68 / 73
第四章 暗黒神編
第68話 グレイアス
しおりを挟む
グレイアス・アルフォード、オーエン国と言う海に面した小さな国に彼は生まれた。
決して裕福では無いが貧乏でも無い……ありふれた家庭で育ち、モンスターや敵国から国を守る騎士に憧れ騎士を志したごく普通の青年だった。
そして16歳になったある日、グレイアスに転機が訪れる。
オーエン国主催の闘技大会、それにグレイアスは最年少で出場し、優勝した。
呆気なく……軽々と勝ってしまったのだった。
大した努力もせず揺るぎない騎士への信念も無い……そんなグレイアスが寝る間も惜しんで鍛錬し、命を賭けても国を守る信念を持った人々に勝利してしまったのだった。
グレイアスはいわゆる……天才だった。
剣、槍、斧、弓……様々な武器や武術を一目見れば人並み以上に出来てしまう、騎士団に入団してから2年、18歳の頃にはもう既に騎士団長として国民から尊敬される存在となって居た。
何故モンスターに苦戦するのか、何故あの程度の人間に手こずるのか……グレイアスには全てが理解できなかった。
他国との戦争で多勢に無勢だったとしてもグレイアス一人で戦局を変えた、筋肉の動きを見て軌道を予測する、そして躱し次の攻撃をしようとしている者から殺して行く……例え大勢で来ようともグレイアスは負ける事が無かった。
敗北のない……そんな人生をグレイアスは送っていた。
そしていつしかこんな事を思っていた、大陸で……一番強いのではないのかと。
幾度と戦争を重ね勝ち続けたグレイアスにとっては当然の発想だった。
だがある日、グレイアスは敗北を喫した。
黒い騎士を名乗る者に。
広い草原で膝をつき絶望するグレイアス、彼の目の前には黒い鎧を身に纏った異質の騎士が立っていた。
白は正義、黒は悪と言うイメージから黒い甲冑を着るものは居ない……それ故に異質だった。
「な、何者なんだあんた」
痺れる腕で必死に剣を持とうと試みるが握れずに落とす、それ程大きく無い姿からは想像もつかないパワー、歴戦無敗の自分が一瞬にして負けた……信じられなかった。
「この世界を……統べる者だ」
そう答える黒騎士、声は機械の様な声で性別が判断出来なかった。
「世界を……統べる」
一介の騎士に過ぎない者からの言葉に思わず笑うかと思ったがグレイアスは不思議にも笑って居なかった。
自分で笑うと思っていたのに何故笑わないのか……この黒騎士ならやり遂げる、そんな気がしたからだった。
「付いて来い、右腕として働け、そして世界を統べるのだ、お前にはその資格がある」
そう言い放つ黒騎士、その言葉にグレイアスは迷った。
何も分からぬ謎の人物、目的は世界を統べると言うザックリとした物……それに加えて数千万と言う人間を敵にしなければ行けない……果たして自分は戦力になるのだろうか、そんな思いが頭の中を駆け巡っていた。
迷っている様な表情をしているグレイアスに黒騎士は手を差し伸べた。
「お前を今以上に……もっと強くしてやる」
正直向上心などは無かった……だが目の前の黒騎士よりも強くなれる可能性があるなら……試さない他は無かった。
グレイアスは黒騎士の手を掴み立ち上がった。
「精々飼い犬に手を噛まれない事だな」
そう言い歩いて行くグレイアス、その背中を見つめ黒騎士は笑った。
これが後の暗黒神との出会い……そしてその後グレイアスは儀式を経て怪物の姿へと変わり、実績を重ね本当に右腕的存在となった。
魔人グレイアスと呼ばれる様になってからは負け無し、ずっと無敗だった……そして暗黒神が封印される際も完全に負けた訳では無く不意を突かれ封印されただけ……つまりグレイアスの人生の中で敗北は暗黒神との一戦のみだった。
だが目の前に迫り来る斧、圧倒的な力の差……初めてグレイアスは諦めた。
勝つ事を、生きる事を……どうやっても目の前に居る大きな男、フェンディルには敵わないと分かっていた。
「カルザナルド……後は頼んだ」
そう言いグレイアスは目を閉じる、その瞬間彼の頭部は宙を舞った。
グレイアスの頭部を跳ねても尚止まらぬ斧をフェンディルは魔法を使い引き寄せると地面に置き一息吐く、それなりに強い相手だった。
結局最後まで消える原理は分からなかったが……死んだ今となってはどうでも良かった。
アルセリス様への報告用に頭部を持ち上げるとタオルを巻きカバンの中へと仕舞う、そして冒険者達を守って居た結界を外すと彼らはなだれ込む様にフェンディルの元へと駆け寄ってきた。
「あ、あんた一体何者だ!?その強さプラチナ……いや、ダイヤモンドは余裕であるぞ!?」
「なんでアンタみたいな奴が無名なんだ……」
冒険者達は溜まって居た疑問を次々にぶつけてくる、だがフェンディルが言う事はただ一つだけだった。
「俺はアルカド王国第1、2守護者……フェンディル・ワーグスト、アルセリス様の部下だ」
その言葉を残し姿を消すフェンディル、残された冒険者達はただただ疑問符を浮かべるだけだった。
「ふ、フェンディルさんと言いセリスさんと言い……世界は広いな」
気絶から目を覚ましたアダムスがヨロヨロと立ち上がる、そしてグレイアスの死体近くに転がって居た剣を仕舞うと瓦礫に腰かけた。
アルカド王国……聞いた事の無い国、階層守護者と言う事はダンジョンなのだろうか。
「分からない……ただ、報告の必要はありそうだ」
アダムスはフラつく足で立ち上がるとヨロヨロとオーリエス帝国の方へと足を運んだ。
