上 下
26 / 42
2章 モフモフ同志の為に

26話 祝勝会

しおりを挟む
「はぁ~早く帰りたい」


僕たちは今、入学式でも使った大広間にいまして、戦いで功績を納めた人たちが壇上に集められ、校長からご褒美をもらっているんだ。
僕たちの代表はフォーミが出てるけど、王子たちも上がっているのは相変わらずと思ったよ。


「んだよグゥガ、つまらなそうだな」
「サズラ、僕はこの勝利をあまり良く思ってない」
「まぁ、ほとんどが負傷したからな」


ゴブリンの戦闘は、フォーミの作戦があったから勝てたけど、そうでなければ300人が全滅でした。
知性はあっても頭の悪いゴブリン相手だから良かった、そうでなかったら作戦も読まれて負けていたんだ。


「相手は帝国だよ、今までずっと負けてる理由が頷けるよ」
「そうだけど、俺たちは勝ったんだぜ」
「そうよグゥガ、こんな時くらい楽しみなさい」
「うん、これ美味しいよ、食べてグゥガ」


ファシミアとハクアが料理を沢山持って来て、ハクアがフォークに刺したお肉を僕に差し出して来てくれました。
あ~んと食べて美味しいと返事をするけど、僕の作る料理と比べるとまだまだで、もう少しそっちも改良したいと学園の厨房に視線を向けたよ。


「グゥガ、あまり嬉しくないの?」
「ハクア、知ってると思うけど、僕が物資を送ってるから、使い方も良く知ってるんだよ」
「じゃあ、もっとおいしくなるの?」


食べてみたいとハクアが潤んだ目をして訴えて来て、僕は仕方なくアイテムボックスに入っている唐揚げをあげました。
パクリと食べて、ハクアはとても嬉しそうにしてくれたけど、それで終わるわけもなく上目遣いの瞳が更に増しました。


「もっと欲しい」
「ズルいわよハクア、アタシも食べたい」
「ダメ、ハクアが全部食べる」


出すとは言ってないのだけど、これはもう出さないとにらみ合いが終わらない状況です。
仕方ないので、大きなお皿にたっぷりな唐揚げを出して、サズラを加えて食べたんだ。


「それで、ワタクシの褒美のお話を誰も聞いてないのですわね」
「「「「すみません」」」」


フォーミが戻って来て、唐揚げの取り合いをしていた僕たちを叱って来て、その場で正座をさせられたんだ。
フォーミが学園から貰ったご褒美は、1年生の指揮を任せてほしいと言うモノで、僕たちがどうしても欲しかった権限です。


「さすがフォーミ、やるね」
「どういうことだ?」
「バカねサズラ、あんなふざけた指示をさせない為よ」
「ああなるほど」


みんなは納得したけどそれだけではなく、主人公の教育をする為です。
王子たちが指示を聞くのは彼女だけで、僕たちがいくら功績をあげてもダメなんです。


「所で、配置はどうなるのかしら?」
「ああ、前線の最後部だそうよ」
「それって、最初から同じだよね?」
「ええ、つまり各学年の最後部と言う事ですわ」


そういう事かと僕は納得して、指示出しもしやすくてホッとしました。
サズラたちは戦いたいようだけど、活躍の場は恐らく嫌でもあります。


「それでね、ちょっとみんなにお話があるんだ」


あのお話をする為に3人に声を掛けたんだけど、それを邪魔したのはあの王子たちだったよ。
声を掛けて来て、どうやってズルをしてゴブリンキングを倒したのか聞いて来たよ。


「っんだよ、自分たちが負けたからってよ」
「そうね、ズルなんて出来る状態じゃなかったのに、言いがかりにしても失礼ね」
「王子でなかったら、はっ倒してる」


みんなは、相手が王子なのにかなりの言い様で、普通なら不敬罪です。
でも、学園では身分は関係ないという建前があるので、サズラたちは問題ないけど、重要なお話を遮られた僕はとってもイライラしてます。


「平民のお前たちが倒せるはずないんだ、何処かの冒険者でも隠れてたんだろう」
「あらあら、でしたらこの場で戦って見ますか?グゥガ相手してあげなさいよ」
「リーダーのフォーミが言うなら良いけど、この人たちゴブリンキングに負けたんだよね」


