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1章 コスで生活

20話 PTの為にあれ

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「覚悟は良いな、このヤロー」


貶されてジャッカルが怒っています、弱いんだからとか色々言ったから仕方ないね、でもほんとに彼らは弱いです、ウルフが4体いて、注意を引き時間稼ぎが目的だったとは言っても、1体も倒せないんじゃ仕方ないよ。
あそこでサミーも参戦し、アレーンとジャッカルが協力していれば、少なくても2体は倒せたかもしれない、僕を信用できないのは分かる、だけど僕たちは冒険者でクエスト成功が何よりも大切なんだ、馬車の守りには僕1人付けるだけで充分です、サーティナも参戦して全滅させるのが正解だったんだ。


「おいお前!早くその細い剣を構えろよ」

「悪いけど、君たちごときに武器は要らないよ、君たちはひっじょ~に弱い、協力して戦えないのなら今すぐ引き返してPTを解散するべきだ、じゃないと大切な人達を失うことになる、冒険者とはそんな世界で生きてるんだよ」


言葉で言われて初めて分かったみたいです、ふたりはサーティナを見て不安な顔をしました、彼女は心配そうにこちらを見てます、これで分かってくれれば良いけど、どうやらふたりは連携をせず個別で戦う方を決断しました。
横一列で一度に攻撃をしてきたので、僕は彼らの真横に移動しアレーンの腹部を蹴りました、アレーンはジャッカルとぶつかり、一緒になって吹き飛びましたよ。


「な、何をやってやがるアレーン」

「お前こそ、あれくらい避けろよ」


立ち上がると言い争いを始め僕を無視です、相手を間違うなんて失格だね、今度はジャッカルを標的に後ろ襟をつかんで投げ飛ばしました、アレーンを見ると武器も構えずタジタジです。


「君たち、戦ってる相手をそっちのけで仲間割れかい?僕がモンスターだったなら、今のでジャッカルは死んでたね」

「う!?くそっ!」


やけになったのか、アレーンは片手剣を上段から大振りしてきました、お腹ががら空きだったし、攻撃も身体を少し横にするだけで避けれるレベルです、僕はそのまま避けるのではなくアレーンの体に引っ付きます、剣を持ってる手を上から握り込み、上段の構えから動かせないようにします。


「ダメだよアレーン、そんな大振りは相手が避けれない時だけだ、じゃないとこんなに接近されちゃう、一人で戦うならそれ位考えてよ、そうじゃないなら仲間のジャッカルを助けに行くのが先でしょ」


忠告した僕の手を振りほどこうとアレーンは暴れます、その力を利用してアレーンを一回転させて投げ飛ばし、今度はようやく起き上がったジャッカルが相手です、一瞬で距離を詰め見下ろします、ジャッカルは武器も構えられず震えてますね。


「お、お前」

「ジャッカル、君は何か勘違いをしてるよ、サーティナがアレーンと付き合い始めたか知らないけど、ウルフに仲間が攻撃されそうなのに、それを知ってて無視してる人を誰が好きになるんだよ、アレーンの気持ちも分からない君なんて誰も好きにならないよ」

「な、何を言ってやがる!アレーンの気持ちなんて知るかよ」


だからダメなんだって僕は続けます、仲たがいをしてるのに、アレーンは一緒に戦う指示を出した、変に思わないのかってね、今までがそうだったから気付かないのかもしれない、だけど連携が出来ないなら出来る人と戦った方が楽に決まってる。


「僕だったら、君は馬車の防衛に残してサミーと戦うね、その方が絶対立ち回りやすいよ、アレーンはそれを分かってて君を前に付かせてるんだ、元の関係を求めてね」


そうなのかって、立ち上がろうとしてるアレーンに視線を向けました、もしかしたらジャッカルにサーティナの守りをさせたくないのかもしれない、でもそれは今は言わないよ。
サミーもそれを聞いて腕を組んで頷いてる、サミーはみんなをよく見てる、だからきっと仲直りがしたいんだよ、アレーンの大振りを見ればどんな戦い方をしていたのか伝わってくる、いつもは2人にカバーして貰っていたはずなんだ。


「好きな人が一緒になってしまったのはどうしようもない、でもそれなら相手よりも良い所を見せなよ、じゃないと嫌われるよ」

「うっ!?」


サーティナに嫌われると言われたのが一番効いたようです、そしてとどめとして耳元で言ってあげたんだよ「怪我をさせたら治療をするでしょ、余計アレーンはサーティナと仲良くなるよ」ってね、それはすごいダメージだったみたいで、膝を付いて崩れていったよ、自分がふたりの仲を良くしていたと分かってショックだったんだね。