決して裕福では無いが貧乏でも無い……ありふれた家庭で育ち、モンスターや敵国から国を守る騎士に憧れ騎士を志したごく普通の青年だった。
そして16歳になったある日、グレイアスに転機が訪れる。
オーエン国主催の闘技大会、それにグレイアスは最年少で出場し、優勝した。
呆気なく……軽々と勝ってしまったのだった。
大した努力もせず揺るぎない騎士への信念も無い……そんなグレイアスが寝る間も惜しんで鍛錬し、命を賭けても国を守る信念を持った人々に勝利してしまったのだった。
グレイアスはいわゆる……天才だった。
剣、槍、斧、弓……様々な武器や武術を一目見れば人並み以上に出来てしまう、騎士団に入団してから2年、18歳の頃にはもう既に騎士団長として国民から尊敬される存在となって居た。
何故モンスターに苦戦するのか、何故あの程度の人間に手こずるのか……グレイアスには全てが理解できなかった。
他国との戦争で多勢に無勢だったとしてもグレイアス一人で戦局を変えた、筋肉の動きを見て軌道を予測する、そして躱し次の攻撃をしようとしている者から殺して行く……例え大勢で来ようともグレイアスは負ける事が無かった。
敗北のない……そんな人生をグレイアスは送っていた。
そしていつしかこんな事を思っていた、大陸で……一番強いのではないのかと。
幾度と戦争を重ね勝ち続けたグレイアスにとっては当然の発想だった。
だがある日、グレイアスは敗北を喫した。
黒い騎士を名乗る者に。
広い草原で膝をつき絶望するグレイアス、彼の目の前には黒い鎧を身に纏った異質の騎士が立っていた。
白は正義、黒は悪と言うイメージから黒い甲冑を着るものは居ない……それ故に異質だった。
「な、何者なんだあんた」
痺れる腕で必死に剣を持とうと試みるが握れずに落とす、それ程大きく無い姿からは想像もつかないパワー、歴戦無敗の自分が一瞬にして負けた……信じられなかった。
「この世界を……統べる者だ」
そう答える黒騎士、声は機械の様な声で性別が判断出来なかった。
「世界を……統べる」
一介の騎士に過ぎない者からの言葉に思わず笑うかと思ったがグレイアスは不思議にも笑って居なかった。
自分で笑うと思っていたのに何故笑わないのか……この黒騎士ならやり遂げる、そんな気がしたからだった。
「付いて来い、右腕として働け、そして世界を統べるのだ、お前にはその資格がある」
そう言い放つ黒騎士、その言葉にグレイアスは迷った。
何も分からぬ謎の人物、目的は世界を統べると言うザックリとした物……それに加えて数千万と言う人間を敵にしなければ行けない……果たして自分は戦力になるのだろうか、そんな思いが頭の中を駆け巡っていた。
迷っている様な表情をしているグレイアスに黒騎士は手を差し伸べた。
「お前を今以上に……もっと強くしてやる」
正直向上心などは無かった……だが目の前の黒騎士よりも強くなれる可能性があるなら……試さない他は無かった。
グレイアスは黒騎士の手を掴み立ち上がった。
「精々飼い犬に手を噛まれない事だな」
そう言い歩いて行くグレイアス、その背中を見つめ黒騎士は笑った。
これが後の暗黒神との出会い……そしてその後グレイアスは儀式を経て怪物の姿へと変わり、実績を重ね本当に右腕的存在となった。
魔人グレイアスと呼ばれる様になってからは負け無し、ずっと無敗だった……そして暗黒神が封印される際も完全に負けた訳では無く不意を突かれ封印されただけ……つまりグレイアスの人生の中で敗北は暗黒神との一戦のみだった。
だが目の前に迫り来る斧、圧倒的な力の差……初めてグレイアスは諦めた。
勝つ事を、生きる事を……どうやっても目の前に居る大きな男、フェンディルには敵わないと分かっていた。
「カルザナルド……後は頼んだ」
そう言いグレイアスは目を閉じる、その瞬間彼の頭部は宙を舞った。
グレイアスの頭部を跳ねても尚止まらぬ斧をフェンディルは魔法を使い引き寄せると地面に置き一息吐く、それなりに強い相手だった。
結局最後まで消える原理は分からなかったが……死んだ今となってはどうでも良かった。
アルセリス様への報告用に頭部を持ち上げるとタオルを巻きカバンの中へと仕舞う、そして冒険者達を守って居た結界を外すと彼らはなだれ込む様にフェンディルの元へと駆け寄ってきた。
「あ、あんた一体何者だ!?その強さプラチナ……いや、ダイヤモンドは余裕であるぞ!?」
「なんでアンタみたいな奴が無名なんだ……」
冒険者達は溜まって居た疑問を次々にぶつけてくる、だがフェンディルが言う事はただ一つだけだった。
「俺はアルカド王国第1、2守護者……フェンディル・ワーグスト、アルセリス様の部下だ」
その言葉を残し姿を消すフェンディル、残された冒険者達はただただ疑問符を浮かべるだけだった。
「ふ、フェンディルさんと言いセリスさんと言い……世界は広いな」
気絶から目を覚ましたアダムスがヨロヨロと立ち上がる、そしてグレイアスの死体近くに転がって居た剣を仕舞うと瓦礫に腰かけた。
アルカド王国……聞いた事の無い国、階層守護者と言う事はダンジョンなのだろうか。
「分からない……ただ、報告の必要はありそうだ」
アダムスはフラつく足で立ち上がるとヨロヨロとオーリエス帝国の方へと足を運んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる