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1章 モフモフの為に

4話 カレーが食べれない

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「そ、そんなバカな!?」


僕は今、この転生をして、初めての絶望を味わっています。
大鍋に肉を投入して炒めてから、野菜と水を入れて煮込んだまでは良かったんだけど、折角買ったカレーのルーを袋から出したら、その匂いで鼻をつまんでルーから離れたんだ。


「あれだけ大好きだったのに、バーベキューにはカレーなのに」


どうしてもカレーの匂いがきつくて、ルーを入れる事が出来なかったんだ。
仕方なく、カレーを諦めて肉じゃがに変更したけど、まさかこんな落とし穴があるとは思わなかったよ。


「これは、他にもありそうかも」


匂いのきつい食べ物、それは色々あって僕の好きな食べ物もあるんだ。
でも、ニャンコを止めるよりはマシだし、食べれないと思うとやっぱりショックが大きいです。


「匂いのきつい食材は全部とは言わないけど、ニンニクとか使えなかったら、かなりきついよぉ~」


どうしようっと思いながらも焼きそばを焼いて行き、少しでもバーベキューらしさを出して見ました。
でも、一番の主役が食べれないとせっかく炊いたお米が食べれず、どうしようと悩んでしまったよ。


「同時に作ったから、おにぎりにでもしようかな」


そう思ったんだけど、そこでもまた問題が出て来て、自分の手を見て絶望したよ。
そう、焼きそばを作っている時も、フライ返しを何とか持って作ったし、そこで気づくべきでした。


「肉キュウでおにぎりは無理だ」


昼の食事でも、みんなは手づかみで食べていて、焼きそばは爪で挟んで食べるだろうと予想していました。
だからおにぎりは何とか作りたいのだけど、どうしようと悩んでしまいます。


「そう言えば、何処かでお椀を使うやり方があったかも」


とても前の転生で聞いた事を思い出し、お椀を2つ使って丸いおにぎりを作っていきました。
具材が入れられないけど、そういう時は外側に巻けば良いと、肉巻きにして行きます。


「巻くだけなら肉キュウも平気なんだよね」


肉キュウは良い物だし、不便があっても絶対今のままがいい。
試行錯誤すればいいのだからっと考える事にして夕食の後、僕は頑張ってカレーに挑戦しようと思ったんだけど、家族がダメと反対してきます。


「そう言わずにさ、匂いを弱めるから」
「ダメにゃ」
「そうみゃ、匂いが辛いみゃ~」


妹たちが尻尾を太くしてまで反対して来て、いつも優しい姉たちも頷いてきます。
僕も鼻栓をしないと無理なほどだから分かるけど、どうしても食べたいとお願いします。


「どうしてそんなに食べたいのよグゥガ」
「だってカレーだよ、誰もが好きなカレーなんだよ」
「でもねグゥガ、今かなり無理してるでしょ」


シャム姉さんに言われ、僕もそれが分かってるからしょんぼりです。
まさか、あれだけ大好きだったカレーが食べれないとは思いませんでした。


「うぅ~仕方ないのかなぁ~」
「無理は良くないわグゥガ、獣状態のウチ達は辛いわ」
「うんシャム姉さん・・・みんなごめんね、僕のわがままだった」


ニャンコの悲しそうな顔とカレーどっちを取るかの選択を迫られ、僕はニャンコを取りました。
当然ではあるけど、それでみんなが笑顔ならそれで良いんだ。


「みんなにお詫びをしないとね」
「それなら、ブラッシングしてよグゥガ」
「そうね、みんなもそれが良いわよね」


妹たちが返事をして、僕は皆のブラッシングを始めました。
カレーの匂いが付いてしまい、みんな辛そうなので、僕はシャワーを提案します。


「嫌にゃ~」
「水浴び嫌いみゃ~」
「ミーケとシークの嫌がるのも分かるけど、匂いが付いたままだと寝れないでしょ」


それは困るとふたりは言って来たので、今日だけとお願いしたんだ。
僕が洗ってくれるならと提案してきたので、ホッとして了承し、姉さんたちもお願いしてきます。


「じゃあ、洗うだけじゃなくてシャンプーとかも使って見ようか」
「「「「シャンプー?」」」」」
「うん、更に毛がフワフワのさらさらになるんだよ」


とても綺麗になると教えて、僕は簡易式シャワー室を外に設置したんだ。
湯沸かし器を出したからお湯もちゃんと出て、まずは一番下の妹ミーケです。


「うにゃっ!?水が暖かいのにゃ」
「お湯って言うんだよミーケ」
「凄いのにゃ」


はははっと笑い、シャンプーを使って喜ぶミーケを洗っていきます。
泡にじゃれて来るミーケは楽しそうで、これなら今後もいけるかもと期待したよ。


「あわあわにゃ~」
「じゃあ、泡を落としていくから、耳を押さえてねミーケ」
「うんにゃ~」


耳を押さえるミーケはほんとに可愛くて、このまま抱きしめてあげたいけど、この後拭いて乾かすまでが僕のお仕事で、更に後が3人待っています。
水浴びと思っている3人は、僕が水浸しで現れていやがったけど、その後にニッコニコのミーケが、フワッフワに仕上がって戻って来てびっくりですよ。


「平気にゃミーケ」
「うんにゃ」
「ちょっとミーケ、そんなに楽しかったの?」
「そうにゃキキ姉、とっても気持ち良いにゃ~」


それを聞いて、次のシークは楽しみになったのか、ウキウキしながら僕に付いてきます。
でも、シャワーの水を見て逃げようとしたので、首根っこをつまんで止めたよ。


「ほらほらシーク、怖くないよ~」
「うみゃ~」
「良い子だねシーク、そのままだよ~」


耳をぎゅっと抑えて丸くなって動かないシークは、ミーケとはまた違った可愛さがあり、シャンプーを付けて早めに泡立てたよ。
でも、気持ち良くないと今後も浴びようとしないので、ここで毛の手入れに入ります。


「どうかなシーク、モミモミすると気持ち良いかな?」
「うんみゃ、フワフワして来たみゃ」
「じゃあ、もう少し揉みほぐすね」


シークも気持ち良くなった様で、耳から手を放して来て、泡を落とす時だけぎゅっと目を瞑って来る感じになってくれた。
外で毛を乾かす時は、もうウットリしてて今後は平気と思ったよ。


「うみゃ~良い気持ちみゃったよ~」
「じゃあ、次はキキ姉さんね」
「う、うん・・・優しくしてねグゥガ」


みんな優しくしているのに、そんなに怖いのかと思った僕は、もっと優しくするように心がけ、キキ姉さんを撫でる様に洗っていきました。
そして、それはシャム姉さんも同じで、みんなとっても喜んでくれたんだ。


「あらあら、ワタシがいない間に、何だか変わったことをしてるわね」
「カカ様、ちょっと僕の実験で匂いが落ちなくてですね」
「あらあら、じゃあ家のこの匂いはそのせいなのね」


カカ様の笑顔が怖くて、匂いが相当残っている様で、カレー作りは永遠に禁止になりました。
そして、みんなの香りも嗅ぎ分けたカカ様に、シャワーの使い方を教えたのは言うまでもありません。
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