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希望のファーストステップ

17歩目 ギルドの疑惑

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「な、なぁアユム・・・どうしてこんなに騒がれてるんだ?」


僕たちが冒険者ギルドに入ると、ティルバーナが周りの視線に気づき僕に聞いてきました、昨日気絶したティルバーナを運んで来たのでそれが原因だね、僕がそれを説明すると納得の顔をしていました、分かってもらえてよかったと思いながらコンロンさんの受付に直行です。


「どうもコンロンさん」

「アユム様・・・昨日の方とPTを組んだのですか、そうですよねぇ」


コンロンさんがちょっとジト目をして聞いてきました、体調が万全になるまでの仮だと話して手続きをしてもらい、PT名は(仮)にしてもらいましたよ。


「これで受理は出来ました、他には何かございますか?」

「実はですね、どぶ掃除を暇な時にスラッチにやってもらってまして、全ての掃除が終わりましたのでその報告と、討伐したモンスターの納品に来ました」

「ん?・・・はい?」


機械を操作しながらコンロンさんが分かりませんって顔で僕を見ます、スラッチの素早さをコンコンさんが知っているので分かると思ったのですけど、端折り過ぎたともう一度説明しました、確認作業をするので報酬は明日と言う事になり、コンロンさんに挨拶をして査定をしてくれる台が並ぶ場所に移動です、他種族の担当さんは獣人の冒険者がいて空いてません、残っているのは人種の男性が待っている場所なんですが、嫌な予感をヒシヒシと感じます、モヤを纏っていないんですけど行きたくありません。


「ようこそ冒険者ギルドへ、モンスターを出してください」


職員はなんとも素っ気ない棒読みな感じで、目も合わせてくれません、挨拶だけして紙を挟んだ板を見るばかりです、僕は態度が気になりましたがモンスターを出します。


「ワーウルフにトレント・・・はい次を出してください」

「ちょっちょっと待ってください!」


チラッとモンスターを見るなり、板の紙に何かを書いて収納にしまいました、僕は焦って直ぐに止めます、他の職員も収納にしまってから倉庫などに運び、解体の係りの人に渡すそうなのでそこは問題ありません、でもこの人は損傷などの確認をしていませんでした、僕はそこを注意したんです。


「自分はこの道30年のプロですよ、ワーウルフやトレントは滅多に運ばれてきませんが、自分くらいになると慣れたモノなのです、そこら辺の職員と一緒にしないでください」


分かってないな、みたいな顔をしてこちらを見てきます、羽ペンを使って頭を掻きため息を付いたんです、紙を挟んでいる板に羽ペンを当て、苛立っている感じにトントンと音を立て始めました。

僕はこういった口だけの人は許せません、長年その仕事に就いていても、しっかりと仕事をしていなかったら意味がありませんよ、これでは何も知らない新人と同じですもっとタチが悪い、ティルバーナも僕の後ろでイライラしていますね。


「どうしました?早く出してください、それともこれで終わりですか?」


男性がこちらを見て少し笑っていました、ティルバーナがその態度に前に出ようとしたので、僕は直ぐに止めモンスターを出していったんです、もちろんこのままでは済ませない為です。
ワーウルフとトレントを順番に出して行き、普通の人が収納にしまえるギリギリの容量の4匹ずつで査定を待ちます。


「これが査定額です、お確かめください」


男性から紙を受け取り『やっぱり』って思いました、そして更に追加のミス案件を発見です。


「これがほんとにあなたの査定ですか?間違いではなく」

「そうですよ?言っておきますが値上げは聞きません、自分が収納にしまった時点で金額は確定されています」

「言い訳はもう聞きませんけど、良いんですね?」


僕が念を押したのに、男性は余裕で笑いながら了承しました、僕はそれを見て男性に紙を突き付けて見せます。


「僕が出したのは、ワーウルフとトレントと書かれていますが、ワールドウルフとエルダートレントが入っていました、気付かなかったんですか?」

「え?」


ワールドウルフとエルダートレントを倒した時、強さが普通の奴よりも5倍は強いってティルバーナが言ってました、見た目が少し違うだけなのでよく見ないとダメなんです。


「上位種にあたる物が混じっていたのに気づかなかった、この紙にも普通のワーウルフとトレントが4匹ずつと書かれています、これは一体どういうことですか?」

「な!?言いがかりを付けないでいただきたい!あなたが言い間違えたのでしょう」


男性が驚き、僕が言った事にしようとしました、だけど僕は、最初の1匹ずつしかモンスターの名前を言っていません、そんな事も聞いてないのかと問い正すと、証拠の紙を僕の手から奪おうと、手が紙に向かいます、僕はそうはさせるものかと、紙をアイテム欄にしまい消したんです、そして更に言います。


「僕が名称を言ってないことも気付いていないあなたは、ホントに熟練者ですか?それと先ほどの査定の紙、あれに損傷がいくつかあるとチェックがされていました、でも僕の討伐ではそんな大きな損傷は付きません、まさかとは思いますが、差額を着服しようとしてませんよね?」

