異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

9章試験

196話 本当は9

俺は今、魔族の大陸に渡る為、ファーランド国の海に面したランドルテラという街に来ていた。


サイガ
「なかなか栄えている街だな、その分身元がばれないようにしないとな」


俺はフードを取って堂々と行動していた、こういうのはこそこそしていると余計見つかるものだ。


サイガ
「済まない、魔族の大陸に渡る船の乗船券は何処で買える？」

船員
「ん！ああ、あそこの販売屋で買えますよ」


俺は船員にお礼を言って店に入り、明日の朝9時の便を買った。


サイガ
「よし、これで大陸には行けるな、それまで暇だな、宿屋でも探すか」


俺は街の中を歩きながら、街並みを眺めていた。


？？？
「やっと見つけた」




しばらく俺が歩いていると後ろに気配がしてきた。


サイガ
「・・・付けられているな」


俺は襲いやすいように人が来そうにない道に向かった。


サイガ
「ここいらでいいだろう、おい！出てこい付いてきてるのは分かっている」

？？？
「さすがサイガ様ですね、お久しぶりです」

サイガ
「・・・お前ヘンリックか」


髪の色が変わっていて、少し痩せていたが間違いなくヘンリックだった。


ヘンリック
「お会いできてうれしいです、それにこのタイミングは紛れもなく神のお導きですね」

サイガ
「どういうことだ？」

ヘンリック
「立ち話も何ですから、こちらにどうぞ」


ヘンリックの後に付いて行き、一つの倉庫に入った。


ヘンリック
「汚い所ですがどうぞお座りください」

サイガ
「ああ、それでさっきの話だ」


ヘンリックが話してくれた、どうやら王都が消滅するとき貴族の何人かは密かに逃げていたらしい。


ヘンリック
「そして我々は今日の夜、この街を強襲し、我が国がまだ死んでいないことを宣言します」


強襲か・・・。


ヘンリック
「サイガ様が参加して頂ければ、成功は間違いありません、お会いできたことを幸運に思います」

サイガ
「そうか・・・それで人数はここにいるだけなのか？」


ざっと見る限り300人といったとこだな。


ヘンリック
「ええ、ここを強襲して街の者を奴隷にし戦力を増やしていき、ファーランドの王都を攻めます」


なるほど、こいつも考えているな、それにすでに首輪を付けている奴隷も入っているあたり、何処かの村を襲ったのだろう。

そう言えばテロルは俺に付なかったな、何かわけがあったのだろうか？


ヘンリック
「サイガ様の部屋を用意しました、どうぞこちらに」


俺は夜まで部屋で休み襲撃に備えた。






ヘンリック
「皆の者いよいよだ、この街を攻め落とし拠点にしてファーランドに目に物を見せる時だ」


ヘンリックの演説が始まった、俺は横で聞いている、勇者である俺が横にいれば指揮が高まるからだ。


ヘンリック
「この数ではこの街を攻め落とすのは難しいだろう、しかし勇者サイガ様が来てくれた、これは神が成功を願っているに違いないのだ」


長々と演説は続いている・・・なぜ演説はこうも長いのだろうな、飽きてきたぞ。


ヘンリック
「皆の者行くぞ！！」

兵士一同
「「「「「おおおーーーーー」」」」」


やっと終わったか。


サイガ
「『ドラゴンサンダーレイン』」


俺は下にいた兵士たちに上級広範囲雷魔法を浴びせた。


ヘンリック
「な！？」


俺はすかさずヘンリックの胸を剣で刺した。


ヘンリック
「何故ですか、サイガさ、ま」

サイガ
「悪いな、俺はもう勇者じゃないんだ、それにそんな戦いはつまらん、もっと強いやつの居る所に行きたいんだ、それにはお前たちが邪魔だ」

ヘンリック
「・・・」


もうヘンリックは動かなくなっていた、辺りを見ても焼け焦げた跡が残るだけで誰もいない。


サイガ
「・・・さて、宿屋はもう取れないだろうから、しばらくどこかに隠れているかな」


俺は朝まで身を潜めて休んだ。







船員
「すみません、今日の船は全部欠航になってしまいました」

サイガ
「な！何故だ」

船員
「はい、何でも事件がありまして、その犯人を見つけるために誰も街を出れないんです」

サイガ
「そうだったのか、悪かったな」

船員
「いえいえ、もう少しで調査の兵士がきますから、話を聞くといいですよ」


俺は船員に挨拶をしてその場を去った。


サイガ
「まいったな、せっかくの券が無駄になってしまったな」


俺は乗船券を破り捨てて街の端っこの城壁に来て、ジャンプして飛び越えた。


サイガ
「仕方ない、この街で渡るのはあきらめよう、なに焦ることはないさ、楽しみは後になればなっただけ楽しくなる」


そう言いながら俺は道のない方に走って行った。