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2章 コスで冒険

34話 友達

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「今日はどこに行こうかな~っと」


どうも~分身2号ハーミオです。
ジャジャバレンに来て宿も瞬間移動先も準備出来、楽しく観光しています、試験登録も勿論済ませましたよ、明日はいよいよ試験です、今日まで忙しかったので学園都市の買い物に出てきました。
さすが学園都市、黒い魔法士の制服を着てる子供たちが多いです、お店の人達は他と変わらないのにちょっと違和感を感じていますよ。
あれを着るならリボンは紫、大きめの腕輪とイヤリングでコスになるかなぁ~っと想像したよ。


「ご飯もあまり変わらないし、あるはずの魔法糸もない、おまけに学園都市って名称なのに代り映えしてない、他の街と同じってどうしてなのさ、魔法を使って高い建物とか造ろうよ」


期待が崩されえたっと、初日はがっかりした物です、待ちに待った魔法糸を手に入れて新年祭に間に合うかもっと思ってもいたんだ、でも秘匿する物らしく手に入りません、王都で見つからないわけです。
ミスリルの方も分身3号が向かっていて分かったんだ、ドワーフが同じ様に秘匿してるんだよ、海の国も4号が行ってるけど、水の羽衣って言うのを秘匿してる、何処も切り札を隠し持っていました。
代り映えのしない食事屋に入って、どうやって作り方を手に入れようと考えます、ソーセージを【パリ】っと噛み切り入手だけでも先にとか諦めムードの案が浮かぶよ。


「せめて美味しい食べ物があればなぁ・・・明日のテスト、魔法剣士コスで挑むけど、あまり目立たない様にしないとね」


もう注文だけで済ませよう、現実に明日の対策を考える事にしました、初級の魔法以外は使わない様にと注意します、剣術は平均を見て手加減して実技は凌ぎます、孤児院の子たちの為に筆記試験は参考にさせてもらう予定なんだ。
入学後、他国の貴族たちが難問と言うほどです、どんな問題かとても楽しみです、気持ちを切り替えてウキウキしてお店を出ると、そこで嫌なものを見ました。


「か、返してください!」

「うるせぇな、ほらよ」


魔法学園の制服を着た、成人前の子供とは思えない、図体のでかい男の子が眼鏡を放り投げ道に落としました、取られたであろう男の子は急いで拾おうとします、でもその手が眼鏡に掛かると図体のでかい男の子が足で踏みつけたんだ、それだけで終わらずお仲間で蹴ったんだよ。
男の子は手とお腹を押さえ道に倒れたんだ、虐めだよっと僕はすごく嫌になりました。


「うぅ~」

「これに懲りたら、俺たちの前に出て来るんじゃねぇぞ、良いなパッショル」


でかい男の子が頭を踏みつけ足でグリグリと力を入れ警告してます、2人いる仲間もそれを見て笑ってるんだ、男の子は頭を踏みつけられて痛そうにしてる、街で会っただけでこんなことをするなんて許せない、壊れた眼鏡を拾って僕はそう思ったよ。
でかい男の子はやっと足を降ろし唾を吐いて道を歩こうとします、でも眼鏡を踏みつけようとしたんでしょうね、後ろにいた僕と目が合いました、丁度良いので警告ついでに眼鏡を見せつけます。


「な!?」

「君たちいい加減にしなよ」


男の子たちの間を通り倒れてる男の子に【ヒール】を掛けます、覚えておいて良かったです。
回復した男の子は、起き上がりお礼も言わないでボーっと僕を見てきました、後ろの男の子たちはイライラしてるようです。


「おいっお前!分かってるんだろうな、俺たちは」

「ああ~はいはい、君たちがどこの誰なんか関係ないんだよ、君たちが僕の目の前で虐めをしたのは明らかだ、だから僕はここにいる、これ以上やるなら容赦しないよ」


でかい男の子は、小さな魔法の杖を出し「やってみろっ!」と言って詠唱を始めました、詠唱の種類からして火の魔法です。
しばらく待つと、杖の先から拳大の火炎弾が発射され僕に向かってきました、右手を前に出し軽く受け止めます。


「これが君の全力?」


もう少し頑張りなよっと、つまらないって顔で聞いてあげました、僕の手の平には焦げ跡もありません、自分の魔力を手に集中させ魔法防御をあげたんです、それでなくても弱すぎて驚きです。
今日見れて良かったかもです、指を1本立て指先に炎の玉を出します、男の子たちはその大きさに驚き後ろに下がりました、指先の上に浮いていても大きさは1mはあるんです、彼らの威力の5倍はあると怖いんですよ。



「なな、何もんだお前」

「君たちに名乗る気はないよ、早くどこかに行ってくれるかな、じゃないと」


指先を男の子たちに向けいつでも放つぞと脅します、小さな悲鳴をあげ逃げて行きました、僕はやれやれっと炎を消し、座って僕たちを見ていた男の子に振り返ったんだ、今までのやり取りを見て僕を怖がってます。
ちょっとショックだけど男の子の前にしゃがみ、笑顔になりながら怖がらせてごめんねっと声を掛けました。


