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3章
54話 遠征軍会議
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「これは酷いですねミゴルオ様」
ここがヒューマンの王都アベノニアスかと、オレとミルトは見るに堪えんと憐れんだ。前の自分たちもこんな感じだったと認めたくなかったのだ。
建物は立派だが、住民が瘦せいつ倒れてもおかしくない。これなら攻めても勝てるかもしれない。
オレとミルトは頷き合い、今日はそれを見極めるために来たが、目的が達成出来たぞ。いつもはぶられる会議だが、今回は良い気分だ。
他にもエルフの族長やドワーフたちも出席する。あいつらはこれを見てどうするのかと楽しみだ。
「ドワーフは武器が売れるから喜ぶでしょう」
「そうだなミルト、しかしエルフはオレたちと同じで苦しんでいる。きっと反対するだろうよ」
前回の遠征軍で帰って来た者たちはいなかった。ヒューマンだけが戻って来た時点で参加する気にはなれない。それを言いに今回は来た。
向こうは戦争をチラつかせて来るだろうが、返り討ちに出来る自信がある今のオレにはある。
前とは違う、あいつらの焦る顔が早く見たいとニヤニヤが止まらない。ミルトもニヤ付いているから、すれ違う住民たちが怖がっているぞ。
「ミゴルオ様」
「我慢だぞミルト、オレも自分を抑えるのに手いっぱいだ」
城が見えて来て、オレとミルトは怒りを抑えるのに必死になる。守っている兵士が痩せていないのだ、それも小さな子供までが門番をしていた。
住民を兵士にする為、ワザと締め付けているのが分かり、オレたちは怒りが抑えられない。そこまでして戦いたいのかと殴ってやりたい。
感情を抑え、なんとか会議室に入るとヒューマン以外は揃っていた。全員が黙って怒りを抑えているのが感じ取れたぞ。
これは荒れるぞと椅子に座った、そこにヒューマンたちが入って来たぞ。
「揃っているようですわね」
ヒューマンは待つのが嫌いだ、こちらが揃うまで部屋で待機していたくせに白々しいと、ここにいる全員が思っただろう。
上下関係を意識させたいんだろうが、オレたちは余計気分を悪くした。早速話を始めると勝手に王女が話を進めたが、ヒューマン以外は聞いていない。
最初は聞くに堪えない話しだからでもあるが、それでもいつもより悪く感じる。魔族との戦いは神の意思だとか、被害は少ないと言って来る。
「何が少ないだ」
横に座っていたクマ獣人の代表、クマットル殿が言葉を漏らした。
食料も少なく苦しい時だが皆で団結したい、最後の王女の言葉はそれだった。お前たちはその苦しみを知らないだろうがと、オレはもう我慢の限界だ。
手に力が入り机がミシミシ言い出したぞ。勇者が回復したら再度遠征軍を出発させたいと、徴兵を始める様に王女の横に控える大臣が紙を読んで知らせて来たぞ。
「戦える兵士はもちろんですが、分担して支援を頼みます」
ドワーフには装備、エルフは食料にオレたちには人手だ、命令口調が更にイラつかせる、それを感じたのはオレたち以外も同じだ、エルフの族長の1人、ピピニーデルが不足しているから出せないと反論した。
そこを押して頼んでいる、王女ではなく横にいたヒューマンの貴族が返してきた。更には自分たちも苦しいと、こともあろうに言いやがった。食料が不足しているのは何処も同じと聞き、ピピニーデルたちは殺気を放ち始めたぞ。
「健康そうに見えるお前たちのどこが苦しんでるんだ?街を歩いてみろ、あれがホントに苦しんでる者たちだろう。これでは遠征軍に参加した者たちが報われんぞ」
「戦争で被害が出るのは当たり前だ、こちらに責任を押し付けるな」
「まぁどちらも落ち着きなさい。怒りは魔族にぶつけるモノで、ここにいるのは味方なのですわよ」
ちゃんと助ければ仲間は帰って来た。ピピニーデルはそう言ってテーブルを叩き壊したぞ。
しっかりと治療しなかったんだろうと指摘し、そんな遠征には参加しないと言い放ったんだ。
