひどい顔、ランスロット」
目を擦りリビングに入ってきたランスロットの顔を見てマリスはそう呟く、鏡を見なくとも自分の顔が疲弊しきって居るのは分かっていた。
だが妙だった、毎日鍛えて居る筈なのに数十時間寝ずに考えただけでこんなにも疲労するものなのか……不自然だった。
「マリス様……俺の体に何か異変ありませんか?」
「異変……別に感じない」
ランスロットの身体を見回すがマリスはそれらしき物を感じない、身体がダルく重かった。
今日は街の調査を行いアウデラスに報告すると言う仕事がある……休む訳には行かなかった。
「それじゃあマリス様……街の調査に行ってきます」
「気を付けて」
リビングを出ようとするランスロットにそう優しく声を掛けるマリス、その言葉にランスロットは振り向くと笑顔で頷いた。
初めてマリス様から心配の声を掛けてもらった……だが裏を返せばそれ程に自分は疲弊しきって居る、早い所調査を終わらせて休みたかった。
ランスロットは扉を開け外に出る、外は雨が降りしきっていた。
今の時刻は凡そ9時、だが雨雲の所為で陽は刺さず、辺りは薄暗かった。
「こう言う時に限って雨か……」
小さく文句を言いランスロットは玄関に立て掛けてある傘を手に取ると広げる、そして降りしきる雨の中を歩き出すと商店街へと向かった。
貴族が住む居住区から商店街へ近づくにつれ見かける人々はごく一般的な市民ばかりになって行く、雨なのにも関わらず商店街は活気に満ちて居た。
飛び交う声、雨にも関わらず多い人通り、傘がぶつかっても誰も何も気にしなかった。
「調査と言われてもな……」
具体的に何をするのかは聞いていない、一先ず街を歩くが特に他国と変わりもなく赤茶色のレンガで作られた家が立ち並ぶ街並み、だが流石に貴族が住む居住区の近くに位置するだけあってゴミなどは無く裏路地も綺麗に掃除されて居た。
ふらふらと裏路地の方に足を踏み入れる、大通りから離れれば離れる程辺りは静寂に包まれて行く、外の空気を吸うだけで悪かった気分は多少マシにはなっていた。
雨粒が傘を打つ音だけが鮮明に聞こえる、誰も居ない、なんの声も聞こえない静かな裏通り……心休む空間だった。
「俺は……アルカド王国の守護者補佐として相応しいのだろうか」
ふと唐突な不安感に襲われる、アルセリス様がどんな意図を持って守護者補佐に任命したのかは分からない……守護者補佐の中で自分は一番弱い、下手すれば守護者の配下にも強い人物は居る……何故そんな自分がマリス様の下で補佐としてやらせてもらって居るのか分からなかった。
自分の取り柄と言えば忠誠心の強さくらい……漠然とした不安がいつしかランスロットの表情を暗いものにして居た。
いつしか捨てられるのではないか……そんな気がしてならなかった。
何故急にこんな事を考え出したのかは分からない……だが何故か不安で仕方が無かった。
「お兄さん……暗い顔してるね」
立ち止まり空を見上げて居るランスロットに掛かる一人のどっちらの性別とも判断しかねる中性的な声、その声にランスロットは視線を落とすとそこには金髪ショートの少し薄汚れた元々は白だった服を着た少女……だろうか、見た目的には少女が傘もささず雨に濡れて立っていた。
「色々あってね……傘もささずに君はどうしたのかな?」
そう言いランスロットは少女を傘に入れる、何か……諦めきった様な目をしていた。
「僕はどうもしてないよ」
「どうもしてないって言っても……」
僕と言う一人称が妙に引っかかるがランスロットは特に気に留めることも無く少女を見る、少し不思議な雰囲気だった。
「お兄さんは何でそんなに暗い表情をして居るの?」
そう首を傾げ尋ねてくる少女、彼女に言った所で分かるかは分からない……だが誰かに話して置きたい気分だった。
「たまに……自分は誰にも必要とされて居ないんじゃないかって思うんだ、昔は皆んなに慕われていた……でもそれは飽く迄過去、現在の自分には何の価値も無い、そんな気がしてね」
「そんな事無いと思うよ、人間誰かしら何かの価値は持って居る、必要としてくれる人も居るしね」
「どうしてそう思うんだ?」
「例えば……彼処で寒そうに身を震わせてるあの子、あの子は貴族の出身で基本的に様々な人を下に見ていた、でも最近家族全員が貴族に暗殺されてああやって一人ぼっちになったんだ、一見無価値な彼だけど彼に見下されて居た人達には価値があるんだよ、殴られる事でね」
そう言い寒そうに身を震わせて居るボロボロになった服を着た少年を指差す少女、彼女の言っている事に多少共感出来るかも知れなかった。
だが……そんな価値に何の意味があるのだろうか。
「成る程……僕よりも過酷な状況下に居る人は一杯居るって事だね」
「そう言う事、だからお兄さんは無価値じゃ無いよ、僕にこうやって傘を差し出してくれる優しさもあるんだしね」
そう言って笑う少女、その言葉を残すと少女は駆け足で何処かへと行ってしまった。
アルセリス様に必要とされたからアルカド王国に居る……それなのに自分は無価値などと言う考えはアルセリス様に失礼……気持ちを入れ替えなければならなかった。
ランスロットは頬を叩くと気合を入れ直す、裏路地で油を売って居る暇は無かった。
昨日の王暗殺作戦の真偽が気になる……じっくりとクリミナティ調査をして行くつもりだったがあれが本当なら時間は無い……一先ずグレルドの屋敷に侵入して探る必要があった。
今日は幸いにも雨、番犬などが居ても雨で音は消え匂いも無くなる……だが念の為夜まで待った方が良さそうだった。
「それにしてもさっきの子は誰だったんだ?」
突然現れて颯爽と消える……不思議な子だった。
最後まで性別も分からずじまい……もっとも謎だったのはあの服装、孤児なのだろうか。
そんな事を考えながらランスロットは雨が降る裏路地を水溜り踏みしめ歩いて行った。
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