「もう戦える状態じゃないね、アレーンはどうするんだい?このまま出発したら、ジャッカルは戦えないよ」


僕の作戦はここが重要です、モンスターはこの先で待ち構えてます、このままみんなで行ったら僕は平気でも、アレーンたちは大怪我です、全力を出して守っても良いけど、それじゃこの後みんなはやっていけません。
僕だって今男性だから、ふたりと沢山話して結構緊張してます、感覚を研ぎ澄ましているから冷静になって話せています、この状態で守りの戦闘となると、どんな不測の事態になるか分からないんだよ。


「どうしろと言われても・・・引き返したらクエストは失敗だ、俺たちはもう失敗できない、ジャッカルは復活するまで馬車に乗ってもらって、サミーと俺で前衛を」

「違うでしょアレーン!冒険者はいつでも万全な状態でいなくちゃダメなんだよ、ここは休憩を延長するんだ、みんなでジャッカルと話し、必要なら一人にさせてあげなくちゃダメでしょ!」


大声を出して説教です、内心ドキドキですよ、でもアレーンに分かってもらうにはこれしかありません、分かったビクビクしながら了承しジャッカルに手を貸そうと近づいて行きました、その時ジャッカルに何か言われてたよ、拒絶されたなら離れるはずだから、きっと平気だったんだね。
やれやれって、僕はサミーの座ってる場所に戻って行きます、サミーは親指を立ててナイスって仕草をしていたよ。


「サミーこれは僕の仕事じゃないよ、君かサーティナがやるべきでしょ」

「そうなんだけど・・・色恋だからな、アタシが入ると余計こんがらがるし、サーティナは言えないだろ?」


そうかもねって笑ったけど、笑えない状況になっていたかもしれない、新人冒険者の死亡率が高いのは、ただ単に実力がないだけじゃないのかもです、こういった事が関係していて、連携が崩れていても生活の為にクエストを受け失敗しているのかもしれません。
単独クエストを受けていた時、僕が助けたPTももしかしたらいたのかもだね、帰ったらエリーヌさんたちに改善策を考えてもらおうと、僕は立ち上がって汚れをはたきます。


「どうしたんだリュウ?」

「ちょっと先の方を見て来るよ、どうせまだ出発しないでしょ?」


馬車を見るとアレーンたちは3人で何やら話しています、あれは長そうだってサミーは了承してくれました、そうじゃないと困る、内心ではそう思って出発します。
僕の索敵では、モンスターの種類は会った事のある奴だけしか名前が表示されません、なので低ランクのモンスターは見えるんだ、相手はウルフではなく別の奴で、ウルフよりも知恵を持ってる警戒しなくちゃいけない奴らです。


「やっぱりゴブリンだ、そうじゃないかって思ったんだよね」


先の道で森に面した場所があり、ゴブリンたちはそこで待ち構えてます、僕は木の上でそれを眺めどうしようか考えます、敵は20匹で武器も斧や剣とそれなりに持ってます。
僕一人なら倒すのは容易です、でもPTとして来ている僕が一人で倒すのは、あまり良くない気がします、ここは戻って相談するべきでしょうか。


「アレーンたちが仲違いしてたらこのまま帰るだろうし、相談は大事だよね、まぁ帰るのは金銭的に無いかな・・・ん?」


帰ろうとした時、ゴブリンたちの後ろから殺気を感じました、殺気の出所を探ると離れた場所の木の上で弓を構えてる人が見えたんです、どうやらあのゴブリンたちを狙ってるみたいです。
1人なのかな?って見ていると、矢を放ち気付かれないで3体を倒しました、でもゴブリンたちも気付きその人に向かって行きます、その人は既にそこにはいません、場所を移動してさらに3体を倒し、それを繰り返して残り2匹まで行きました、でも矢を無くし短剣で突撃していったんです。


「まぁ弓の腕を見る限り平気だよね」


あれだけの腕前の人が不用意に突撃はしない、初めはそう思ったんですけど、1匹を相打ちで倒しボロボロです、残りの1匹に攻撃されたら終わりに見える程劣勢です、仕方なく僕も遠くから参戦する事にします、手裏剣をゴブリンの眉間に投げて貫き倒しました。
怪我をした人はキョロキョロしてます、動けそうなので傷はそれほどでもないのかもと少し安心しました、僕はその場を離れ、アレーンたちと合流です、これで障害は無くなったので出発するとしても取り敢えず安心です、早めにみんなの訓練をしてあげないといけませんね。
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