上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー

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2章 1年1学期前半

51話 僕のダンジョン

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「さぁみなさん、お腹も膨れた所でいよいよ最後の大トリで~す」


昼食を済ませ、気持ちを切り替え終わった司会の人が、またまたハードルを上げています。
でも僕には関係なくて、問題の騎士たちに視線が注目されてて、僕としては良い方向の人選で、普通ならここまでするのかって人選なんだよ。


「ダンジョンに入るのは、なななんと!このバトルをたまたま見に来てくれていた、現役の騎士様たちでーす」


司会の人が拍手を送りますが、僕はバルサハル先生たちの本気を見た気がします。
そうなんですよ、一昨年卒業したばかりの現役騎士たち、それが5人も飛び入り参加してくれたんです。


「黒い鎧は、流石にカッコいい」


この国の標準装備である、魔工フルプレートを装備して、いかにもやり過ぎな感じです。
でも観客は大喜びで、拍手と歓声が今日1番です。


「普通の騎士たちの装備なんだけど、あれが標準とか凄いね」


黒騎士と言っていいほどの黒いフルプレートで、どう見ても普通の騎士が装備する鎧を越えています。
それはこの国の力で強いのは当たり前って装備で、この上の士官たちが装備しているのはプラチナメイルなんです。


「部隊長のプラチナも見てみたいね」


僕としては、ダンジョンが見せる事が出来るからホッとしています。


「なんと彼らはレベル20にあがったばかりで、将来を期待されているそうです。さぁどんな戦いを見せてくれるのか、それでは始めてもらいましょう」


騎士たちは拍手の中、僕のダンジョンに入っていきました。
そして、最初はグリーンスライムたちが相手なので、笑いが会場を包みました。
司会の人も笑いながら有望な騎士の相手にはならないと、会場と同じ気持ちで解説をしてくれます。


「まぁ3階もあるからね、何処まで行けるのか僕は心配だよ」


騎士さんたちはまだ剣を使わず、スライムを蹴りで倒して進んでいて、実力のジの字も出していない感じで、期待がどんどんと上がって行きます。


「剣を使い始めても余裕だね」


ラージスライムもリビングスライムも難なく倒し、次の中部屋で出現したラージタワーも、5人で総攻撃をして難なく倒した。
簡単に1階層の最後の部屋である大部屋まで到達し、サイラスたちが悔しそうです。


「サイラスたちは、あそこに到達してないからね」


彼らは、もっとレベルもスキルも上げないといけません。
これは仕方ない事でこれからなんだと、僕の指導にも力を入れたくなりました。


「さぁこの中部屋は!?ああっと!この広さは中部屋ではないぞ、大部屋だぁ!」


司会の人は分からなかったようで、大部屋を強調させ余裕の空気を出していた観客もざわつき始めます。
司会の人の解説では、大部屋はモンスターも強いのが出現するけど、それ以上にドロップ品が宝箱に入って来て、とても品質があがるとハードルを上げます。


「それにね、キングクラスが出やすくなってる」


キングクラスを期待している観客に、さすがにそれは出ないと、司会の人が笑ってます。
でも僕は知っていて嫌な思い出が蘇ってきます。大部屋の中にいたのは、僕のトラウマであるスライムナイトです。


「なっ!?ななななんとこれは、スライム騎士だぁー!!」


司会の人がざわついたままの観客席に解説をするのも忘れて名前を叫んで来た。
それもそのはず、スライム騎士はこの世界で知られるスライム種の最強の存在で、特別な存在なんです。


「しか~し、強さはゴブリンキングの半分くらいと、同じとは考えてはいけませんよ皆さん」


笑いを取り、剣だけは特別にスゴいと解説を始めてくれて、それが出る事を期待させる司会の人でした。


「対峙してる騎士たちも同じだね、あの顔は僕も知ってる」


僕は正直強さは分かりません。前に自分で倒した時はそうでも無かったし、レベル差がそれを可能にしたんだ。
その上のミスリルナイトやプラチナナイトの方が手強かったと感想が出て来て、ドロップした品しか印象にないんですよ。