食料も提供はしないと、その決意は部屋にいる全員に響いた。エルフの不参加が決まり次はオレたち獣人族に意見を聞く番で、まずは12支の族長たちから問いかけられた。そいつは条件付きで参加すると答えを出し食料の提供がその条件だ。
「それは・・・無理ですわね」
「それならば参加しない」
オレがハブられるのはいつもの事だが、今回は王女の残念な表情が見れた、それだけでも参加して良かったぞ。
12支が参加しない時点で、この遠征は無しになるだろうと、次のドワーフに聞かずに終わると思っていたが、王女はオレに視線を向けて来た、いつもは声すら掛けないのにだ。
参加してくださいますよねっと、困った表情を浮かべて聞いて来る。オレに助けを求めるなんて馬鹿だろうと笑いそうだ。
「オレたちも参加しない、当たり前だろう」
「そそ、そうですか」
どうしてと言いたげだが、当たり前の事で、戦いたけれはヒューマンたちだけでいくんだなと言っやったぞ。
仕方ないと、ドワーフに装備を半年後まで揃える様に王女が口にした。既に決まっているのはいつもの事だったが、そのまま会議は終わらない。ドワーフが装備の提供を断ったんだ、ここにいる全員がびっくりだぞ。
「どどど、どうしてですの!?」
「ワシたちの鉱脈も無限ではないのでのう。今必要なのは農具なのだ、そっちの方が利益が高いのだ」
どうやら利益がもっと欲しいようで、遠回しな要求がされた。王女もそれは分かったようだが、それすらも提供できないらしい、そんなに不足しているのなら遠征はするなと思ったぞ。
これはいよいよ攻め時だと、目をぎらつかせてしまったよ。しかしメルトがオレに耳打ちして来て止めたんだが、なんでもピピニーデルが話しがあるそうだ。密談が開かれるらしく、その題材は確実にあれだと思い気持ちを切り替えた。
会議は失敗に終わり終了した。オレたちは場所を移し、王都の食事屋で新たな会議だ。奥の個室に通され、その顔ぶれを見て納得だな。
「ドワーフのドラード、お前もいたのかよ」
「何だのう、ハブられ種族の猫っころもだったのだのう」
何だとっと毛を逆立て睨みつけるが、ピピニーデルが止めたからそれ以上はしない。オレも本気ではないし、早く話を進めたい気持ちが高いからだ。
ピピニーデルの提案は、オレの予想通りのモノだったよ。ヒューマンの国を攻めるそうだ。12支がここにいないのは心配だが、今のヒューマンたちなら怖くないと、ピピニーデルは言ってワインを一気に飲み干した。
「やる気なんだなピピニーデル」
「そうだよミゴルオ、エルフ族は全員参加する、12支は中立らしいがお前は違うだろ?」
さすがピピニーデルだと思ったよ、だからオレは参加する事を約束した。半年後同時に違う場所で仕掛ける。
この話は同盟ではなく、仕掛けるタイミングを一緒にするだけと言う提案だった。
やり方も自由で場所も違う、良い作戦だとオレも酒を飲んだぞ。その時の味は最高だったな。
「それにしても、お前たちは余裕があるんだな」
「ちょっと良い事があったのさ、ドラードもそうらしいぞ」
だからヒューマンに逆らう気になったわけだ。オレたちと同じかは知らないが、それだけ自信があるんだろう。
勝つ確率が上がりオレはニコニコだ、復讐はこれで成功する、あいつらとは違う事を見せてやるぞ。
ピピニーデルたちは、倒したヒューマンを奴隷にすると話しているが、オレはそこには反対した、自分たちがされた嫌な事だったからだ。
「だからやり返すのだろう」
「ピピニーデル、それではあいつらと一緒だ、復讐に関係のない者たちは巻き込むなよ」
「お前に何が分かるっ!!」
ピピニーデルは怒鳴り殺気を放って来た。戦争で帰って来なかった友人を思っているのは分かる、オレだってそうなんだ。しかしそんな思いはオレたちで終わらせるべきだ、悲しい思いは誰だって嫌なんだよ。
忠告はした、同時に仕掛けるだけの間柄だから、それ以上は言わないと席を立った。そして店を出たんだ、願わくば踏みとどまって欲しい。
「ミゴルオ様、良いのですか」
「仕方ないだろうミルト、あれは理屈じゃない、オレたちは間違わないぞ」
あのダンジョンで得た力はその為にある。最初はオレたちもピピニーデルと同じだった。しかしあそこで戦う内にそんな考えに変わった、優しさをダンジョンから感じたんだ。
