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3章 コスで反逆

48話 大事なお話

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「「リュウ君!!」」


次の日、朝の訓練をする為にギルドに入った僕を、どうしてかエリーヌさんたちが迎えてくれました、抱きしめてくれて不思議な気持を受けたんだ。
ジャービスさんも少し離れて親指を立てていました、一体なにがどうしたんでしょうね。
理由も教えてもらえないまま、僕は訓練場にスタンバイします、エリーヌさんたちも付いてくるけど泣いてました、ジャービスさんが手伝ってくれるので理由を聞きましたよ。


「お前たちは何も悪くない、悪いのは貴族たちだ、気にせずに訓練の指導を頼む」

「はぁ~それでしたらいいですけど」


返事では分かってない風にしましたけど、大体は知っています、伯爵の屋敷を壊した件です、今お城で会議の為に人が集まり始めてるんですよ。
僕の為にジャービスさんたちが何かしてくれた、それだけ分かれば良いです、気持ちを切り替えて訓練生を待ちます。


「う、うそだろっ!?」


訓練生が集まり早速始めると、プラチナクラスのメンバーが驚きを隠せません、それは僕が強いとか以前の問題だね、アイアンクラスの冒険者たちがあり得ない動きをしていたんです。
剣は鋭く、武技は初級を越えた中級を使っていたからなんだ、新人に毛の生えた冒険者の動きじゃない、誰もがそう口にしています。
訓練場の舞台では、ふたりの新人冒険者の模擬戦が行われています、それは訓練と言える迫力ではありません、命懸けの死闘に見えるほどに真剣な戦いが繰り広げられ、ギルドの訓練場だよね?っと疑う物になっています。
それを舞台袖で見ている冒険者たちも真剣に戦いを見て、自分ならこうフェイントを使うとか、踏み込みが足りないと意見を出し合っていました。


「どうですか?プラチナクラスの先輩方」


イーザスさんたちは、入り口でなかなか入ってこないので僕は声を掛けます、プラチナクラスの人達はビクッとして僕も見てきました、そんな顔をされる覚えは無いので自己紹介をして訓練のご説明です、みんな真剣に取り組んでくれて強くなってると話しました。
やり過ぎだろうと意見が出たので否定します、武器は木剣を使ってるし、見た目よりも安全に考慮しています。


「そ、そんなバカな・・・だってさっきまであんなに血が」


目の錯覚を起こしていたと、木剣を確認しています、それだけ殺気を出しながら訓練をしてフェイントを加えてるんです、当てない攻撃だと分かっていたらフェイントにもならないし、訓練にもなりません。
動きが速いのも、素振りを高速で行っていたから、そのスキルを使っていると説明します、どれもギルドで行う訓練方法です、僕が少し改善しただけです。


「ちょっとエリーヌさん、話が」

「さすがリュウちゃんね、素敵」


後ろの方でそんな声が聞こえますが僕は続けます、プラチナクラスの先輩たちが参加なんて滅多にない事です、みんなも楽しみにしていたんです。
訓練を止め、みんなに紹介しようとすると、みんなが集まって来て名前を呼んでいました、僕よりもみんなの方が知ってるので、触り程度になりましたよ。


「皆さんは今日初めなので、最初の訓練をしましょう、まずは3つの素振りから始めてください」


基本となってる素振りを行い、次は訓練場の走り込みです、10キロの麦袋を担いで約5キロを走ってもらうんだ、訓練をしていた下級クラスの人は20キロを担ぎます。
ただ走るだけと聞き、プラチナクラスの先輩たちは余裕です、でもしばらくして息を切らせ始めました。


「ど、どうしてはぁはぁ、ただ走ってるだけではぁはぁ、こんなにも疲れるんだ」

「ほ、ほんとはぁはぁ・・・きついわね」


走る時はほぼ全力、モンスターに追われたりした時だけなので、先輩達でも経験がありません、下級クラスの人達もそうでした、僕が先頭を走ってペースを作ってあげたのにもう限界がやってきました、まだ3キロ地点ですよ。
走り込みを済ませると次は柔軟です、みんな1人補助を付けて背中を押して貰いましたけど、とても体が硬く痛がっています。


「いでで!ファンシャもう少し加減しろ」

「イーザスが固すぎるんです、ほらあなたの好きな胸で押してあげますよ~」


痛いと叫んでるけど、顔は嬉しそうにしてるイーザスは確実に気持ち悪いです、でも二人を見てファンシャさんの思いは叶ったんだと嬉しくなりました。
今の空気に入るには心苦しいけど、僕の作戦の為入ります、声を掛けるとふたりがニヤっとしたままで僕を見てきましたね。


「幸せそうですね、ごちそうさまです」

「「な!?」」

「じゃなくて、ドラゴンの解体の伝手を探してると聞いたんですけど、僕心当たりがあります、紹介しましょうか?」


その話を聞き、ふたりが僕に詰め寄ってきました、それだけ重要なんですね、もちろん代金は姉と言う事になってるエリナに肉を分けてくれるので無料です。
王都に丁度来るので、腕を見るだけでもどうですか?と伝えました。