「じゃあ僕は行くね、次は気を付けるんだよ」


魔法で直した眼鏡を手渡し、僕は立ち上がります、ボーっとしたままで男の子は見て来るけど、怖がられるよりはマシでした。


「あ!?ありがとう」


後ろでお礼は聞けたと、ちょっと嬉しくなって振り返らずに手を上げて答えました、その場を離れ見えない所で少しホッとしたんだよ、力を出し過ぎると怖がられ嫌な目で見られることがあります、そのショックは結構心に来ると深呼吸をしたんだ。


「学生服を着てたんだから、あの子たちは上級生だよね、あれで先輩ってまいったね」


孤児院の子たちには、僕と同じ位の火の玉を出せる子がいます、冒険者を基準にしたのでそれ位だと判断したんだ、これでは希望者を学園には送れません、みんなが来るまでに実力を上げておく必要があるかもです。
今後の課題だと、次のお店に向かいます、そこでは上等な布の服が並んでいます、店に入ると店員が寄って来て挨拶をしてくれました。


「普段着が欲しいんですけど、試着出来ますか?」

「もちろんですともお嬢様、さあこちらにどうぞ~」


手をコネコネさせた男性に案内され、僕は満足するまで試着したんだ、もちろんこれでもかって買い込んだよ、店員も大喜びだね。
ちょっと休憩って事で、お店の中でお茶をもらっていたら、他のお客さんが入ってきました、ウエーブの掛かった金髪の女の子です、学生服なのでその子も先輩ですね。


「これはこれはミレーヌ様、今日はどのようなお召し物をお求めですか?」

「明日の新年祭に着る服を見に来たのですわ、適当に見繕ってくれるかしら?」


学生服なのに新年祭に出るの?そう思って見ていたら、僕の視線に気づき歩いてきました、今年の新入生で学生服と言う事は、彼女は貴族何だと予想しまし。
何か嫌味を言われるかと身構えます、でも僕の前に来た彼女はニッコリ笑顔です、僕の魔法士コスをカッコいいとほめてくれたんだ、どうやら貴族でも良い子もいるんだと、僕も笑顔で対応です、お礼を言って彼女とお喋りを始めます。


「都市内では学生服じゃないとダメなんて、おかしいと思うでしょ」


黒と灰色の制服はつまらないと女の子は頬を膨らませて言います、この服屋さんで買った物は、他の街に行った時に着るそうです、僕もそれを着るんだとちょっと眺めます、装飾がなくお年頃の子供たちには不評でしょう。


「だからね、見えない所にお金を掛けるのですわ、ほら見て」


女の子がスカートを上げ、下に着ていたレースを見せてくれました、細かな刺繍がされすごく綺麗です、下着も高い糸で作られた物らしいです。
今は見せられなくて残念っと笑っていました、僕は見せる機会が無いのにどうして?っと、凄く不思議でした。
しばらくお喋りをして自己紹介をしてないことを思い出し、僕たちは名前を言い合ったんだ、彼女はミレーヌ・フォンタル、子爵家の3女だそうです。


「今日は貴族たちの学園の下見日なのですわよ、ハーミオも他に貴族たちが歩いていたの見たでしょ?」


あいつらも同級生なんだねっと、ケンカの事を思い出します、嫌な顔をしていた僕にミレーヌが事情を聞いてきます、隠す事でもないので話したけどミレーヌは怒っていました。
やっぱり気が合う、貴族間の力関係が原因だとか説明されたけど、ミレーヌは良い子なんだと感じるんだ、哀れな行為だと言ってるし将来が楽しみだよ。
学園では身分の違いは関係ないはずなんです、それを理解せずにいる子たちが増えていて困ってるとも言っています、程度が低くくて嫌ですわとか頬に手を当ててるよ。
どうしようもないねっと笑い合うと、ミレーヌは僕の顔を見てきます、そしてどうしてか僕の両手を取ってきた、どうやらこの後僕が虐められるかもと気にしてくれたんだ、虐められたから自分に言ってと助けてくれる約束までしてくれた、ほんとに良い子です。


「ありがとミレーヌ、でも僕は平気だよそんな奴らには負けない、それよりもこの後暇かな?美味しい食事屋さんに行こうよ」


嫌な事は忘れて美味しい物を食べたい、ここではそれをまだ満たしてないんだ、貴族のミレーヌならきっといいお店を知ってると思って誘いました。
ミレーヌは笑顔で高そうな建物に案内してくれました、そこではコショウをふんだんに使い、タレも工夫された美味しい料理が食べれたんだ、とても美味しくてお喋りも楽しかった、ミレーヌと友達になれてよかったよ。
だけどね、最後にちょっと意見の衝突で僕たちは言い合いになっています。


「ハーミオ、ここを紹介したのはワタクシです、ワタクシが出すのは当たり前ですわ」

「ミレーヌ、僕は君と友達でいたいんだ、だから自分の分は出させてよ」


対等な立場を維持したい、そう伝えて何とか賛成が貰えました、お金の貸し借りはやってはいけません、この世界でも冒険者さんたちに聞きました、だから彼女とは友達でいる為に公平に行きます。
食事屋を紹介してもらったお礼として、今度アクセサリーを見に行こうっと買い物の約束もしました、ミレーヌと別れた後もニコニコしながら道を歩き、とても楽しい時間だったと宿屋に入ったんだ、部屋でも僕の笑顔が絶えません、僕にとって友達とお買い物は夢でした、女性の格好でもそれはなかった事なんだ。
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