自宅で受けるダンジョン委託、究極の引き籠もりテレワーカーは狭間の世界で異世界を牛耳る

まったりー

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2章

35話 先輩の力

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僕は吾郎さんの会社に入社して、何度も驚きグッタリしています。それと言うのも、今までの常識では考えられない、信じられない教育を受けているからなんだ。
まるで小説や映画の世界だよ、普通に聞いたら妄想だと疑う以外なかったでしょう。でも、目の前で教えてくれる千穂は真剣そのものです。


「魔法を使った抗争、それが僕たちの知らない世界各地で起きてったって事なの?流石に信じられないよ千穂」

「ちゃうちゃう、魔法じゃなくて魔術や学。簡単に言うとやな、魔法は道具を使わなくても発動するんや。でもな、魔術は絶対に道具を使わな発動せん、ウチらは後者や、抗争は・・・まぁ起きてるな」


戦いは起きてるんだねっと思いつつ、魔法と魔術がどう違うのか、僕には分からない。映画とかで見る氷や炎が手から出たりしてるのを見てるから、何も違いは無いよ。


「学が悩むのも分かるで、でもこれはかなりの違いなんや。魔術師は道具を取りあげれば普通の人になる、でも魔法使いは違うやろ?その違いや」

「なるほど・・・いやいやそうじゃなくてっ!?ほんとにそんな戦いが起きてるの?」


僕が混乱してるのはそこだよ!!そんな事を知らず、僕たちは平和に暮らしてるんだよ、何処にも戦いの跡なんて見た事ないよ。
千穂はそれを聞き、いくつかの映像を見せてくれました。それは壊れたビルが数分で直って行く物や人の記憶を操作する物だったりしました。だから誰も気付かないと教えてくれたんです。


「そういったもんなら、ウチらでも対処できる。でもな学、それを超えるとなると無理や、自然災害として世間に知らせるくらいしかできひんのや」


竜巻や地震と大きな魔術を誤魔化した災害があるそうです。そしてそれは、大きな戦いがあった事を意味していたんだ。
問題なのがここからで、闇魔術派が先輩を利用してたのが発覚したからなんだ。


「魔道具は、その気になれば誰でも作れる。でもそれは中級魔術までなんよ、それ以上はほんまに複雑で作れへん。でも相手はそれを可能にする方法を見つけたんや」


それは先輩が作った道具でした。
千穂たちは、それを壊す為に戦ってると話し、闇魔術派はそれに対抗する為、独自で作った魔道具を体内に取り込み、無理矢理魔術を発動してるそうです。
でも結局、中級までしか使えない闇魔術派は、もっと強力な魔術を使う為、千穂たちから魔道具を奪い取ろうと、戦いが更に激しさを増してるんだ。


「そして今回、ウチらがずっと守り隠していた事が、そんな奴らに知られてしまったんや・・・いや、既に知られていたと言った方がええな」


先輩はそれを知らず、ずっと魔道具を作らされていました。でも、それを阻止したのが吾郎さんで、今も主導で行っています。
先輩の存在は、上層部しか知らない事だった、先輩の家が次元の狭間に飛んでしまった時、世界でも同じような事が起きてしまっていたんだよ。
調査の結果、裏切り者がいたのが分かり、その後直ぐに動き出したけど、かなりの被害が出てしまったそうです。
顔の様な、あの建物を作っている際、相次いだ設計変更は、吾郎さんが頑張っていたからだったんだ。それでも吾郎さんは後手に回ったと、後悔してたんだよ。


「裏切ってた者は捕まえたんやけど、なかなかきびしいな。世界の変動も、ウチたちが阻止したから、あの程度で済んだんや、ほんとなら世界そのものが変わってたかもしれへん。それだけの事が秘密裏に行われてた、盲点やったで」


先輩の居場所を闇魔術派に知られれば、暗殺か誘拐に動くと考え、千穂たちはそれだけに焦点を置いて守って来たんだ。だから今回の様に利用してくるとは思わず、気付かなかったんだよ。
先輩が最後に作った人の顔の様なビルを知って、初めてそれは発見された。だから急いで阻止に動いたと、千穂は悔しくて机を叩き始めた。


