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4章 コスで救済

82話 久しぶりの姫コス

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「はぁ~緊張する、リュウやっぱり変わってよ~」


軍服を着て隣で立ってるリュウにお願いしました、だけど直ぐに却下です、今日僕たちは海の国ウインダムに来ています、もちろん2人だけではなくエリーヌさんたち3人が一緒です。
僕は勇者としてジャービスさんと交渉のお仕事に来ました、でもリュウは違うんだ、エリーヌさんとパーシェントさんとの約束の為に同行したんだよ、レジャーとお仕事では気持ちが違いますよね。


「国の代表は主がやらなくちゃでしょ、頑張って姉さん」


リュウにそう言われ、僕はぐぬぬ~っと力が入りました、リュウは勝ったと思ってるみたいだけど、エリーヌさんたちと遊びたいだけだよね。
後で絶対遊ぶ、そう思って僕たちは2手に別れます、お城に向かってる僕たちお仕事組はちょっと気持ちが暗いです。


「すみませんジャービスさん、ギルド代表を頼んでしまって、嫌でしたよね?」


僕が国で知ってる人が良いと推薦してしまったんだ、おかげでジャービスさんは副ギルドマスターになり仕事が増えてしまいました、他の国は冒険者ギルドのマスターと外交官が来るんですよ、ジャービスさんは気にしてないとか言ってくれます、だけど大変になったのか目にクマが出来ています。
あまり寝れないほど仕事が増えてしまった、そう思った僕は少しでも頑張らないとっと力が入りました、ウインダムの国王陛下に挨拶をして、会議室に集まるとみんなが注目してきます、僕たちが最後だから注目されたわけじゃないんだよ。


「噂の勇者様が揃ったところでお話をしましょうか」


自己紹介もなく始まりの挨拶をしたのは、ウインダムの外交官をしてるウーシャミさんです、ジャービスさんが全員の名前を教えてくれたので問題はありません、自己紹介をしなかったのは今更間もあるからだね、僕以外はみんな知ってるそうです。
魔族大陸との交易はこの4ヶ月で6回行われ、今回は向こうから始めて来日するんだ、その為に国で仕事をしていたみんなで集まったんです、実は外交官さんたちの中には分身もいます。


「そうでない人も大抵部下にいるんだよねぇ~」


本体で会うのは初めてと、みんなの顔をチラ見します、向こうも僕をチラチラ見て来るのでお相子です。
会議の内容は、交易品に何を持って来たのか、1月後の学園祭に誰が魔族側と同行するかを決めたんだ、同行者は注目を集めた僕です、勇者なんだから当然と反対意見は出ませんでした、僕は反対したかったけどさせてもらえませんでしたよ。
会議は直ぐに終わりみんな席を立ちます、こんなに簡単に済ませられるなら集まる必要ないよね?っと思ってしまいます。
実は目的は他にもあるんだ、それは勇者である僕に会う事です、会議室を出て大広間で簡単な会食が用意されていたんです。


「さて、お話は後にして、皆さん頂きましょう」


ウーシャミさんが簡単に挨拶を済ませてくれたので、僕たちは料理に集まります、お魚が沢山焼かれていておいしそうです。
僕としては生も欲しかったけど、用意されているのはみんな焼かれています、仕方ないと諦めつつ1口食べると、それはとても美味しかったんだ。


「やっぱり美味しい」

「うむ、魚はウインダムだな」


ジャービスさんも隣で賛成してくれます、リュウの代わりに僕を守ってくれてるそうで、みんな怖い顔のジャービスさんがいて近づいてきません。
そんな中ウーシャミさんだけは近寄ってきます、青いドレスが凄く似合っています、のんびりとした動きを見て、さすがウイシャのお母さんだと思いましたよ。


「勇者様、我が国の料理はお口に合いましたかしら?」

「とても美味しいですウーシャミさん」


お世辞ではなくほんとに美味しいです、コショウの代わりにショウガや山椒が使われ、変わった味になってるんです。
良かったわ~っとのんびりと答えてくれて、僕はウイシャのお母さんだと、ちょっとだけ顔を緩めたんだ、ジャービスさんに第3妃様だと言われたけど、それは知ってるんだよ。


「勇者様は料理も出来ると聞いてたから、少し心配していたの、滞在中は楽しんで頂戴ね」

「もちろんです、それだけじゃなくお洋服も楽しみなんですよ」


姫コスで来たのはそれが狙いです、こびる為のスキルが付いてるから少しだけ頼みごとが通り易いんだ、交渉ではなく貰うのが狙いだね。
それが成功したのか、ウーシャミさんから見学の許可を貰えました、この後は港の視察などがあるのでいけませんけど、明日はジャービスさんと見学ツアーですね。


「でもそのドレスも素敵ね、ちょっと見せてもらっていいかしら?」


ウーシャミさんにスカートを少しつままれました、向こうで扱ってるツヤツヤの生地なので珍しいんです、こちらで作るとなると素材から探さないとダメですね。
企業秘密ですよっと耳打ちすると、そうよねぇ~っと頬に手を当ててガッカリしていました。


「何処も秘匿してる物はあるわ、それは魔族も同じだと思うの、学園祭は楽しみでもあるけど気を付けなくちゃだわ」


ウーシャミさんが心配してくれたように、何かを企む可能性はあります、でも変化を起こさなければ先には進みません。
お魚を食べて協力して成功させましょうっと握手をしたんです。


「出来れば向こうの人たちともお話をしてあげて、みんなあなたの美しさに気後れしてるの」

「はい?」


ウーシャミさんに気付いてなかった?とか言われました、僕はジャービスさんが怖いからだと思っていたんです、ドレスを着た僕が綺麗すぎたとか思わないよ。
ジャービスさんに違うよね?っと視線を向けると、ウーシャミさんに相槌を打っていたよ。
早く言ってくださいっと、僕はジャービスさんとテーブルを回ることにします、会議でも僕に話しかけたかったと言われたよ、この機会は絶対とか思っていたけど、見とれてしまって近づけなかったとか言われちゃいました。


「皆さんさすが外交官って所ですねジャービスさん、お世辞が上手です」


国でも美人と呼ばれてるけど、見とれて仕事を忘れる程じゃない、そうジャービスさんに賛成を求めました、でもワインを一気飲みして遠くをみて否定されました。
お化粧もほどほどにしてるのに言い過ぎ、それが僕の本心でした、でもそれは赤くなってるジャービスさんを見て違うんだと分かったんだ、しかもずっとジャービスさんが静かだったのはそのせいだったんだよ。


「後でリュウに相談しよう」


お昼からの視察に向かいつつ、僕はコスの度合いを調節する事を決めました、きっとスキル補正でハードルが下がったんですよ。
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