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3章 支店

52話 ダンジョンの進捗

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「う~ん・・・ヒューマンの方以外は順調かな」


ターシャちゃんたちと秘密のお話をしてから1週間が経ちました、今ターシャちゃんは大事な会合をしている最中です、もうすぐ報告が来るかもですね。
僕はそれまでにやる事があります、他の大陸に広げたダンジョンを確認しないといけないんですよ。


「シンジは相変わらず心配性、スライムたちに任せてるんだから、問題がある訳ない」


ミントは言いますけど、僕としては順調といった方も気になっています、ダンジョン外でも食材は育つのは分かりました、でもそれはジャガイモや麦など、出来た物を種として育てる野菜だけです、葉野菜などは種が取れません、なのでスライムを外に出して育てる必要があり、今まさに試している所です。


「森林外の街で育つ速度がダンジョンとは違うのは分かったけど、さすがにあの人たちをダンジョンに入れる訳には行かなかったんだよね」


おじいちゃんたちは、どうしても神様にお願いする事を止めません、オオガラスが助けたのも神のお導きとか言ってるんだ、だから畑を作る以外は中止になってしまったんだよ。
ガッカリしながらもこちらが上手く行く事を願っています、幸いにしてエルフさんとウサギさんの村はスライムを外に出して育てても難色を示していません。


「シンジはあいつじゃない」

「そうだねミント、だからスライムを隠さずに接触させてみたんだ、助けた事でハードルが下がってくれたよ、食べ物が無いのが分かってるのも強みになった、外で育てる知識を与えたから余計だね」


エルフさんの方には、大豆や米を栽培して上手く行ってます、対してウサギさんは肥料が大きかったです、あれのおかげで土が元気になり、元から育てていたニンジンの品質が良くなったんだ、その後他の野菜がタネスライムから出来ると知って運んでもらったんだよ。


「10分という区切りがダンジョン内の事なのは驚き、外に出す時間が取れたってシンジは喜んでたよね、育つのは遅いけどしっかりと育つ、だからシンジは心配し過ぎ」

「タネスライムから直接栽培は初だもん、心配するのは当然でしょ・・・まぁ岩スライムや流水スライムと違って枯れたりはしないとは思ってるよ、成長速度が遅くなるのは想定してたしね」


ダンジョン内との魔素量が違うからか、タネスライムを合体させてないスライムたちは、外に出すと干からびてしまいました、おそらく魔素の量が少ないからです、タネスライムたちの10分区切りと言う間隔もそれが言えます、栄養を取れないからと推察したんだ、僕の知ってる野菜の成長速度と同じになっていました。


「スライムはそんなにやわじゃない、この人たちがやわすぎ」


ミントが2つの画面を見始めます、そこに映っているのはエルフさんとウサギさんです、どちらもため息が出るほどの状態なんだ、スライム農夫たちに訓練されているんですけど、みんな直ぐに疲れちゃうんだ。


「それも懸念の1つだよミント、レベルが上がらないと、どうしても力の差は埋まらない」


森林外の村で分かっていたことです、畑から作った食べ物は食しても経験値になりません、だからエルフさんやウサギさんたちは、レベルが上がりにくいんです、スライムから直接ならばと今回少し期待しています。


「とは言え、育つのに時間がかかるから検証は先なんだよね」

「うん、だからシンジは先にスキルを上げる事にしたんだよね、頭良い」


僕に後ろから抱き着いて頭をヨシヨシってしてきます、最近これがミントのお気に入りです、後ろからだとやりたい放題とか言ってるんだ、僕が抵抗しないだけなんだけどね。


「まぁ香辛料系のスライムたちが育てば変わるよ」

「うん、きっとそうなる」


茎スライムや木スライムたちが外で育ち、作物が採れればかなりの経験値になります、問題は取得できるかに掛かっています、森林の村で実験が出来なかったのがここに来て重くのしかかるよ。