「竣さんの作る物が世間に出回らないのって、そんな理由があったんだね」

「そうや、ウチたちが阻止に動いてたんや。でも、それすら相手側の思惑通りやった、魔道具の抗争はフェイクやった、あの建物を隠す為の物やったんや」


あのビルは、魔道具を持たなくても魔術が使える様にする手段だったと、千穂は凄く悔しそうに言いました。
その最初の段階が各地で起きた変動で、あのまま変動が続いていたら、世界は他の世界と融合していと、千穂は怖くて震えながら答えます。


「中級魔道具を特定の位置に置き、魔術を発動させるのが本来の使い方や、まさかビルに置いただけで増幅させるとは思わへん。あのビルは、集めた莫大な魔力を使う為の大型魔道具やった、さすが竣さんやと感心したわ」


千穂がいつも持ってるお守りを握って祈りだしました。僕はそれが先輩が作った物だと分かり、魔道具なのかと質問したんだ、千穂は静かに頷き昔の事を話してくれたよ。
高校受験の時、当時吾郎さんの友達だった千穂たちは、先輩にお守りを作って貰ったそうです。
その時は、みんな不安や緊張が無くなったのを不思議にも思わず、お守りなんて気持ち程度だと話してたらしいよ。
高校もしっかり合格出来て、その先の生活も幸運に恵まれたと、起きた事を細かく教えてくれた。
嬉しいはずの話しなのに、千穂は苦しみに満ちた顔で話して来る、幸運と言っても喜ぶべき事ではないんだと、僕は真剣に聞きます。


「親の立ち上げた会社が大企業になったりしたんや」

「良かったじゃないか」

「それがなぁ・・・話はそこで終わらへん、そこから始まったと言っても良いんや」


千穂と同じ様にお守りを貰った友達2人、そいつらの野心が芽生えた事で始まった。
怒りの表情を浮かべ、千穂は遥か遠くを見て睨んでいます。その時何があったのか、僕は先を聞きましたよ。


「高2の夏の事や。最初はあいつ!三ツ矢が気づいてウチらを集めた」


魔法を使えるようになったと、その男性生徒の三ツ矢アクトが発見したのが切っ掛けらしい。
その時はみんなで喜び実験や訓練をするようになったそうだよ。もちろん4人以外には秘密にしてね。
そして研究するうち、お守りのおかげで使えると分かり、4人の意見が合わなくなっていったんだ。


「三ツ矢と海老沢は、世間に広めようと言い出し、ウチと吾郎はそれに反対した。公表すれば、お守りを作った竣さんに迷惑が掛かるからや」


その時、全力で止めれば良かったと千穂な泣きそうです。ふたりは高校を辞め、名前を変えて事業に成功します。
お守りは幸運も引き寄せる、だから失敗はしないらしいです、それがやっと分かり、唯一対抗出来る2人、千穂と吾郎さんが動き出した。


「ウチらが動き始めて竣さんが狙われるようになった、それからずっと戦ってるんよ」


僕と付き合い始めたのが、大学で再会した時です。その時には、既にそんな状態だと知り、僕は情け無くて寂しい気持ちになったよ。僕は、愛してる女性が苦しんでたのに気づいてあげられなかった、情けない気持ちでいっぱいです。


「ごめん千穂、僕が気づいていれば」

「謝るのはウチの方や、学が危険になるのを知ってて、ウチはそれでも交際を望んだ、離れたくなかったんや」


千穂はお守りをテーブルに置き、手の平に火の玉を出しました。
僕はそれを見て直ぐに理解したよ、お守りの力を使わずに出しているってね。
きっと戦いの間に使えるようになったんだ、それだけ過酷な戦いを続けてきたんだよ。


「それの何がいけないんだよ、普通の人なら当然じゃないか、僕は千穂が大好きだよ」


千穂を抱きしめて僕は告白しました。
好きとは何度も言ってるけど、これは特別な物です。きっと千穂は自分の事をバケモノと思ってる、映画とかでもよくあるけど、力があっても関係ないよ。


「これからは僕も協力する、ふたりで戦おう」

「うん、ありがとうな学」


千穂とキスを交わして僕は婚約を約束しました。先輩に報告しようと思っていると先輩から連絡が来て、僕はちょっと驚きました。
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