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2章 モフモフ同志の為に

25話 ゴブリン討伐

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「どうしてオレたちが」


指揮官育成科の生徒が文句を口にするけど、そんな事とは関係なく、戦いは今始まろうとしています。
今回の指揮官である、学園の教頭【イーンズラ】が今回の戦いの成果で、次の戦場の配置を決めると言ってきました。


「優秀な成績を収めた者は、前線のより安全な場所に配置する、以上検討を祈る」


そう言われ、僕たちは回れ右して荒野の先に見えるゴブリンの大軍に突撃します。
相手は3000という数で、僕たち1年は全員で300人と言う、普通に考えたら勝てない状況です。


「それなのに、突撃するだけとか、オレたちを殺す気かよあの教頭」
「サズラ、最初に士気を上げていたでしょ」
「その意味も訳が分からなかったけど、ファシミアの言う通り」
「ハクア、分からねぇなら意味がねぇんだよ」


それもそうだと笑って、僕たちはゆっくりと走り、戦力が上がるわけじゃないと、サズラがイライラしていたよ。
僕も同意見だけど、僕たちのクラス以外は、その言葉を信じてやる気を出して突撃していますから、少しは役にたちました。


「あれじゃ、死人が余計増えるね」
「どうするのよグゥガ」
「ファシミア、僕に聞かずリーダーのフォーミに聞いてよ」


新顔のフォーミを信じていないのか、先頭を走るフォーミを睨むような視線が集まります。
そして、フォーミもそれは分かっていて、みんなの信用を得る為の話し合いは終わっているよ。


「あなたたち、科が違うからって気に入らないのかも知れませんけど、ワタクシを甘く見ないでくださいましね」


フォーミが手を上げ止まる事を指示すると、僕たちのクラスだけがその場に止まりました。
そして、次に行ったのは各小隊にいる魔法使いによる詠唱で、ファシミアとサズラが詠唱をしてないハクアに視線を集めたよ。


「あれは、風の障壁魔法【エアーカーテン】」
「障壁って、何処に作るんだよ」
「そうよ、今は突撃中よ」


文句を言いながらフォーミを睨む二人だけど、その魔法はゴブリンと突撃する生徒の間に発生し、突撃してる前方部隊を遮る(守る)壁になったんだ。
でも、前方にしか壁はなく、ゴブリンたちがサイドに迂回すれば両側からの攻撃を受けることなる状態とフォーミは説明したよ。


「これじゃ挟まれるぞ」
「そうねサズラ、だから良いのよ」
「な、何を呑気に言ってやがる」
「そうよ、数が多いのだから挟まれたらお終いじゃない」


ふたりの心配の通り、数分後にはサイドからゴブリンが走って来たけど、そのタイミングで魔法は解除され前方が手薄になったんだ。
そこに止まっていた前方のクラスが突撃を開始し、手薄になった正面に攻撃が集中して突き進めたよ。


「こ、これって」
「ふたりとも、口は良いからワタクシたちも行きますわよ」
「お、お前に言われなくても」
「やってやるわよ」


僕たちのクラスも前進を開始し、向かってくるゴブリンを殲滅したけど、サイドに広がっていたゴブリンたちが後ろから迫って来ます。
そこでまたファシミアとサズラが指摘するけど、フォーミが平気と視線だけを後方に向け、そのタイミングで後方に大きな氷の柱が無数に飛び出したんだ。


「な、なんだよあれは」
「罠として置いた氷の魔法石ですわ」
「そ、そんなもんいつの間に」
「ワタクシたちのクラスが後方にいるのは、ただ障壁を作るだけではないのですわよサズラ」


走りながらドヤ顔を決めるフォーミに、さすがのサズラも言い返せず、部隊はどんどんと突き進み、後方のゴブリンたちは氷漬けで、ゴブリンの大将のいる場所まで進んだんだ。
でも、さすがに普通のゴブリンじゃないから、生徒たちもただじゃ済まなかったよ。


