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3章 異世界巡り

62.1話 (おとは回4)相談です

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「う~ん、これはどうした物かしら」


ワタシは今、授業を聞きながして悩んでいます。大したことじゃないの、ただワタシが感じているモノはちょっと特殊ってだけです。


「でも、この思いを伝えないと終わらないし始まることもない、それは今まで男性と付き合ってきた感じで分かるけど・・・でも相手が相手だし、ダンスサークルのように行けなくなるのは・・・やっぱり嫌だなぁ」


そう言いながら憂鬱に悩み、指で机をトントン叩いています、授業も全然頭に入りません。


「そこの君」


誰かが何か言ってますけど、ワタシには聞こえていませんでした。

それどころじゃないのよ、それだけワタシの今の気持ちは本気なんだと思う、こんなこと初めてよ。


「今のサークルは楽しいし、気まずくなるのは嫌だわ」

「そこの君!聞いてるのかね?」

「え!?」


遠くでそんな声を聴き、ワタシは声の方を向いたんですけど、講師の先生が怒っていました、周りを見てもすごく困った生徒たちが見てたのよ。どうやら声に出てたみたいなんです。


「周りに迷惑になる行為は止めて貰いたいものだね君」

「す、すみません」


ワタシは謝って下を向いてしまったわ、授業中なのをすっかり忘れてました、それに独り言を言ってたのもまずかったわ、静かにしていれば気付かれなかったのにね。


「はぁ~失敗失敗」


授業が終わり、ワタシは伸びをしました、もちろん先生がいなくなってからよ、それに生徒もね。

他の生徒なんてヒソヒソ話して出て行くの、でもそんな事に構っている場合ではないわ、こっちが問題よ。


「さて、どうしたものかしら」


考え事をする間もなく、スポーツ研究サークルの部室の前に来ました。

サークルの部室が近いのはこう言った時は困るわね、中からは声が聞こえないから誰もいない様だけど、中に入って待っているしかないわ。


「ちょっと緊張するわ・・・いつも通りにっと」


深呼吸をしてワタシは部室に入りました、でも誰もいないと思っていた部屋には、パソコンに向き合っている玉木さんがいました。

そう言えば玉木さんと、吹雪さんは研究に夢中になると、周りを全然見ていませんでした。


「あの状態の玉木さんって声を掛けにくいのよね、でも掛けないのは失礼って思うし・・・うぅ~悩むなぁ」


そう思ってしばらく扉を開けた状態で止まっています、これでも玉木さんは気付かないでキーボードの音を立てています。


「乙葉、なに部屋の前で突っ立ってるんだ?」

「え!?」


ワタシが悩んでいると、後ろからそんな声が聞こえ驚いて振り向きました、そこには今、ワタシの中で問題の人がいたんです。


「も、桃花さん!こんにちは」

「ああ・・・それで、どうして部室に入らないんだ?ああ、なるほどな」


ワタシの横に来て顔を近づけてきました、そして部室の中を覗いて分かってくれましたよ。

でも、ワタシはそれどころじゃないわ、顔が・・・桃花さんの顔がわたしの直ぐ横にあります、近いですよ。


「も、桃花さんはいつもどうしてますか?」

「そんなもん普通だ、どうせ玉木は気づかねぇし、気にするなよ乙葉」


そう言って桃花さんが部室に入り、いつもの席に座りました、ワタシも行きたいんだけど、タイミングを逃したわ、ワタシの席は桃花さんの隣なのよ。

どうしてワタシの席って桃花さんの隣なのかしら、こういう時は意識しちゃって困るわ。


「どうした乙葉?早く座れよ」

「い、いえ・・・玉木さんの作業を見ようかと思いまして」


誤魔化す為に、玉木さんの後ろに移動しました、画面を見ても全然分からないのにです。

不自然だったかなと、桃花さんをチラッと見たけど、スポーツ雑誌を見ていて分からないわ。


「乙葉、悩み事?」


後ろで見ていたら、玉木さんがパソコン画面を鏡代わりにして見て言ってきました、それでも指は変わらずキーボードを打っていて作業は進んでいます。


「ま、まぁそうですけど、分かりますか?」

「うん、いつも楽しそうな笑顔だった、なのに最近ずっとそわそわ。合宿から?何かあったと、少し心配」


こんなに長く話す玉木さん初めてです、長く話してるのに短く聞こえるのは何でだろう?


「あったと言うか、気づいたと言いますか・・・ちょっとどうしようか考えてるんですよ」

「そう・・・止まるより、進んだ方が良い、僕はそう思う」


玉木さんの目線が画面でこっちを見ています、さすがにこちらに意識しているので指は止まりました。

そんなにワタシの事を心配してくれるんですね、ちょっと嬉しいです。それに玉木さんが僕って言いました、僕っ子だったんですね知らなかったです。


「玉木さんって僕っ子だったんですね、可愛いです」


玉木さんの頭を撫でながらそう言いました、この行動は無意識です、凄く可愛くてついやってしまいました。


「乙葉、僕は先輩」

「あ!?そうでした、すみません」


撫でるのを止めてワタシは謝りました、でも怒ってる玉木さんが可愛くて笑顔で謝ってしまいました。


「むぅ~乙葉、悪いと思ってない」

「思ってますよぉ~すみませんって」


そう言ってワタシは、玉木さんの肩を揉んでいます、笑顔なので分かってしまうのでしょうね。


「もういい」


むくれたままで話を止め、玉木さんが作業に戻ってしまいました、ワタシは話を逸らすことが出来て良かったと思ってホッとしています、でもここで桃花さんが本を閉じてこっちを見てきたんです。