「ドラゴンを狩る専門家・・・聞いた事ないな」

「それだけ遠くの部族ですからね、聞いてませんか?僕の戦闘衣装」


今の袴もそうですが、忍者装束はここでは見た事ありません、だから最初は警戒されてました、今ではシーフの代わりになりつつあります、僕に教えてもらいたいって人が増えてきたせいです。
ギルドに数名いたのを見た事があったようで、確かにっと納得してもらえました、ドラゴンの件は腕を見てからという話になり、僕はやったよ!っと頭の中でガッツポーズです、そして訓練は本格的な物に入ります。


「なぁリュウ君・・・さすがにこの人数は無茶じゃないか?」


下級クラスの人には見学をしてもらい、僕は20人のプラチナクラスの先輩全員を相手にします、舞台に上がってる全員が不満そうです、もちろんプラチナクラスの先輩を倒した事は知ってるそうです。
僕は武器を持っていません、みんなの視線は舞台に刺さっている木刀にあります、早く取れと思っているんです。
でもこの木刀は振り方を見せるだけの物で戦う時には使いません、注目が木刀にあるうちに移動を始めると、皆さんは急にいなくなった僕を探し、イーザスさんの後ろにいるのを見てびっくりです。


「普通に戦ったら勝てません、僕は逃げ切ります、皆さんは走り込みを必要ないって思っていたでしょ?持久力は必要だって今から証明します」


イーザスさんだけは僕を目で終えていたようで、直ぐに僕の方を向きました、そして納得した感じです、攻撃せず逃げ切る、それが僕の20人との戦いです。
皆は魔法や武技やスキルを使い放題、そこから始まった模擬戦は、20分してほとんどがスタミナ切れで倒れます、そして実力者のメンバー5人が残りました、息は切らせていますが流石です。


「モンスターは向かって来るから追いかけるのはそうそうない、陣形は崩れバラバラにされる、それを見事にやられたな」

「ええ、でもあの子息を切らせてないわよ」


肩を上下させてるけど5人はまだまだ余裕があります、息を整え僕が陣形の中に走り込んでも散開して集まり直すんだ、僕が一人にくっ付くと前衛が攻撃して引き剥がしてくる。倒れた他のメンバーは、僕に戸惑い振り回され体力を取られました、イーザスさんたちは肩で息をしてるけど、ほんとに隙はありません、陣形も崩さずどんな時でも柔軟に対応してくれました、ここまでで訓練は終了です。
イーザスさんたちは、疲れてその場に座り込みスタミナの大切さを話しています、目の前で僕が疲れないで下級クラスの人を相手にし始めたので尚更です、追い抜かれそうだなと、ぼそっと言っていましたね。


「イーザスさん、どうでしたか訓練」


訓練場の端で休憩中のイーザスさんに聞きます、ファンシャさんもいますが、ふたりとも納得の訓練だったと答えてくれました、勧誘を受けましたけど、それをいち早く聞いていたエリーヌさんが断ってくれたんだ、僕の実力を確かめる目的は達成したでしょとか、エリーヌさんがぼそっと言ってます。
そんな事までする予定だったんだねっと、僕はみんなに終わりの挨拶をします、そして部族の到着を4日後と伝え解散したんです。


「それで・・・みんなを集めて何の話だ?」


分身リュウの報告を貰ったのでエリナ本体で次に移ります、ジュロスさんたちを集めたけど、僕の突然の招集にちょっと怖いです、いつもの2割増しです、僕がみんなを集めるのは珍しいから、何かを察知しているのかもです、リンシャたちはその顔を見て真剣になりだします。
もしかしたら王都を出るかもしれない、その話をしたんだ、まだ万が一だとは付け足したけど、それでもみんなショックを受けています。


「ど、どうしてそんな話になってるのよエリナさん」

「あのねリンシャ、孤児院にそう言った人たちが来てケンカになっちゃったんだ、話は済ませてるんだけど、貴族だからまだ分からない、だから今のうちに挨拶したくてさ」


いつになるか分からないから先に挨拶をしたと、ちょっと表情を曇らせながら話しました、別れたくはありません、でも相手が指示通り動くとは限りません、その時は分身は残るけど僕自身では帰ってきません。
小さな村に住むかもしれない、その時は遊びに来てくれると嬉しいっと伝えました、リンシャたちは泣きそうです、まだ確定じゃないけど空気は重いですね。


「あくまで最悪の状況だった場合だからね、そうならない様にはしたんだよ、だからきっと平気なんだ・・・でも、別れの挨拶が出来ないかもしれない、だから今のうちにね」


僕の言葉の後は沈黙が続きます、その中で最初に喋ったのはジュロスさんです、僕が話を持ち掛けたから問題だって言います、みんな心配なんだと怖さを更に2割増しでしてきました。
そうならない様に全力を尽くしてると安心させ、逃げるとしても手紙を送ると約束しました、しばらくリンシャとアマリスが抱き着いて放してくれませんでした。


「泣かないでよふたりとも、そうならない様に頑張ってるんだ、お店の品物も卸せなくなるんだから心配しないで、お願いだよ」

「「うぅ~でも~」」


夜中の帰り道、ふたりを宥めて歩きます、僕の心配をしてくれる仲間がいてくれるって嬉しいです、もし僕が逃げることになっても、みんなには迷惑を掛けない様にしないとです。
今まで後回しだった商業ギルドの登録作戦を今ここで始めます、登録もいらない遠く離れた街の行商団体、そう言う形で僕はここの門をくぐり直すんです。
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