あいつらは違うんだろう、悲しいと思うがどうする事も出来ない、早く気付いてくれと願うだけだ。
ここがヒューマンの王都アベノニアスかと、オレとミルトは見るに堪えんと憐れんだ。前の自分たちもこんな感じだったと認めたくなかったのだ。
建物は立派だが、住民が瘦せいつ倒れてもおかしくない。これなら攻めても勝てるかもしれない。
オレとミルトは頷き合い、今日はそれを見極めるために来たが、目的が達成出来たぞ。いつもはぶられる会議だが、今回は良い気分だ。
他にもエルフの族長やドワーフたちも出席する。あいつらはこれを見てどうするのかと楽しみだ。
「ドワーフは武器が売れるから喜ぶでしょう」
「そうだなミルト、しかしエルフはオレたちと同じで苦しんでいる。きっと反対するだろうよ」
前回の遠征軍で帰って来た者たちはいなかった。ヒューマンだけが戻って来た時点で参加する気にはなれない。それを言いに今回は来た。
向こうは戦争をチラつかせて来るだろうが、返り討ちに出来る自信がある今のオレにはある。
前とは違う、あいつらの焦る顔が早く見たいとニヤニヤが止まらない。ミルトもニヤ付いているから、すれ違う住民たちが怖がっているぞ。
「ミゴルオ様」
「我慢だぞミルト、オレも自分を抑えるのに手いっぱいだ」
城が見えて来て、オレとミルトは怒りを抑えるのに必死になる。守っている兵士が痩せていないのだ、それも小さな子供までが門番をしていた。
住民を兵士にする為、ワザと締め付けているのが分かり、オレたちは怒りが抑えられない。そこまでして戦いたいのかと殴ってやりたい。
感情を抑え、なんとか会議室に入るとヒューマン以外は揃っていた。全員が黙って怒りを抑えているのが感じ取れたぞ。
これは荒れるぞと椅子に座った、そこにヒューマンたちが入って来たぞ。
「揃っているようですわね」
ヒューマンは待つのが嫌いだ、こちらが揃うまで部屋で待機していたくせに白々しいと、ここにいる全員が思っただろう。
上下関係を意識させたいんだろうが、オレたちは余計気分を悪くした。早速話を始めると勝手に王女が話を進めたが、ヒューマン以外は聞いていない。
最初は聞くに堪えない話しだからでもあるが、それでもいつもより悪く感じる。魔族との戦いは神の意思だとか、被害は少ないと言って来る。
「何が少ないだ」
横に座っていたクマ獣人の代表、クマットル殿が言葉を漏らした。
食料も少なく苦しい時だが皆で団結したい、最後の王女の言葉はそれだった。お前たちはその苦しみを知らないだろうがと、オレはもう我慢の限界だ。
手に力が入り机がミシミシ言い出したぞ。勇者が回復したら再度遠征軍を出発させたいと、徴兵を始める様に王女の横に控える大臣が紙を読んで知らせて来たぞ。
「戦える兵士はもちろんですが、分担して支援を頼みます」
ドワーフには装備、エルフは食料にオレたちには人手だ、命令口調が更にイラつかせる、それを感じたのはオレたち以外も同じだ、エルフの族長の1人、ピピニーデルが不足しているから出せないと反論した。
そこを押して頼んでいる、王女ではなく横にいたヒューマンの貴族が返してきた。更には自分たちも苦しいと、こともあろうに言いやがった。食料が不足しているのは何処も同じと聞き、ピピニーデルたちは殺気を放ち始めたぞ。
「健康そうに見えるお前たちのどこが苦しんでるんだ?街を歩いてみろ、あれがホントに苦しんでる者たちだろう。これでは遠征軍に参加した者たちが報われんぞ」
「戦争で被害が出るのは当たり前だ、こちらに責任を押し付けるな」
「まぁどちらも落ち着きなさい。怒りは魔族にぶつけるモノで、ここにいるのは味方なのですわよ」
ちゃんと助ければ仲間は帰って来た。ピピニーデルはそう言ってテーブルを叩き壊したぞ。
しっかりと治療しなかったんだろうと指摘し、そんな遠征には参加しないと言い放ったんだ。
食料も提供はしないと、その決意は部屋にいる全員に響いた。エルフの不参加が決まり次はオレたち獣人族に意見を聞く番で、まずは12支の族長たちから問いかけられた。そいつは条件付きで参加すると答えを出し食料の提供がその条件だ。
「それは・・・無理ですわね」
「それならば参加しない」
