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4章

71話 遊園地は夢の国

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あっちの世界に行ける、それはとても嬉しいんだよ。でもね、アタシはとても心配しているの、シュンはミゴルオおじさんに会いに行った時、アタシは横で支えるだけしか出来なかった、無理をしてフラフラになってもやめなかったの。
それは少しずつ良くなったけど、そうでなかったらアタシは止めてた、絶対外出は止めようって提案したよ、だって外に行くよりもシュンの方が大切だもん。


「シュン、ほんとに平気?」

「平気だよミーシャ、この為に頑張ってきたんだ、さぁ入場しよう」


シュンから帽子を貰い、アタシは深くかぶったの。獣人の耳と尻尾は遊び場に入るまで見せちゃいけないんだって、良く分からないけど、遊び場の門を通ってから帽子を取る約束をしたよ。
クルマの移動が終わると、アタシはとても大きな遊び場を窓から見てビックリ。ヒューマンがとても沢山いて、大人も子供もみんな楽しそうに門を通る列に並んでるんだよ。


「これがこちら側なんだね」

「そうだぞミーシャ、普通に接するだけならみんな親切だ。それに遊園地の入り口を入れば種族は関係ないから、スカートの上から見える尻尾も頭の耳も入れば隠さなくていい」


上着を腰に巻いて隠してる尻尾、ムズムズするから早く外したいの。クルマから勢いよく降りてアタシは鼻を抑えたよ、息を吸うと変な匂いがしたからなの。
クルマに乗った時は気にならなかったのに、これじゃ楽しめないと思ったけど、シュンがネックレスを付けてくれると匂いは無くなったんだよ。


「これ、用意してくれてたの?」

「こんな事もあると思ってね、他にも護衛がいるぞ」


シャングラちゃんの手伝いで一緒にこられなかったゴロウさんだけど、そのかわり数名を忍ばせてくれてるんだって、クルマを運転していたのもその一人で、他にもそれっぽい人がこちらを見て手を振ってくれたの。
男女の人達に子供連れ、男性だけの人もいたよ、みんなゴロウさんのカイシャの人で極秘の任務として来てるんだって。


「もし騒ぎになっても、その時は逃げれば良い、遊ぶぞミーシャ」


良いのかな?っとシュンを見ると手を掴んで引っ張ってきます。遊びに来たのだから良いと言ってるけど、ほんとに良いのかな?
心配になって列に並び門を通ると、その気持ちはどこかに飛んで行ったの、凄く綺麗な光景が広がってたからなんだよ。色々な色の花壇に揃った色のお花が咲いてて、何だか虹を見てるみたいでとても綺麗なの。


「シュン、どうしたらあんなに色を揃えられるの?」

「種の種類を合わせてるんだ、品種改良もしてるかもな」


ヒンシュカイリョウ?また疑問が浮かんだけど、継ぎ目のない石の建物が並ぶ街並み、その先には白いお城が建ってて、それがまた凄く綺麗で手前に花壇があったのに気付かなかったの。
こんな街にシュンと住みたい、そんな気持ちになってシュンを見ると、顔色が悪くなっていたんだよ。ちょっと休憩しても良いけど、シュンはきっと無理をしちゃう、護衛の人たちも少し緊張した顔をしてるの。


「さ、さぁミーシャ、何に乗ろうか」

「シュン・・・最初だから並ばないのが良い」


このユウエンチには、沢山の乗り物があるの、凄く早いのやゆっくりな物、お人形が動いてテレビと話をしたりする変わったのもあって、その種類で建物の中と外に別れてるけど、そのどれもが並んでて、シュンは無理そうなの。
そんな中で並んでない乗り物を見つけてシュンの手を引っ張ったの、それはお茶に使うコップを大きくした乗り物で、二人だけで乗れるんだよ。


「床が動くんだねシュン」

「ああ、本当はカップもまわるんだが、それはちょっと勘弁してくれ」


カップの真ん中にあるハンドルを回すとカップも回転するらしいよ、他のカップは凄く早く回ってるのも見れた。楽しそうに回してるけど、目が回らないのかな?って心配だよ。
護衛の人たちも何だかゆっくりとした感じで休憩になったの、アタシもシュンが落ち着いたのが見れてホッとしたの。


「なんだかすまないなミーシャ」

「アタシはシュンと楽しく遊びたいの、辛い顔は見たくないよ」


無理をしないでとお願いしたよ。だってシュンは頑張ってくれたけど、アタシは辛い顔を見たくないの。だからこの後の乗り物もふたりで乗れるモノにしようと提案したんだよ。
シュンは考えてルートを決めてくれて、足でペダルを踏んで道を走る乗り物に湖の船と、凄い速さの乗り物に光る剣を振り回す迷路の遊びで、とても楽しかったよ。


「う~ん・・・味はいまいち」


昼食になったから、レストランって料理屋に入ったんだけど、シュンの作る料理に比べて美味しくなかったの、舌がピリピリしてくるんだよ。
シュンも少し不満みたいで味が濃いらしいよ、店員に伝えるとその後から出て来る料理は薄い味に変わったの、そこからはとても美味しく食べれたんだよ。


「でも、やっぱりシュンの料理が良い」

「そう言って貰えると嬉しいよミーシャ」


帰ったら何が食べたいか聞かれたけど、シュンの料理は何でもおいしいの。凄く悩んで決まったのは、アタシの大好きな肉料理だったの。
薄いお肉をお湯にくぐらせる、シャブシャブって料理を頼んだよ、あれはタレが沢山で美味しいの、考えただけで顔が緩んじゃうよ。


「食事中なのにミーシャらしいね」

「だって、シュンの料理は世界で一番だもん」


出て来る料理を食べてもそう思うんだよ。他のテーブルからは美味しいって声が聞こえるけど、アタシはもっとおいしい料理を知ってる、シュンの料理は他にも沢山入ってて美味しいの。
だからシュンが辛いのは嫌だから、ユウエンチも今回だけにする。やっぱりあそこで暮らすのが一番楽しいの、午後からは乗り物を乗らずにユウエンチを見て回ったの。それが一番シュンの負担にならないのがわかったからなの。


「カンランシャ?」

「そうだよ、最後に夕日を見て帰ろうと思ってね」


とても高い場所まで登って行く乗り物で、それもふたりで乗れるんだけど、ゆっくりと上がって行くとユウエンチと周りの景色がしっかりと見れたの。外の建物はユウエンチと作りが違うから変だと思って聞いてみたんだよ。


「ここはねミーシャ、夢の国ってフィクションの街なんだよ」


作り物の街だとシュンは教えてくれました、ここは遊び場で住む事が出来ないんだって、ちょっと勿体ない気がしてきの。
夕日を眺めて綺麗だと思ったけど、作り物の街と分かったからなのか寂しくなって、早くシュンの家に帰りたくなったの。


「違うよミーシャ、あそこはもう自分だけの家じゃない、ミーシャの家でもある」


ふたりの家に帰ろうってシュンが言い直したの。その言葉が凄く嬉しくてシュンに抱き付いたの、何だかすごく安心したんだよ。
ユウエンチは楽しかったけど、やっぱり家が良いと分かったよ。チホがお腹が大きくなくてここにいれば違ったかもしれないけど、きっと同じ気持ちになったと思う、シュンとふたりが一番だよ。
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