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2章 コスで冒険

27話 指導の達人

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「りゅ、りゅりゅリュウちゃん!?」


僕が着物姿でギルドに入ったからか、エリーヌさんが凄く驚き僕を見ます、髪をポニーテールで縛り木刀を持って来たので驚くのも分かります、顔は隠してませんから約束は守りました、女性なのは勘弁してもらいます。


《ステータス》(コスプレ中)
【名前】遠藤竜(エリナ)
【年齢】16歳
【性別】女
【種族】ヒューマン
【職業】コスプレイヤー(無手の剣士)
【レベル】1(500)
【HP】100(50億)【MP】50(0)
【力】100(50億)【防御】100(100億)
【素早さ】150(150億)【魔法抵抗】50(0)
【魔法】
なし
【スキル】
収納レベルMax
(剣術レベルMax)
(格闘レベルMax)
(見切りレベルMax)
(受け流しレベルMax)
(観察眼レベルMax)
(教育指導レベルMax)
裁縫レベル5
調理レベル3
【ユニークスキル】
コスプレ
永遠の16歳
不眠不休
不思議のダンジョンレベル2
《酒ダンジョン》
《野菜ダンジョン》
(見稽古)
【称号】
破滅のランナー・世界を越えたコスプレイヤー・お酒ダンジョン制覇者・魅了の笑顔・恐怖の笑顔・宣伝娘・お酒ダンジョン制覇者・お仕置き人・迷惑っ子・二つ名持ち
ドジっ子
[しっかり者の様でドジってしまう人に送られる称号]
野菜ダンジョン制覇者
[野菜ダンジョン制覇者に送られる称号]
闇のお仕置き人
[悪い奴を懲らしめる者の称号]


女性じゃないとまだまだ素顔で人の前には立てません、顔はリュウのままでいられるこのコスで勘弁してください、ごめんなさい。
心内でエリーヌさんに謝り、故郷の訓練仕様だとお知らせです。


「そ、そうなのね、その恰好が・・・ふぅ~ん」

「エリーヌさんにはお世話になってますから張り切りました、でもすごく恥ずかしいので、あまり見ないでください」


エリーヌさん以外にも受付の人達に凄く見られます、エリナとして見られるかもしれないので、髪の色を変えてますよ、本来は黒髪で変えなくても良いのにです、今の僕は金髪になっています。
金髪にした時点でこれでもスキルは完全ではないです、リュウとして見られてるからか緊張しますね、前よりは良いけど、あまり見られると少し心配だよ。


「ごめんなさい、でも髪が」

「さすがにここら辺で見ない黒はまずいので、少し魔法で変えてみました、どうですか?」


似合いますか?って聞くと、もう顔で分かる笑顔でした、お礼を言って階段の下にあった通路を通り訓練場に向かいます、どうしてかエリーヌさんとパーシェントさんが付いてきます。
お仕事は良いのですか?っと聞くと、休憩だって言ってました、そして訓練場にはジャービスさんがいます、アレーンたちが怖がっていますよ。


「お、お前リュウか?」

「そうですよジャービスさん、さすがに黒髪はまずいでしょ、じゃあ早速始めましょうか」


細かな説明をエリーヌさんたちに任せ、僕は3人の前に立ち木刀を構えます、3人は木の剣を構えました。
まずは軽く素振りです、型を意識しながら高速で行ってもらいます、出来るだけ速く行い、剣の感触を覚えてもらったんです。


「はい止めていいですよ、これで剣技【高速斬撃】を覚えました」

「「「「「はい?」」」」」


アレーンたち3人以外のジャービスさんたちまで声が揃いました、ビックリするのも当然です、そんなに簡単に武技は覚えられませんからね普通は、僕のキャラコスがあってこそです、このキャラの基本動作と同じ動きをすれば、それに合った武技を覚える事が出来ます、僕自身に使えないのが難点です。
みんなありえないって言ってるので、試しに訓練場の端に置いてあるかかしに向かって使う事を勧めます、訓練場の端にあるかかしは3体、3人が同時に剣技を使いました、3連撃の攻撃がかかしを襲い、みんなびっくりです。


「でで、出来ただ!?」

「んなばかな!?」

「でで、でもほんとに出来たぞ、どうなってるんだ?」


それぞれ速度は違います、やはりアレーンたちよりもガランダは遅く見えました、これはアレーンたちの為の武技です、これを二人で使えば自動的に6連撃となり、避けられる者はそうそういません。
そこを説明して、次はガランダ専用武技です、パワー系の剣技【グランドバッシュ】の練習は、ものすごくゆっくりな素振りです、3人と他の人達は僕のゆっくりな動作を見て、何やってるの?とか言いたそうな顔していますね。


「出来るだけゆっくり、それでいて型を崩さずにね、そして力を抜かない」

「「「はい」」」


3人のゆっくりな素振りを見て、ジャービスさんたちが堪らず僕に近づいて聞いてきました、パワー系は敵に当たるまでに闘気を剣に溜める必要があります、これはその為の練習なんです。
理論は分かっているのに僕は使えません、それは魔法陣を知らないからです、3人がすぐに使えるのはそれを見て知ってるからですね、もしこの武技が初級ではなく中級なら分からなかったかもです。


「し、しかしだなリュウ、スクロールも使ってないのにこんなに簡単に使えるようになるって、さすがに変だぞ」

「それは訓練の仕方ですよジャービスさん、考えずに動けるようになるのが剣術スキル、武技はその中に属さず始動のスイッチがある攻撃です、素振りをただ素振りとしてやっていては覚えるわけないです」


