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2章 選択

33話 取り込み

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「そうか、やはり船団の奴らが来たか」


俺が船に帰ると、ネニネイの手当てをしているハルサーマルが見えた、その時点で分かってはいたが、ほんとに攻撃してくるとはな。


「そうなんですよ先生、ネネに怪我をさせるなんて許せない!」

「そういうお前も怪我をしているぞ、ネニネイ手当てしてやれ」

「はい先生、ほらハル」


ふたりのイチャイチャを見ながら、俺は船団の支援をどうするか考えていた、普通に助けるつもりだったが、作戦と思われ疑われるかもしれない。


「まぁなんにしても調べてからだな、ちょっと行ってくる、ハルサーマルたちは夜食の準備をそのまましていてくれ」


ハルサーマルたちにそう言って、俺は空を飛んで船団に向かった、もちろんその前に亜生奈を撫でてから向かったぞ、ウンディーネにも来てもらう予定だったし、帰ったことを伝えるのは大切な娘からだ。


「寝ていたら撫でるだけにするつもりだったのに、俺が帰ってくるのを起きて待っていてくれるとはな・・・さて、これは予想よりも軽傷か」


亜生奈は夜食を食べると意気込んでいたが、すでに目を擦って眠たそうだった、身体に悪いとベッドまで運んだら、その途中で寝てしまう程だったよ、かなり我慢していたんだろう。

明日はのんびりとしたいなっと思いながら、上空から船団の被害状況を見た、どうやら銃火器系を集中的に壊していたようだ、そして侵入してきた奴らも責任者たちを重点的に狙って降伏させた、ほんとに凄腕だなレリーベ。


「まずは船団長の所に向かうか」


俺はブリッジに飛んだ、だが外から見たが明かりが付いていない、恐らく全員怪我をしたから移動したのだろう。


「となると調べないと居場所が分からんな『エリアサーチ』・・・あそこか」


俺はエリアサーチで調べ、3つ奥にある船の甲板が野戦病院の様になっていたのを確認した、その場所に向かう途中、他の船でもいくつかの灯りが見えた、甲板ではそうなっていて怪我人は多いのだろう、そして目的の場所に降りると、かなり重傷の船団長とその補佐たちを見たんだ。


「随分な姿だな船団長」


今は周りが忙しくしているから簡単に接触出来た、船団長は包帯でグルグル巻きだが俺を睨んできたよ。


「ワシを笑いに来たか、いいさ笑うがいい、だが仇は本隊が取ってくれるだろう」

「海賊はなるべく死人は出さないで攻めている、それでも略奪はダメだとは思うが、お前の部下はそれをしていたんだぞ、それに戦い方だってもっとやり方があったんじゃないのか?」


俺たちは遠目から見ていた、海賊がある程度近づいたら船団から攻撃を開始した、つまり話し合いをしなかったんだ。


「戦闘の準備もあるだろうに、いきなり始めてしまったからお前たちの戦闘班は遅れた、一方海賊の方は全て準備が済んでいて、冷静に作戦を進めて攻め切った、これはお前の浅はかな判断のせいだ」

「ぐっ」


何も言い返せないようで腕を振るわせている、だが本当の事だ、少しでも話し合いの時間を設ければ、戦闘の準備が出来た、こいつは下の状況を知らなすぎる。


「だが俺も鬼じゃない、助けてやろうとやってきた、俺の支援を受けるか?」


顔を横に向けこいつは考えているようだ、自分のプライドが許さないのだろう、そんな物と天秤にかけるまでもないと思うんだがな。


「お、お前のような裏切り者の手助けなどいるか!」

「そうか、トップの船団長がそうまで言うのでは仕方ない、俺は帰ることにしよう」


俺はさっさとあきらめ空を飛んだ、だが少し上昇して停止した、あることをする為だ。


「ご苦労様でしたマスター」

「ウンディーネ、予定通り回復魔法の手伝いをしてくれ」


俺はそう言って魔力をウンディーネに注いだ、そしてウンディーネは歌いだしたんだ、雲もないのに雨が降り出した、その雨は癒しの水になる、これが俺とウンディーネの広範囲回復魔法だ、これでテントに入っていない者たちは回復する、それを見てテントから出て来る者たちが現れてくれば、その者たちも回復する。