オレがハブられるのはいつもの事だが、今回は王女の残念な表情が見れた、それだけでも参加して良かったぞ。
12支が参加しない時点で、この遠征は無しになるだろうと、次のドワーフに聞かずに終わると思っていたが、王女はオレに視線を向けて来た、いつもは声すら掛けないのにだ。
参加してくださいますよねっと、困った表情を浮かべて聞いて来る。オレに助けを求めるなんて馬鹿だろうと笑いそうだ。
「オレたちも参加しない、当たり前だろう」
「そそ、そうですか」
どうしてと言いたげだが、当たり前の事で、戦いたけれはヒューマンたちだけでいくんだなと言っやったぞ。
仕方ないと、ドワーフに装備を半年後まで揃える様に王女が口にした。既に決まっているのはいつもの事だったが、そのまま会議は終わらない。ドワーフが装備の提供を断ったんだ、ここにいる全員がびっくりだぞ。
「どどど、どうしてですの!?」
「ワシたちの鉱脈も無限ではないのでのう。今必要なのは農具なのだ、そっちの方が利益が高いのだ」
どうやら利益がもっと欲しいようで、遠回しな要求がされた。王女もそれは分かったようだが、それすらも提供できないらしい、そんなに不足しているのなら遠征はするなと思ったぞ。
これはいよいよ攻め時だと、目をぎらつかせてしまったよ。しかしメルトがオレに耳打ちして来て止めたんだが、なんでもピピニーデルが話しがあるそうだ。密談が開かれるらしく、その題材は確実にあれだと思い気持ちを切り替えた。
会議は失敗に終わり終了した。オレたちは場所を移し、王都の食事屋で新たな会議だ。奥の個室に通され、その顔ぶれを見て納得だな。
「ドワーフのドラード、お前もいたのかよ」
「何だのう、ハブられ種族の猫っころもだったのだのう」
何だとっと毛を逆立て睨みつけるが、ピピニーデルが止めたからそれ以上はしない。オレも本気ではないし、早く話を進めたい気持ちが高いからだ。
ピピニーデルの提案は、オレの予想通りのモノだったよ。ヒューマンの国を攻めるそうだ。12支がここにいないのは心配だが、今のヒューマンたちなら怖くないと、ピピニーデルは言ってワインを一気に飲み干した。
「やる気なんだなピピニーデル」
「そうだよミゴルオ、エルフ族は全員参加する、12支は中立らしいがお前は違うだろ?」
さすがピピニーデルだと思ったよ、だからオレは参加する事を約束した。半年後同時に違う場所で仕掛ける。
この話は同盟ではなく、仕掛けるタイミングを一緒にするだけと言う提案だった。
やり方も自由で場所も違う、良い作戦だとオレも酒を飲んだぞ。その時の味は最高だったな。
「それにしても、お前たちは余裕があるんだな」
「ちょっと良い事があったのさ、ドラードもそうらしいぞ」
だからヒューマンに逆らう気になったわけだ。オレたちと同じかは知らないが、それだけ自信があるんだろう。
勝つ確率が上がりオレはニコニコだ、復讐はこれで成功する、あいつらとは違う事を見せてやるぞ。
ピピニーデルたちは、倒したヒューマンを奴隷にすると話しているが、オレはそこには反対した、自分たちがされた嫌な事だったからだ。
「だからやり返すのだろう」
「ピピニーデル、それではあいつらと一緒だ、復讐に関係のない者たちは巻き込むなよ」
「お前に何が分かるっ!!」
ピピニーデルは怒鳴り殺気を放って来た。戦争で帰って来なかった友人を思っているのは分かる、オレだってそうなんだ。しかしそんな思いはオレたちで終わらせるべきだ、悲しい思いは誰だって嫌なんだよ。
忠告はした、同時に仕掛けるだけの間柄だから、それ以上は言わないと席を立った。そして店を出たんだ、願わくば踏みとどまって欲しい。
「ミゴルオ様、良いのですか」
「仕方ないだろうミルト、あれは理屈じゃない、オレたちは間違わないぞ」
あのダンジョンで得た力はその為にある。最初はオレたちもピピニーデルと同じだった。しかしあそこで戦う内にそんな考えに変わった、優しさをダンジョンから感じたんだ。
あいつらは違うんだろう、悲しいと思うがどうする事も出来ない、早く気付いてくれと願うだけだ。
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