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2章 モフモフ同志の為に

31話 進軍しないで倒す方法

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「まったく、頭の固い騎士は何ですのよ」


僕たちは今、集落に戻って来たフォーミの愚痴を聞いていて、僕の毛繕いをしながらフォーミがネチネチと言っています。
それでも、フォーミの動かすブラシはとても気持ちが良くて、僕はそうだねぇ~としか返事が出来てないんだ。


「大体、ポーションがあるのだから、分散された敵兵を叩けば良かったのですわよ」
「砦には2500人がいたんだったよな」
「そうですわサズラ、一ヵ所に2000も投入すれば侵入されずに撃退できましたわよ」


前情報で分かっていた事で、それでも突撃しなかったのは、砦を指揮してる人がフォーミをイラつかせてる部隊長が無能だからです。
そいつは、砦の兵を進軍させるべきと伝えたフォーミの意見を聞かず、今も籠城していたんだ。


「元からそういった奴だったんでしょフォーミ、今更じゃない」
「そうそう、怒っても仕方ない、ササミチーズ揚げ食べよう」
「頂きますけど、これでは先に進めませんのよ」


そう、この戦いは早く進軍しないと勝てません。
それだけの戦力差があり、伸びきった戦線を移動している敵部隊を各個撃破する以外方法は無かったんだ。
2年生と3年生の場所でも、砦を守る作戦に出ていて、3ヵ所に敵が分散しているいましかない、だからフォーミは怒っています。


「でも、それでも作戦は決めたんでしょ?」
「当然ですわよファシミア」


流石フォーミとファシミアが喜びながら唐揚げを食べさせますが、僕はその作戦には反対です。
その理由は敵兵の数にあって、こちらは300しかいないのに対し、向こうは3000と言う事が原因です。


「追いかけらえたらひとたまりもない」
「だけどよ、補給部隊の時は何とかなっただろ?」
「サズラ、あの時とは話が違うよ、今度の相手は武装した部隊なんだ」


相手は、3から4000人を1つの部隊としていて、毎回そんな戦いをする事になるんだ。
だからこそ、フォーミは砦の兵を進ませようとしたんだけど、それは無能指揮のせいで断念しました。


「それならよ、借りるってのはどうだ?」
「借りるって、砦の兵をかいサズラ?」
「ああ、近くを偵察してくるとか言ってさ」
「「「「それだっ!!」」」」


良い案をぽろっと言ったサズラには、骨付き肉を進呈してフォーミは早速作戦に取り掛かった。
勿論それだけではなく、罠も張って丁度良い場所も選んだんだ。


「さぁ行きますわよ」
「おお~」
「張り切り過ぎじゃない?」


2日後の周辺偵察と言う事で、砦の兵を1000人借りて、僕たちは敵の来る道を歩かずちょっと外れた村を目指しました。
そこでは、かなり荒らされた畑を耕す村民がいて、丁度良いからと手伝う事になったんだ。


「な、何で俺たちまで」
「きっとフォーミさんには考えがあるのよ、頑張ってガドル」
「しかしミルティー畑仕事なんて、騎士のする事じゃない」


一部の者たちには不満だったその作業も、訓練としては丁度良く、更には敵が罠に嵌った事を見る事の出来る場所でした。
そして、その瞬間は直ぐに訪れ、僕たちは村民たちに挨拶をして出陣したんだ。


「あの村、もう少し修繕したかったねフォーミ」
「また次もありますわよグゥガ、それよりも砦と挟み撃ちですわ」


そう、村を手伝い罠を発動させただけではなく、フォーミは砦の部隊も巻き込む戦いを起こしたんだ。
相手は、自分たちの味方が全滅しているとも知らず、砦の前で陣を張る部隊と突撃を仕掛ける部隊に別れ、僕たちが後ろから攻撃を仕掛けたからビックリしていたよ。