俺は船団長が助けを拒むと思っていた、何故なら海賊との戦闘時、俺に通信をしなかったからだ、頭の固い者は何を言ってもダメだからな。


「こんなものか、さすがに苦しむ人を見ると放っておけないからな」


30分してウンディーネに歌を止めてもらった、何も考えないで助けることが出来れば、こんなことしなくても良いんだがな、まったく迷惑な話だ。


「マスター・・・下の人たちがこちらを見て手を振っていますが」


俺がため息をついていたら、ウンディーネがそう言って下を見ていた、確かに笑顔で手を振ってる者たちが多いな。


「気にするなウンディーネ、帰ろう」


そう言って俺は船に向かって飛んだ、海賊が略奪をしただろうがエープル大船団に戻るまではもつだろう、もしダメでも、それは俺の支援を断った船団長が悪い。あいつを蹴落とし頭の良い奴が上がることを願うよ。


「さて、夜食を食べたらここを移動する、それをレリーベに伝えてくれるかアソ」


俺が船に帰ると、アソたちがどうしてかまた戻って来ていた、ハルサーマルたちが警戒していたよ、仕方ないので夜食を一緒に取っている。ハルサーマルたちが準備してくれたお腹に優しい魚のスープと、おにぎりだ。


「おう任せな、これ食ってからだ、おかわりくれ」

「少しは遠慮しろよ!ったく」


スープのお代わりを要望してハルサーマルがお椀を受け取ったよ、そして俺のいなかった時の話をして食事をしたが、なかなかハードだったようだ。


「よくやってくれたふたりとも、さすが俺の弟子だ」

「当然ですよ先生、なぁネネ」

「ええ、あんな奴ら私たちの敵じゃないわ」


すごく得意げな顔をして二人が嬉しそうだ、ほんとに強くなったよな。


「さて移動するか、ハルサーマルついて来いよ」


ハルサーマルとネニネイに聞こえるように言いながら船を動かした、亜生奈はイナークと寝ていると玄武が伝えてくれた、どうやらイナークはかなり回復しているらしい、俺のいない少しの間にすごいと思ったぞ。


「俺は一晩一緒だったのに進展なかったんだがな・・・ここらへんか」


2時間位移動して目的の場所に着いた、俺たちの後ろにはしっかりと海賊の船団が着いて来ていたよ。


「さて、収納から出してっと」


とても大きな土台が収納からドドンと出てきて上空に浮いた、それが海に着水して島が出来上がったんだ、ハルサーマルとネニネイは口を大きく開けて驚いてるよ、きっとレリーベたちもだろうな。


「せ、先生!?さすがにこれは、異常すぎます!」

「そう言うなハルサーマル、それにまだ何もない陸が出来ただけだ、ここからが本番だぞ」


木を植えたり、マーメイドの時にも設営した施設を設置したりと色々することはある、俺たちは出来上がった島に上がり船を固定した。


「これが陸と言う物なのね、何だか揺れている感じがするわね」

「それは船が揺れていたからだネニネイ、島は揺れてないから感覚が変になってるんだ、じきになれるぞ」


船着き場をノームと一緒に作りながらそう伝えた、海賊の船団は大きくて高いからな、さすがに何もない場所には泊められない。そして出来上がった港に早速海賊船団が着き、レリーベたちが降りてきたよ、だがどうも様子がおかしい。


「けけ、ケンゴ様!どうか今までのあーしらの無礼をお許しください」

「「「「「許してください!」」」」」


俺たちの前で降りてきた海賊が全員土下座したんだ、ハルサーマルとネニネイが俺をじっと見てきたよ。


「レリーベ頭を上げてくれ、俺は別にお前たちが思っているような存在じゃない、変わったことが出来るただの人なんだ」


説明のしようがないので仕方なくそう言った、レリーベは頭を上げたが、まだかなり怯えている。


「ふふふ普通の人がこんな島を出せるわけがない、あなた様は神なのだろう?」

「いや違うんだ・・・まぁ説明のしようがないから証明は出来ないんだが、畏まるのは止めてくれお願いだ」


俺の精一杯の言葉だ、これで分かってくれるとは思えないが仕方ない、俺はまだオドオドしているレリーベたちに施設の使い方を説明した、ここではさらに自然に優しいエネルギーの生産もする予定なんだ。


「っとこんなとこだ、やっていけそうかレリーベ」

「はい!何とかなると思いますです」


言葉使いを直そうとしてくれているようだが、うまくいっていない、まぁ時間が経てば何とかなるだろう、問題は施設を運用できるかだ。


「最初は難しいと思うが、今日はこれくらいにして少しずつやって行こう、俺もレリーベたちの生活が軌道に乗るまでは一緒に暮らすからな」


ここでしばらく旅は休憩だ、陸での釣りも楽しいものだし、イナークの休息にも丁度いいと思っている。

なんだかんだ言っているが浜辺の釣りは楽しみだよ。
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