「せめてリビングスライムを倒せるくらいにはなってほしいね、ラージスライムがやっとじゃちょっとね」


食事でのレベル上げは正直諦めました、なので戦闘で上げようと訓練を始めたんだ、ダンジョンを深くして戦う場所と時間を作りました、でもスキルの訓練同様に直ぐに、彼らはバテてしまって引き返す事になってます。


「仕方ない、この人たちはダンジョンに慣れてない、冒険者とは違うもん」

「そうだねミント、だからヒューマンの冒険者たちには期待してるんだ・・・結局今は同じくらいだけどさ」


僕は少しがっくりして、ヒューマンの冒険者が映っている画面を見ます、そこではダンジョン1階で訓練をしている女性冒険者さんたち映ってるんだ、スライム騎士たちに指導され順調に成長しています。


「それでもリビングスライムは倒せる」

「まぁね、それにこの人たちは他にも目的があるから応援したいんだ、外の街でモンスターが悪い者でないってわかって貰う為にね」


スライム騎士の要望でもあって僕は了承しました、彼女たちには期待してるんです。
それを聞いてミントは頬を膨らませます、僕は後ろに手をまわしてミントを撫でて機嫌を取りました、ミントは嬉しそうですけど、料理を作ってくれたら許すとか言ってきました、丁度子供たちも勉強が終わり昼食の時間です、今日は外で食事をしようと提案し、僕の作った料理を外に運んで行ったんだ、僕とミントは料理屋でふたりで食べます。


「んふふ~おいしい」


お店に着いた僕たちは子供たちを見送り、ミントの今のお気に入り(エビフライ)を揚げて食べ始めたんだ、ソースを付けたり、タルタルソースだったりと色々味を変えて食べます、僕も一緒に食べてとてもおいしかったです。
エビフライなどの油物が外でも作れる様になる事を願い、僕はふと思い出しました。


「そういえば、ユニーシャの料理人がくるって話はどうなったのかな?」


魔王城で式を済ませたのでこちらに来るはずです、ミャオサーに聞いています、その時頑張ったご褒美にお寿司を握ってあげたんだ、クロネオたちの武勇伝も聞いて楽しく遊んだのは言うまでもないね。
その時、マタタビのお酒を飲んでいたミャオサーがほろ酔い状態で愚痴っていました、近いうちに料理人が指導を受けに来るという話もその時に聞いた事です、その為に準備はしてあります。


「来ないならその方が良い、またシンジとの時間が減る」


ミントが頬を膨らませてご機嫌斜めです、メムたちの教育がひと段落して、周3日になって喜んでいるんです、そうでなくても、リングでの通信で時間を取られるって怒っています、僕はエビフライをミントの口に持って行って機嫌を取ります、お返しに僕にもエビフライを勧めてきて、なんだか恋人みたいなやり取りをしばらくしました。
そして僕は、今まで棚上げになっていた問題を思い出し冷や汗を流します。


「繁殖期かぁ~・・・考えたくないなぁ~」


イカリングをミントの口に送って僕は恐怖します、魔族には繁殖期があります、それは3か月後に必ず訪れます、僕がここに来た1ヶ月前にも起きていて、クロネオたちは初めての体験をするんです、そして子猫たちは成人して来年には対象となり、ミャオサーは4度目の体験です、しかも悪い事があります、食糧難で去年はミャオサーが控えていて、その反動が今年に来るそうです。
それを聞いた僕は、とても嫌な予感がしてるんです、ミントも最近ボディータッチが増えました、それを受けて僕の体にも変化があり、かなり動揺するようになってるんです。


「僕も男だから仕方ないのかもだけど・・・家族と思ってるはずなのにおかしいんだよね・・・もしかして、僕も前とは違うのかな」


下からミントを見上げて僕は思っています、前にも種族が変わっていると思ったことはありました、これはきっとそういう事なんです。
経験がないわけではありません、でも教師として、教える立場の僕が感情に任せるのは違う気がすると、我慢をしていました。これが無駄な抵抗だというのは言うまでもありません。
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