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1章 転生

1話 女神を怒らせて転生

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「ここは?」


僕は小森蒼(こもりあお)ゲームがとても得意なゲームっ子で、人と話すのが苦手な中学生です。
今僕がいるのは、周りが真っ白な空間で、5徹して寝ていた部屋ではなく、夢なのか現実なのか分からずビックリしているところです。


「もしかして、これって」
「あなたは死んでしまったのよ、小森蒼」
「ひっ!?」


頭にそんな声が響いて来て、僕はその場にしゃがんでブルブルと震えてしまいます。
人の声が怖いのもあるけど、女性の声は強くきつめで、僕が一番苦手な相手に感じたんだ。


「女神であるワタクシの声を怖いですって、あなた不敬ね」
「ご、ごめんなさい」
「せっかく捕まえた魂だったのに、気分が悪いわね」
「ごめんなさい」


謝っても許さないと声が頭に響き、やっぱり苦手な声だと、ガタガタ震えが増して行きました。
それを見てなのか、それとも感じてなのか分からないけど、女性の声は余計ヒステリックに怒り出し、何やら選んでる感じでした。


「これで良いわ」
「あ、あの・・・僕に何をしたんですか?」
「あら、分かるのね。あなたは次の魂の糧になってもらうだけよ、ここを出ればそれが反映されるから、ワタシを怖いなんて言った罪を償いなさい」


女性のそんな言葉を最後に、白い空間から身体が離れる感覚に襲われました。
吹き飛ばされてる感じで、その間にさっきの女性とは違う、少し優しそうな女性のアナウンスが頭に響いたんです。


『ステータス数値が勇者に譲渡され、全ての値が1になりました』
「1って」
『続きまして、あなたのすべてが勇者に譲渡されました』
「全てってなんだよ、僕は」
『続いて、譲渡されたユニークスキル【穀物作成】が勇者から不要と戻ってきました』


どういうことなのか分からず、僕は言い返そうとしますが、その言葉を聞いた後そのまま意識が無くなり、気付いたらボロボロの家のボロい布団の中で寝ていました。
身体を起こすと、その体は小さくて転生した事が認識できたんだ。


「記憶も頭に入って来る、この子の名前は・・・アオなんだね」


前と同じ名前に、僕はちょっとだけホッとしたんだ。
でも、風が吹き込む家みたいで、僕は寒くて震えてしまった。
布団と言ってもとても薄い布で、これから先ここで暮らすと思うと涙が出て来ます。


「生きてる意味あるのかな」


好きだったゲームもここには無く、苦しいだけの生活が頭に記憶として残っていて、僕は声を上げて泣いてしまいます。
女神がここに転生させたけど、正直恨みました。


「あれは女神じゃない、このまま死んでたまるか」


アイツを見返してやると、僕にしては強気な気持ちが押し寄せて来て、涙を拭いてやる気が出てきたんだ。
そんな決意をした僕だけど、家の扉を叩く音がして、ビクっとして僕は怖がったよ。


「だ、だだだ誰っ!?」
「アオ、入るわよ」


僕の声を聞いて、入って良いと答えてないのに、10歳位の女の子が扉を開けてきました。
その子は、顔が泥だらけで薄着の服がボロボロでしたよ。


「アオ、まだ寝ていたの、早く起きて仕事に行くわよ」
「き、ききき君は誰!?」
「何寝ぼけてるのよアオ、ほらっ行くわよ」


怖がる僕の手を引っ張る彼女は、ミドリと言って隣に住んでる幼馴染でした。
それが分かったのは、転生したこの体の記憶で、ミドリが急いでいる理由も思い出したんだ。


「これからやる事って、畑仕事なんだね」
「まだ寝ぼけてるのアオ、急がないとみんなが待ってるわ」
「み、みみみみんな!?」


僕の人見知りが出て来て怖くなったけど、ミドリはそんな僕を引っ張ってくれた。
畑に着くと、5人の子供たちがしゃがんで仕事を始めていて、雑草取りをしていましたね。


「みんなお待たせ」
「遅いよふたりとも」
「ごめんってばサーミ、イオリもスズカもそんな顔しないで、直ぐに手伝うわ」
「ん」
「早くするです」


僕の手を離してミドリがしゃがんで草を抜き始め、僕もそれをマネして仕事に入りました。
そして、1時間を掛けて雑草を抜き終わると、みんなと同じ様に僕も泥だらけだったね。


「こんなに泥だらけになったの、小さい時以来かな」


幼稚園にいた時、友達と砂遊びをした思い出が頭に浮かびました。
でも、これは遊びではなく仕事で、みんなは汗を服で拭いていたよ。


「袖でもなく、汚れは服をめくって拭くんだね」


皆のおへそが見えたけど、決して子供にムラムラしたわけでなく、可愛いおへそだと笑顔になったんだ。
それを見られたのか、子供の1人がジッと見て来て注意してきたよ。


「アオ、エッチなの」
「み、見てないよ!?」
「何言ってるのよウイサ、男なんだから当然でしょ」


確かにそうかもしれないけど、それで納得されても困ると僕は指摘しました。
でも、僕に同意する子がいなくて、僕は衝撃の事実を思い出したんだ。


「男が生まれにくい世界」
「何言ってるのよアオ、まだ寝ぼけてるの?」
「み、ミドリ・・・男はどれくらい村にいるかな?」
「いる訳ないでしょ?」


ふぇっ!?っと、僕は変な声を上げてしまい、またまた衝撃の事実を思い出します。
僕は、遠くの土地から売られてここにいて、そこは戦争に負けた国だったんだ。


「アオ兄ちゃん、どうしたの?」
「ティティ、アオは今日も変なだけよ」
「そうなの?」
「そうよ、それよりもパンを貰いに行きましょ」


パンと聞いて、みんなが喜んである方角に真っすぐ歩き出し、僕もその後に付いて行きました。
その先には村長の家が存在し、そこで焼かれたパンを配っていたんだ。


「ほんとにみんな女性だよ~」
「ほらアオ、貰って来てあげたわよ」


オドオドしていた僕に、ミドリがパンを1つくれます。
そのパンは、僕たち子供の手に収まる小さなモノで、これで朝食は終わりと分かってショックだったよ。


「足りないよね、これ絶対足りないよ~」
「何贅沢言ってるのアオ、これでも貰えるだけマシよ」
「マジで!?」
「まだ寝ぼけてるの?冬なんて貰えない時があったじゃない」


思い出してみると、確かにそんな時期はあって、ひもじい思いをしていた事が分かりました。
パンを貰ったみんなも、直ぐに食べ終わってしまい、足りないような表情をしていて、このままじゃいけないと強く思ったんです。
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