「あの盾、結局使わなかったんだよなぁ~って!?もしかして、剣がドロップするのを期待してる?」


魔石以外はドロップする物はモンスターが装備している物と決まっています。
大部屋で宝箱が確定しているので、複数入っていなければ期待できると言った空気を感じました。


「なるほど~あの剣は、ここの正式装備だったね」


一番良い品が1つ入っている事に期待して気合いが入っている騎士たちは、我先にと武技を使いスライム騎士を瞬殺しましたよ。
見せ場も技術もあったモノではない、僕はとてもガッカリしています。


「さぁ宝箱が出現したー!中に入っているのは・・・お?・・・おおっ!?プラチナソードだあぁぁーー!!」


司会の人が当たりだと叫び観客も大喜びですが、騎士たちのその後の行動にはガッカリさせられます。


「武技も中級だったし、かなりレベルに頼った戦い方だね」


中級のパワードストライクは、闘気を溜めてこその力技です。
部隊長でないと持っていない装備がドロップしたと、会場も騎士たちも大喜びで盛り上がり、司会の人は性能も値段も高いんですよっと、自分のモノではないのにニヤケていました。


「後は誰があれを貰うかだけど、それは騎士さんたちが決めることだよね」


司会の人もそこに注目している様で、騎士の中で一番の強さの人を予想し始めます。
でも、騎士たちはしばらくプラチナソードを眺めていて、どうやら話し合いで決まらない様でした。


「誰も引かないし動きがないね」


そして、誰も引かない言い合いが始まり司会の人が困っていますね。
サイラスたちは、笑いながら自分たちなら誰に渡すかを話していました。
ふたりの中なら、装備するのはモンドルです、彼は小ぶりな剣を使うのに適している。


「これは・・・ど、どうしましょうね、校長先生どういたしましょうか?」


司会の人が困った末に校長先生に助けを求め、校長先生は教頭としばらく話しを始めます。
その間も騎士たちは話しが決まらず、校長が立ち上がり魔導具を手に持ち話し始めました。


「ごほん!校長のジンバラオンじゃ。すまぬがアレシャス君、先に進むようにダンジョンの騎士たちと連絡を取ってくれんかね」


僕に振るんですかっと、校長に聞きたかったけど通信が出来るのは僕だけなので、渋々騎士たちに連絡を取りました。
画面で見られていた事を思い出したのか、騎士たちが少し赤くなり収納鞄に剣をしまって進んだんです。
司会の人もホッとして解説を再開し、場所は階段を下りた2階層に突入です。


「さぁここからは誰も作っていない2階です、どんなモンスターが出てくるのか期待しましょう」


観客もさっきのスライム騎士を見て期待しているけど、僕は既に期待をしていないんだ。
ここにはラビット種がいるんだけど、ただのラビット種ではなく、2階層目は1階層目と内容が全然違うんだよ。


「この国の一番弱い所だから、いまの騎士たちじゃね」
「おおっと分岐にいたのは、小さなラビットです、なんとも拍子抜けですね」


司会の人も観客も小さいウサギを見てに笑っていますが、画面の騎士たちも同じで余裕を持っています。
でも、僕とサイラスたちだけは笑ってなくて、サイラスたちなんて青くなっているんだ。


「サイラスたちはモンスターを知ってるわけじゃない。あいつが白くないから普通のラビットじゃないと感じ取ったんだ」


あのラビットは、スピットっという特殊個体で、普通のラビットよりも小さく、強さも1000とハードクラスにしては弱い方だけど、その分スピードがあるんです。


「惚けてる暇はないんだけどねぇ、他の騎士たちも急いで構えないと来るよ」


ほら来たっと、僕は画面を見て呟いたけど、それは騎士の1人が吹き飛ばされた事でみんなも知る事になった。
騎士が剣を抜く前、手を添えている時には既に飛ばられてしまったんだ。