「これで兵士を全て使うことが出来ます、ざまあみろですわ」
「こ、こんな事って」
「ミルティーさん、良く覚えておくのですわよ、これが作戦と言うモノです」


ミルティーや他のリーダーたちにも分かって貰えて、僕たちは余裕の勝利を収めた。
更にそれから4回の戦いを体験し、全て快勝という成果を収めたんだよ。


「更には、近くの村も復興出来たし、これは素晴らしい成果ですよ」
「ほんとに・・・フォーミさん凄いです」


更に言うと、復興した村に敵兵の看病などをさせて、こちらに寝返らせる事にも成功し、人手不足も解消させた。
これだけの功績を納めれば国が動くのも当然で、僕たちには新たに2000の兵(砦の兵士)が動向する事が許可されたんだ。


「兵2000人、確かに預かりましたわローバトル殿」
「いえいえ、国王陛下のご指示ですから当然ですよ」


笑ってないローバトルだけど、今回の功績でフォーミが準子爵に昇格したので文句も言えないんだ。
元から国王様のご指示だし当然ではあるけど、この兵士たちが砦に戻らないのは言うまでもない事です。


「では、ワタクシたちは進軍いたしますわ」
「ご武運をお祈りしていますフォーミ殿」
「ええ、ありがとうローバトル殿」


ニヤニヤしてるふたりの挨拶が終わり僕たちは進軍したけど、敵軍も事態を重く見たのか、次の砦から進軍して来なくなってしまったんだ。
軍を進軍させ続けているのに、砦を落とした知らせが来ないからおかしいと、さすがに敵側も調べ始めた様で、僕は遅すぎと笑ってしまったね。


「でもグゥガ、2年生と3年生の方は大変なんでしょ?」
「そっちに流れていた兵も、一度撤退して目的の砦に集まってるよファシミア」
「かなりの総力戦?」
「そうだねハクア、相手も次は本気になるよ」


ほとんどの部隊がそこに集結して戦う、誰もがそう思っているけど、それで勝てるなら世話はない。
まともに戦ってはいけないので、密かに砦に侵入して騒ぎを起こす計画です。


「ま、またそんな面倒な事をするのかよ」
「あらサズラ準男爵さま、まさかとは思うけど、まともに戦って爵位が得られるとでもお思いかしら?」
「うっ!それはそうだけどよフォーミ、無理があるだろう」


僕たちフォーミ隊は、僕とファシミアとハクアが男爵の爵位を授かり、サズラは準男爵でフォーミが準子爵になりました。
もし普通に戦っていれば、命を落として二階級特進でしょうけど、まだまだ突き進む予定だからサズラも言い返せませんよ。


「分かれば良いのですわ、学園での訓練はこの為にあったのです、しっかりと使わなくてはなりませんわ」
「そうは言うけどよ、水路を通るとか普通出来ないぜ」


それはもっともな意見なのは僕たち全員の総意で、侵入するのは訓練で40キロを背負って動けた僕たちフォーミ隊だけです。
20キロを背負って動けた僕たちのクラス一同は、壁を登って敵砦のリーダーを倒してもらう予定で、他の人たちは2年生と3年生とともにいる部隊報告に向かってもらうんだ。


「何せ、相手は3万の軍勢で、こちらは1万2000ですから、それ位は必要ですわ」
「分かってるよ・・・それに俺たちはここで止まるわけにはいかない、更に進まないといけないわけだからな」
「その通りですわよサズラ」


この戦いに勝利すれば、こちらの指揮できる軍勢も1万を超える様になるので、少しは良くなるとフォーミが言ってくれます。
その言葉を信じたのは僕以外の3人で、多くなっても元が弱いので全然油断は出来ない状態です。


「切り札はグゥガですから、頼みましたよ」
「そこは任せて、獣化は毛並みだけじゃないってとこを見せてあげるよ」


こうして、僕たちは7日掛けて次の砦【ジェジェー】に到着し、隠密作戦が開始されたんだ。
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