「なぁ~乙葉、ちょっといいか?」

「は、はいっ!?」


ワタシは少し体を緊張させて返事をしてしまいました、声も変だったかもです。これだけでも、ワタシが何か変なのは分かってしまいますよね、桃花さんに部室の外にある一番近い自動販売機まで連れて行かれました。


「ほれっいつもの」


自動販売機で、ワタシがいつも飲んでいるコーヒーを桃花さんが投げてきました、それをキャッチすると、桃花さんが近くにあった椅子に座り、自分の飲み物を一口飲んだの、そしてワタシを見たわ。


「そんで、何かあたしに言いたいことがあるんだろ?言ってみろよ」

「そ、そのですね、なんと言ったらいいか、とても迷うのですけど」


ここでワタシは、桃花さんが自分の顔に見えました、男性が自分にしてくる告白を思い出したんです。

みんなこんな気持ちだったのかな、そう思うとあの人達もやっぱり本気だったのかもね。


「ハッキリしないな、もしかしてあたしの怪我の事か?」


桃花さんがそう言うと、少し顔を曇らせました、あまり聞いてほしい話ではないんでしょう、ワタシもあの後少し調べました、結果を出すために、過度な練習をしてしまった桃花さんは、膝を痛めてしまったんです、それは手術をしないと治らないモノで、完治しても元のようにプレー出来ないかもと言う、選手によくあるやつです。

桃花さんは間違ってません、父さんとの話でも、自分で道を選んだんですからね、だからこれはワタシの気持ちです。


「違います、ワタシって自信を持ってこれを頑張ったってモノがないんです、だからそれを持ってる人がとても輝いているように見えまして」


ワタシは、今の自分の気持ちを全部言葉にしました。スポーツでプロになり、無理をして怪我をしたけどそれでも頑張っていた。そんな桃花さんがすごくカッコよくて、それでいて悲しそうな顔が頭から離れないって。桃花さんがどう思っているか分からないけど、黙って聞いてくれています。


「あたしってそんな風に見えるのか?普通にしてるんだけどな」

「それは・・・きっとワタシがお父さんを見ているからだと思います」


合宿所でお父さんが話していましたけど、ほんとにあの時は、世間に騒がれて大変だったんです、ワタシたちといる時は、あんなに明るいお父さんが、悲しそうな表情をしてるのを夜に見てしまった事もあります。

あれを見たら自分の悩みなんて吹っ飛びますよ。


「そうかぁ・・・かっこいいもんな健吾さんは」


桃花さんの表情を見て、ワタシ分かっちゃったんです、桃花さんはお父さんに恋心を抱いていたって、だから弱い自分を見せたくなくて、お父さんに助けを求めなかったのかもしれません。


「不器用なんですよ、でもそれがワタシには響いたんです・・・だから」

「乙葉、その先を言う覚悟がお前にあるのか?あたしも乙葉も女だ、これは健吾さんに思いを伝えるよりも、険しい道かもしれないんだぞ」


桃花さんにそう言われ、ワタシは少しためらいました、やっぱり桃花さんは、お父さんに告白しようとしたんですね。父さんに認めてもらう為に頑張ったけど、怪我をしてしまい自分が許せなくて、あきらめちゃった。だからワタシに忠告してる、女性同士で付き合うとか、世間がどう見るかなんて目に見えてますからね。


「一人じゃ多分耐えれません、でも二人でならきっと」

「そうか・・・本気なんだな」

「はい!」


元気よく返事をしました、でもワタシ、自分が何を言ったのか少しして実感が湧き、顔がすごく熱くなりましたよ、恥ずかしくて桃花さんの顔を見れません。

これって告白って事よね、ワタシ勢いに任せて桃花さんに告白しちゃったわ。


「そうか・・・あたしも前に進みてぇな」

「え!?・・・それってもしかして」


ワタシは少し嫌な予感がしました、だって桃花さんの顔が、乙女になってる様に見えるんです、そしてそれはお父さんに向けらていると思うんですよ。


「あたしさ、怪我でダメになった時、後輩と付き合ってた時があったんだ、女同士だったけど、あたしは本気で付き合ってた。だけど健吾さんへの気持ちが伝わったんだろうな、喧嘩になって別れちまった」


好きな人の気持ちは伝わるんだよね、だからその気持ちが自分に向けられてないって分かっちゃう、全部を欲しくなるんです。


「だからあたしは、それを吹っ切ってから乙葉に答えを出す、それでもいいか?」

「つ、つまりお父さんに告白すると言う事ですか?」


ワタシの質問に桃花さんが頷いています、その顔に迷いは見えません、正直すごくカッコイイです・・・でも。


「あ、あのワタシも一緒に聞いていいですか?」

「まぁ、健吾さんと連絡するには乙葉がいないと無理だからな・・・いやでも烈男さんに頼めば」

「いえっ!ワタシが連絡をします、ええもう任せてくださいっ!」


ワタシは食い気味にそう言いました。

きっと桃花さんは年齢とかを気にしてるんです、でも今のお父さんには、若い女性が沢山ついてます、あれを見たらためらいが無くなっちゃう、それにお父さんが断らないかもしれません。うん、可能性はあるわ・・・それだけは絶対にその場で聞きたいわ、後で何て心臓が持たないわよ。


「じゃ、じゃあよろしくな」

「はい、任せてください桃花さん」


っと言う事で、桃花さんの気持ちを整理した後付き合うことになりました、でもまずは友達として遊びますよ。
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