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2章 のんびり

23話 畑が増えて

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「バイオマスで動くスプリンクラーって、あの箱からエネルギーを供給してるのは分かったけど、水は何処から来てるのよ」


僕の隣で、アスティルさんが不思議そうだけど、そこは僕も分かりません。
スキルで作った品は分からない事も多く、出来るし作れるから良いじゃんっと返事を返します。


「良くないんだけど、まぁ分からないなら仕方ない」
「そうだね、後は育つのを待つだけだよ」
「そうなんだろうが、それがなくてもアオが出せるからな」


出せるけど、作成してからになるし、枠が増えてもまだまだ足りない。
食料だけではない作成品があるわけだし、村の為にはこの方が良いんだ。


「働かざる者食うべからずだよ」
「なんだそれ?」
「働かない人は食べちゃダメって事だねアスティルさん」


それは確かにっと、スプリンクラーの作動不良がないかの確認を始めます。
だけどね、電話ボックスくらいの供給設備とスプリンクラーは、ちゃんと動く事が分かっていて、持続時間の確認をしていたんだ。


「うん、設定はしっかりと動いてるね」
「水のやり過ぎもダメなんだろう?」
「そうなんですよアスティルさん、田んぼの方は水やりは要らないけど、水量とかの調整は必要だし、ムシの駆除とか病気も大変なんだ」


田んぼの水は、離れた場所でずっと動かしてるスプリンクラーで補ってるけど、それも耐久のテストで、雪も溶けてない今の時期だけど、1月はずっと動いてます。
アスティルさんたちが来て試すようになったこれらは、理解してない部分も多く順番を考えないといけないんです。


「枯れてしまったら意味ないですからね」
「大変なんだな」
「そうなんです・・・まぁ僕の出した品は、ムシや病気に強いんですけどね」


水さえ切らさなければ育つからこそ、僕は他の村にも勧める様になっていて、家畜もそろそろと考えています。
でもその前に、水が必要と考えたからこそ、僕は今スプリンクラーを量産したんだ。


「タンボも作りたかったからだけど、やっぱり水は大切ですからね」
「そうだな、戦場では水場を探すのが大変だ」
「食料もですよね」


アスティルさんに聞くまでもなく、村長たちにも聞いた事があり、作成品の中の非常食は溜め込むばかりなんだ。
アスティルさんの話を聞き、戦争の火種になるからと出さなかったけど、僕はそこに手を付けるか考えています。


「勇者に勝つにはそれしかないんだよね」


どれだけの強さか分からないけど、物資がなければ戦えない。
そんな考えはあるけど、今はまだまだ力不足で、チャンスがあれば広めて行く程度に考えています。


「でも、戦いが広がるなら」


きっと使う事になるだろうと、僕は覚悟はしてて、そんなチャンスが来ることがは分かってた。
そして、そんなチャンスが今日訪れてしまったんだよ。


「まずいね、どうしよう」


藁人形【小】を飛ばしている空からの報告を聞き、僕は今更ながら畑を増やし過ぎたと反省しています。
この村は、訪れる人がいなかった事もあり他と違い過ぎてて、見ても分からなかった前と違い、今は見れば誰もが驚く状態だったんだ。


「何を今さら言ってるんだアオ」
「アスティルさん、もしかして分かってました?」
「分かっていたというか、隠さないんだなと思っていたわ」


言ってほしかったと、今になってほんとに反省しています。
でもね、僕にも言い分はあるんだよっと、言い訳を口にしたよ。


「他の村の人も何も言わないし、偉い人なんて税を取りに来る人だけだし、広場に集まるだけなんだもん」
「まぁそうだな、税は集めるだけで、どうやって作ってるかなんて調べないな」
「そうなんだよ・・・でも、今の時期に来るなんて、絶対調べに来たんだよ」


これはまずいかもっと、豪華な馬車が向かってきている方向を見て、時期が悪いと呟いてしまったね。
でも、何時かは来ることだったと、村長に話に行き準備を始めたんだ。


「まさか、会議の帰り道とはな」
「まったくですよ村長」
「それだけアオが凄いのよ」


ミドリは嬉しそうだけど、僕は既にミドリの後ろに隠れています。
村長に全てを任せても良いんだけど、僕の予想通りの人ならば、それは意味をなさないと、呼ばれるなら最初からいようと考えたんです。


「それにしてもアオ、アスティルたちもいた方が良かったんじゃないか?」
「彼女たちは畑の方に応援に行って貰いました、増やしたばかりで調査は欠かしたくないんです」
「そう言う物か」
「はい、なので僕が頑張ります」


ミドリの肩を掴んで後ろに隠れ、出来ればここにいたくないと震えてきます。
でも、領地の修正と支援の話になるのなら、僕はいないといけなくて、とっても嫌だけどここにいるんです。


「しかし、アオの索敵は凄いな」
「今回は遅かった方です、ちょっと他に回しているので」
「ああ、雪の多い地域の支援か」


村長が納得している支援とは、藁人形たちに遠出をさせているモノで、口減らしにあった子供たちを助けに向かわせてるんだ。
人手を今以上に増やすにはそれしかなく、文句を言われない一番の方法でした。


「だからこそ、時期が悪かったんだよね」
「来たぞアオ」


馬車が村の門の外に見えて来て、僕はミドリの後ろにググっと隠れます。
馬に乗った騎士たちも30人はいて、ほんとに大人数で怖かった。


「急な訪問失礼する、ここにアオと言う少年はいるか?」
「アオならここにいますが、なんのご用ですか」
「ここで合っていたか、タバサ様が視察に参られた、光栄に思えよ」
「「「はい」」」


僕たちが跪くと、騎士のひとりが馬車の扉を開け、そこから綺麗な白いドレスを着た女性が降りてきました。
流石貴族様と思ったけど、ちょっと質素にも見えましたね。


「楽にして良いですわよ」
「「「はっ」」」
「ふむふむ、男の子がいるという事は、あなたがそうなのね」


タバサ様は、ミドリの後ろで跪いている僕を見て来て、笑顔をしてきました。
僕は、怖いけど我慢して返事を返しましたよ。


「あら?ジューネさんの言っていた感じじゃないわね、ちゃんとお返事が出来るじゃない」
「ぶ、無礼の無い様にしています、ごご、ごめんなさい」
「謝らないで良いですわ、それよりも立ち上がって案内をしてほしいですわね」
「よ、喜んで」


震える手で、こちらですっと道を勧め、僕たち3人の案内が始まり、タバサ様は驚くことなく村を周り、最後の村長の家で接待が始まったよ。
お茶を飲むタバサ様は、一息ついた時にため息を付いたんだけど、どうやら驚くのを我慢していたみたいです。


「まさかこれほどとは」
「タバサ様?」
「アオ君、分かっていると思うけど、ここはワタクシの領地となったわ、これからそのお話をしますわよ」


真剣なお話に、僕は姿勢を正して聴く体勢を取り、村長とミドリはかなり緊張していたね。
垂直に立ってるけど、ふたりはそれ以上にしようとしてフラフラし始め、ちょっと心配になりながらお話を聞き、僕は上手くいきすぎと感じました。
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