「予定通りだけど、さすがに被害は大きいかな」
「そうですわねグゥガ、作戦をAからBに変更しますわ」
「了解、数名を連れて陣を築くよ」


フォーミの指示で、僕たちのクラスで仮設陣地を作り始め、氷の柱を立てて区画したんだ。
そして、怪我をした生徒の搬送も、フォーミと残りの生徒で同時に行われたんだよ。


「倒れてるゴブリンにも注意するのですわよ」
「お、俺たちは戦わないのかよ」
「サズラ、戦場ではセイフゾーンは大切ですのよ」


活躍の場面はあるとサズラを説得し、僕たちは仮の救護班になりました。
そして、ある程度救護を終えると、僕たちの出番が来たんだ。


「さぁ残るは、ゴブリンキング1体、みんな行きますわよ」
「待ってたぜ」
「腕がなるわね」
「魔力は沢山ある、絶対倒す」


皆のやる気も最高潮で、僕たちの小隊だけで前進しました。
途中で主人公と王子のPTがいて、王子たちが傷だらけだったから治療を優先したよ。


「大丈夫ですの?」
「お前たち、後方の部隊か」
「や、止めておけ、あいつは桁違いだ」
「そ、そうだ、騎士でもない平民の敵う相手じゃない」


何やら言って来る王子たちだけど、主人公も平民だし、回復魔法を使って助けられてるのはそっちとツッコミたいです。
でも、僕たちのリーダーはフォーミで、僕はサズラとファシミアを止めるのに専念したよ。


「ワタクシは、フォーミ・ポートスと言います、この小隊のリーダーをしていますわ」
「「「「「小隊?」」」」」
「そうですわ、あなた達は何も考えずに組んでいたPTなのでしょうけど、ワタクシたちは違うのですわ」


それだけを言って、フォーミを先頭に走り出し、サズラたちは何か言いたそうか表情をしています。
きっと、フォーミを見直しているんです。


「さて、ここからはワタクシは手を出しません、ハクアさんと後方にいますから、3人は存分にやりなさい」
「良いのかよ?」
「実力の知らないワタクシでは、サズラたちをうまく指示出来ません、ここはグゥガの指示で戦う事を提案しますわ」


よく考えていると、サズラたちは納得してくれて、僕がかく乱している内にサズラとファシミアが戦技をぶち込み、トドメをハクアに任せたんだ。
それで良いと言う答えを貰い、僕たちは前方に見える5mくらいのゴブリンと対峙した。


「グルルゥ~」
「じゃあ頼みましたわよ」
「ああ、オレたちの力見せてやるよ」


サズラとファシミアが闘気を溜め始め、僕は突撃してゴブリンキングの股を通り過ぎました。
反対方向を向いたゴブリンキングに、僕は爪に付いた血を見せ太ももや腕を切り裂いた事を知らせたんだ。


「どうかな、いつ切り付けたか分かった?」
「グギャギャ」


ちょっとしか切れてないせいか、ゴブリンキングも怒りを上げるだけで、僕の突撃に反応して手に持ったこん棒を振り下ろして来た。
こん棒は地面にめり込み僕には当たらず、握り手を深く切り裂いてやりました。


「ギャギャァーー」
「痛かった?でも次はもっと痛いよ」


僕が指を差した方角には、闘気を溜め終わったふたりが走って来ていて、振り下ろされる剣をゴブリンキングはまともに食らったよ。
両肩を裂かれたゴブリンキングは、両腕が落ちそのまま倒れたけど、まだ息があって起き上がろうとして来た。
でも、僕たちの担当は終わっているから追撃はしない、逆に距離を取ります。


「「「いけハクア」」」
「うん、言われるまでもない【ファイアージャベリン】」


3本の槍がゴブリンキングに向かって飛び、ゴブリンキングに突き刺さりました。
炎に包まれたゴブリンキングは、雄叫びを上げて仰向けに倒れ、そのまま動かなくなったよ。


「やりましたわね」
「へんっ!余裕だぜ」
「あの王子たち、こんなのに負けたの?」


サズラとファシミアが不思議そうだけど、僕たちはかなり強くなっているので当然です。
サズラたちもフォーミを認めた様で、握手を交わしてくれて僕としては喜ばしかったね。
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