「そそ、そんな事はありません!傷はありました、自分はしっかりとこの目で確認をしたんです」


そう言って後ろに下がりだします、僕は「確認したと」言質を取ったとばかりに更に追い詰めます。


「では証拠のモンスターを出してくださいドルーネル職員!そうすれば分かります」

「どど、どうして自分の名前を!?・・・そそそれはできません!後になって言い争いが起きない様、規則で再度の確認をするのは禁止されています、倉庫で解体されるまでは出すわけには行きません」

「それはちゃんと冒険者と共に査定をして、確認をしている職員さんだからでしょう、僕はあなたから、ここに傷がありますねの一言を言われてない!確認を僕にさせない為に、あなたはあんなに早く収納にしまったと疑いを持ちます、これは職員と冒険者の信頼関係を失う重大な違反行為です、誰かギルドマスターを呼んでください!」


僕はコンロンさんたちがいる受付に向かって叫びました、コンロンさんたちは急な事でオロオロしています。


「ああ、あなた困ります!ギルドマスターとは予約のある人しか会えません、後日改めてください」

「あくまでも後日にしたいのですねドルーネル職員、でもそうはいきません、ワーウルフやエルダートレントを数日で討伐出来る人がいるとは思えませんが、僕はあなたを1ミリも信じていない、言い間違いやモンスターをすり替える時間なんて与えません、ギルドマスターがダメなら話の分かる人をお願いします、僕はいつまででも待ちますよ」


僕はそう言って腕を組んで立ちます、ティルバーナも同じ感じですよ、そしてその体勢になって直ぐ、手をコネコネさせた職員が走ってきたんです。


「いやいや、申し訳ありません冒険者様、今後このような事がないように、ワタシからきつ~く言っておきます、誠に申し訳ありませんでした」


頭を深く下げその男性は謝ってきました、ドルーネル職員も同じです、僕はこれが嫌いです、謝れば良いという考えなんですよ。


「アサードスさん、謝っていますが状況を分かっていない状態で謝らないで下さい、僕は謝って欲しい訳ではないんですよ」


僕が名前を言った事で相手が顔を上げちょっと警戒しました、僕はそれを見てドルーネル職員とグルかもしれないと思いましたよ。


「それもそうですね・・・では、落ち着いた場所でお話を伺います、どうぞこちらに」


アサードスさんがギルドの奥に案内しようとしたので、僕は更に怪しいと思いその場を動かず言います。


「その必要はありません、状況ならそこにいるドルーネル職員にこの場で聞いてください、そうすれば奥で話をしなくても良い事が分かります」


僕の言葉にアサードスは顔色を少し変えました、そしてドルーネルとヒソヒソと話をし始めたんです。


「なぁアユム、あいつ怪しくないか?」


僕の後ろでティルバーナがここにいる冒険者全員の意見を言ってきたよ、僕は頷きながら思っています、話を聞くにしてもヒソヒソと話す必要はありません、しっかりと聞こえる様に話さないと不信感が生まれます、僕は既に持っていますけど、他の冒険者たちまで怪しいと思い始めてしまいました。


「なるほど、確かにこちらの不手際だ・・・申し訳ありませんでした冒険者様、この者は処罰し最悪解雇いたします、モンスターはお返しして他の者が査定のやり直しをさせて頂いきます」


ふたりが頭を下げてきました、僕はその対応を見てグルなのが確定したと思いました。
いわゆるトカゲのしっぽ切りです、下の者ならいくらでもいると言う事ですよ、今回の場合は他の場所に移動してドルーネルを使うかもしれません。

そうはいかないと、僕は更に追撃です。


「詳細を聞いたら不手際では済まないはずなんですよアサードスさん、どんな詳細を聞いたのか教えてくれますか?」


僕が追及したら、マップにあるアサードスの青点が少しだけ赤点に変わり、直ぐに青点になりました、僕はそれを見て敵意を自分に向けられると変わるのだと初めて知りました、そしてアサードスは黙ったままです。


「言えないんですね、じゃあ僕から言わせてもらいます、これは彼だけでは成立しません、査定をする者それを解体する者、その書類を通す者に売る者、そう言った奴らがいてこそ成り立ちます、これはそれ位大きな事ですよアサードス職員、それに僕の名前も調べないほど急いで駆けつけたあなたは誰よりも信じられない、ここのギルドマスターが忙しいのなら、素材を買い取っている商業ギルドに行っても良い、そうすれば国が動くかもしれませんね」


何処までの組織になっているのか分かりません、でもアサードスの顔を見て国が介入してきたらまずいのが分かったんだ、かなり引ってるんだよ。


「わわ、私は悪くない!」


僕の引かない態度に、ドルーネルは逃げようとしました、でも他の冒険者が立ち塞がり捕まえたんです。


「さぁどうしますアサードス職員」


アサードス職員は膝を付きガックリしてます、その後コンロンさんがギルドマスターを連れてきました、国を挙げての調査を始まるそうですよ。
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