コスのおかげで練習方法は浮かびます、このキャラは刀を持たない刀の先生です、見稽古の達人で異世界補正も付いているんだ、このコスで見ているとどうしてか分かるようになります、アレーンたちは4回の素振りを10分掛けて行い予定の武技を覚えました、そして次は最速剣技【抜刀術】です。
鞘に納めた状態で抜いて振り抜く、それを繰り返すんだ。


「これはめんどくさいな」

「がんばれジャッカル、これが済めば武技が手に入るんだぞ」


鞘に納めその後また剣を振り抜く、これは普通の戦闘では最初だけの動作です、だからすごく違和感を持ってます、ガランダも同じで苦労してます、これだから神速剣技を新人冒険者は覚えてません。
覚えてしまえばそれはすごい強みになります、それを伝え頑張ってもらいました、さすがにこの動作は不規則なので武技の習得は掛かりましたね、大体30分です。


「で、出来た~」

「お疲れアレーン、じゃあ次は本番だよ」


ここからが訓練の本番です、今までのは基本、それを体に覚えさせるために戦闘の中で使って貰うんだ、相手は当然僕です。
木刀を置き武器を持たず僕が構えると、訓練場の入り口から冒険者が入ってきました、ここは今立ち入り禁止にしていたはずなのにです、どうして入ってこれたのかな?エリーヌさんとパーシェントさんが止めてるよ。


「なんだぁ~俺様はプラチナクラスの冒険者ドモスルだぞ」

「誰であろうとダメです、退出してください!」


エリーヌさんが頑張ってるけど無理そうです、ジャービスさんは男の連れて来た冒険者たちに止められてます、さすがは上級の冒険者です、怖い顔も効かないみたいだよ。


「ギルドに違反者として報告しますよ」

「いいぜやってみろ!たかが訓練場に入ったごときでそんな事したら、お前たちこそただじゃすまさねぇぜ」


エリーヌさんが言い負かされ、男は笑いながら僕たちのいる舞台に上がってきました、そして僕を見てニヤリとします、何ですか?っと見ていたら、笑うのを止めて睨んできます。


「はっ女みたいなやつだな、お前に指導なんて出来るのかよ」

「あなたには関係ありません、僕はお願いされたから指導しているだけです、端っこなら使って構わないですけど、邪魔しないでください」


許可を貰ってるのは僕たちです、邪魔だと言われ彼は怒ってます、怒りたいのはこっちなんですけど、彼は武器を抜こうと手を添えます、訓練の邪魔だから止めてほしいよ。


「てめー良い度胸だな、クソ忌々しいイーザスの前にお前をぶちのめしてやる、練習にもならんが、なっ!」


男が腰の鞘から剣を抜きました、僕は咄嗟に後方に飛び躱します、さすがミスリルの上のクラスの奴です、腐っても凄腕だよ、今僕が教えてた【抜刀術】を使ってきたんです。
男は僕が避けて驚いた後喜んでます、まだやるのかと腰を落とし僕は戦闘態勢になりました、でも男の態度にやれやれって感じはぬぐえません。


「お前なかなかやるじゃねぇか、思ってたより楽しめそうだ」

「まったく、どうしてここまでするんです?」

「そんなの決まってんだろ、お前が気に入らねぇからだよ」


言葉を切り、中段から突きの構えで男は突撃してきます、プラチナだけあって瞬きする暇もない速度です、でも僕には止まって見えました、手の平で剣先に触れ回転させ、甲の部分で剣を叩き落します、それと同時に反対の手で相手の腕に手刀を浴びせます。
腕の衝撃は相当だったはずなのに痛がらず、もう片方の手で腰に差していたもう1本の剣を抜きます、僕はそれを躱す為また後ろに下がりました、着物が少し切られたのは想像よりも速かったからです。


「ほんとにやるな、今のを躱すとは・・・お前俺の部下にならないか?」

「悪いけどお断りしますドモスルさん、あなたは嫌いです」


着物を確認し、よくもやったねとちょっとイラっとして構え直します、ドモスルはそれで対抗できるのかって笑って見せます、僕はこのキャラが好きで選んだんだ、そのコスを切るなんて許せない!相手が攻撃する暇も与えず懐に飛び込み肘打ちを男の膝に当てます、膝の骨を砕き男は倒れました。
僕は上から見下ろして勝ちを宣言です、でもドモスルは片足で立ち上がり殴って来ました、その手を捻じり背中に固定してやりましたよ。


「さすがプラチナですね、怪我をしてもあきらめない心は尊敬します、でも相手の実力も分からないようですね、それではこれ以上には行けませんよ」

「な、なんだときさま!?お前たちやっちまえ!」


ドモスルの仲間が武器を抜き舞台に飛び乗ってきました、エリーヌさんたちはさすがにやり過ぎると思って慌てます、僕はそれを止め見ててもらうように伝えます。
ドモスルの腕を放し距離を取ると、男が2人僕の前に立ちドモスルを守ります、その後ろには支援魔法の詠唱をしてる男が1人、その更に後ろにドモスルと女性がいます、ドモスルを回復している様でした。


「ドモスルが動けないなら丁度いいね、アレーン!それにジャッカルにガランダよく見ててよ、これから実戦形式の指導するからね」


今までの戦いを見ているだけだった3人に声を掛けます、実力差があり過ぎて3人はどうしたらいいのか分かってないはずです、でもそれは僕の動きの変化で見えるようになります、このコスの本当の力はここからです。
このコスを選んで良かったと、僕はちょっと笑います、武器を持つ相手に素手で戦うこのコスは無手の剣士です、格闘とは違った戦い方を見せ相手の動きを鮮明にしてくれます、男たちの動きは3人にとって早いとは思えない動きになり、遥かに多くの経験値になります。
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