「目がきつめの小さなラビットからの突撃、普通ならそんな事ないもんね」


飛ばされた光景を見て会場がシーンとなりましたよ。


「対峙してる騎士までぼ~っとしてるけど、そんな暇はないよ」


僕の声は通信を切っているので聞こえませんが、言わずには言われない情けなさに呟いてしまったよ。
早く構えろっと僕は続けたけど、残った4人が動きの早いスピットに翻弄され、陣形を崩して成す術もなく飛ばされ苦戦しています。


「現役の騎士でこの程度、ちょっと期待はずれだよ」


こんな事態は想定していなかったのか、バルサハル先生たちも慌ててる。
元からこの国は、余裕があり過ぎるのが弱点なんだ、弱くても噛みつくことは出来る事を知らないんだ。


「まぁ落ち着けば勝てるんだよ、強さはコボルトくらいだからね。派手に吹っ飛ばされてるけど、20レベルの騎士さんたちなら、ダメージはそれほどはないし、その内落ち着くよね」


それ位はしてよねっと、僕は誰に言うでもなく解説をしています。
このダンジョンの2階層は、強さ1万のモンスターしか出現しません。


「スライム騎士に勝てれば進めるんだけど、あのスピットの様に一種がずば抜けている相手に弱すぎだよ」


20レベルで、装備を抜きにした強さが2100の騎士さんたちなら、楽勝のはずなんですよ。
連携さえできて動きを封じればなんてことなく倒せる、僕のダンジョンはそんな教育用です。


「サイラス、君たちの為のダンジョン、よく見ておくんだよ」


どうしてかサイラスたちが震えたけど、ダメージをあまり受けない最高の訓練場がそこにある。どんなときでも落ち着き、冷静な判断がとれるように鍛えてあげます。
僕もそれに助けられ、死闘はそうして乗り越える事が出来るんだと、みんなに教えたいんです。


「動きの早いラビットに翻弄されていた騎士様たち、やっと目が慣れてきたのか攻撃を避け始めました。更に~ここで攻撃が当たったー!」


騎士たちの反撃が始まり、司会の人も嬉しそうに解説をする様になって、会場は盛り上がりを取り戻してきます。
さっきまでは負けそうな騎士たちを見て、国の騎士が1年のダンジョンに負けるのかって空気だったけど、それは吹き飛んだよ。


「でも、その歓声も騎士たちが膝を付いて息を整える姿を見て、すぐに止まったね」

騎士たちの疲労はかなり濃い様で、先に進む足取りが重く見え、深刻なのが伝わってきます。
そして、ここは2階層の最初で洗礼はこれからなんですよ。


「こ、今度のラビットは何でしょうか?4匹とも黄色いですね」


司会の人がうんざりしていますが、無理もありません。
フラフラの騎士たちはもう散々な戦いを見せていて、大きな灰色のラビットが道を転がって来ると、走って逃げる事しか出来なかった。


「モンスターには立ち向かわず逃げ、トゲトゲのラビットに遭遇しても、何も考えずに剣を振りその鋭いトゲを手に刺された」


利き手を失い、それでも突き進むのは凄いと司会の人は言いますが、緑や紫色のラビットに遭遇すると、また嫌なモノが映ったんだ。


「何もしてこない普通のラビットに、あの突撃は無いよね」


不用意に蹴りを入れ、いかにも鬱憤を晴らそうとした。
でも、状態異常を受け動けなくなってしまった。
騎士たちはもうヘロヘロで、降参を宣言してほしいと会場では言われてるんだ。


「痺れるよりも誇りが落ちたかもね・・・毒も混乱も同じように受けてたけど、もう少し観察するって事をしないのかな?」


騎士たちは2階層を進んでいるけど、何も学習しないで無様にしか見えない。
サイラスたちには良い勉強になっているのか、ずっと話し合いをしている。


「相手を良く観察する事はとても大切だ、僕も散々な目にあったから分かる」


敵は強いばかりではなく色々な奴がいる。
そして、死ぬ以外にも怖い物はあると会場にいる誰もが思った事でしょう。
それだけ分かれば十分と、サイラスたちの糧として称賛しました。
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