それじゃ相手にならないと、ハンデをフォーミに提案します。
でも、王子が要らないとか言って来て、他の王子が剣を投げて来たよ。


「み、みんな、止めようよ」
「ミルティー止めるな、これは公国の王子である俺の意地だ」
「ガドル・・・分かったわ、頑張って」
「ミルティーが応援してくれるなら、俺は絶対に負けない」


その意思だけで勝てるのなら、ゴブリンキングにも負けなかっただろうし、王子たちの実力は僕たちのクラスの誰よりも弱かったよ。
フォーミが焦るわけだと、僕は戦場に行くまでの残り2週間、みっちり訓練してやると気合が入ったね。


「その為にも、この戦いで約束させてやる」
「さぁ剣を取れ、コネを使って学園に入り込んだ獣人」
「またそれですか」


ゴブリンキングを倒したのにまだ理解してない様で、僕は丁度良いからある約束をさせました。
勝てるモノならとか言って剣を構えて来たんだけど、騎士らしい綺麗な構えだったよ。


「その構え、もう少し腰を落とした方が良い、じゃないと一般兵にだって勝てないよ」
「な、なんだと」
「じゃあ、少しだけ手ほどきをしてあげるよ」


両手を床に付け、獣人が得意とする4足歩行での動きを見せたんだ。
王子の目の前に止まってお座りをしたら、剣を振り下ろして来たけど、反応がとても鈍く3手も遅れたから背後に移動したよ。


「そんな攻撃じゃ、顔を洗う時間が出来ちゃうね」
「こ、この」
「おっと」


背後を攻撃する為、剣を無造作に後ろに振って来て、顔を洗いながら頭を倒して躱したよ。
型も何も無い動きに力も籠められず、身体のバランスも悪くなってしまっていて、これだから勝てないと教えました。


「う、うるさい、お前なんかに負けるか」
「そんな人は、尻尾払いで倒してお終いです」
「うおっ!?」


足払いではなく、尻尾で王子の足を絡め取って倒し、首に剣を突き付けてお終いです。
倒れたままで悔しそうにして来る王子に、根性があるなら剣を払って殴り掛かって来てほしかったけど、この人達に対人戦が出来るのかと心配です。


「さて、僕が勝ったわけですが、分かってますよね?」
「ああ、俺も男だ、約束は守る」
「そうですか、じゃあ朝練に参加してくださいね」
「えっ?」


勿論、他の王子にも参加を提案します。
主人公も同じだけど、いやそうな顔をしてくるので、そんな根性で帝国に勝てるのかと挑発して、簡単に乗ってくれるから全員を参加させたんだ。


「やってやるよ」
「ああ、私たちの力を見せてあげましょう」
「み、みんなが頑張るなら、私も」


やる気のある返事を貰ったけど、朝練の内容を知ってるサズラたちは、凄く嫌そうな顔をしてきて、今は止めてと視線で突っ込みました。
どうせなら、1年生全員に参加をしてもらいたいので、フォーミに演説してもらい、王子が行うのにと挑発してもらいました。


「で、ですけど、自分は怪我が治ったばかりなんですが」
「そこのあなた、敵が攻めて来てもそんな事を言って、ベッドから起き上がらないのですの?」
「そ、それはそうですけど」
「怪我はポーションと魔法で治しました、ワタクシたちは負けられないのですわよ」


帝国を倒す為なのを強調させ、カップを掲げて宣言までしたんです。
すごい盛り上がりを見せたんだけど、僕のクラスの生徒はそうでもなく、知らないって良いねとか言っていたよ。


「そんなに厳しくないんだけどなぁ」


学園を走るだけだよっと、僕は笑顔なんだけど、サズラたちはだけじゃないと強く否定してきます。
そんな事は置いといて、僕は先ほど遮られた問題に入り、3人を大広間の外に誘い教えたんだ。


「ほ、ほんとかよそれ」
「うん、だからねサズラ、僕が集落に戻る事を許してほしい、勿論危険な時はしないと誓うよ」
「そ、それほどに帰りたいのか?」


そう、僕には皆をモフるという重要な使命があり、そこを強調させました。
その為なら、どんな事もすると交渉しお願いしたら、若干引かれてしまったけど、僕は本気なのでみんなのお願いを聞く事になりました。
しおりを挟む

処理中です...