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3章 1年2学期

85話 2学期試験

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「こ、これは!?」


バルサハル先生は、ジャケン君の難易度の数値を見て、これでもかってほどにビックリして、眼鏡を落ちそうにしていました。
眼鏡を掛け直して数値を再度見たけど、同じ数値で今度は目をこすっていましたよ。


「やっぱりやられましたねケリー様」
「しっ聞こえますわよイサベラ」


遠くのケリーさんたちのそんな話し声が聞こえてきましたので、何かあったのが分かります。
見ればわかるのだけど、ジャケン君のダンジョンは、ケリーさんに教えた通路の改善策を使ってきたんですよ。


「どうしたんだ先生?早く数値を言ってくれよ、じゃないと他に行けないぜ?」
「え、ええジャケン君・・・難易度は85です」


数値を聞くと、周りの生徒がかなり騒ぎ始めた。この数値は新記録だそうで、1年生では55が最大だったそうなんだ。
僕の90と言うのを忘れている感じだけど、減点もあるし目立ちたくないので黙って見守ったよ。


「1階層しかありませんが、それでもここまで50を超えるにはそれなりの工夫が必要でした。これは記録更新ですよジャケン君」
「なになに大したことはない、俺の実力は2階層を作ってから発揮されるぜ、なぁケーニット」
「その通りですジャケン様」


隣にいたケーニット君に同意を求め、ふたりは誇らしげだけど、バルサハル先生もそれは同じで、かなり喜んでいました。
だけど、次の採点に移ってその表情は一変した。ケリーさんのダンジョンを見て、先生は眼鏡を落としてしまった。


「先生、そんなに驚かないでくださいまし、1階層だけなのですからこれくらいは当然ですわ」


すごくドヤ顔をしたケリーさんは、眼鏡を拾い先生に手渡して数値を読み上げる催促をします。先生は眼鏡を掛けて90と口に出したんだ。
ジャケン君の時よりもざわめきが大きく起こり、僕は頑張ってるねと遠くで褒めていました。


「ど、どうしたらこのような数値が」
「簡単な事ですわ先生、今まで通路は難易度に加算されませんでしたのよ。そこを加算されるように作っただけですの、おほほほ」


ケリーさんは、僕を見ながら簡素に説明してきます。
バルサハル先生もそれを聞き納得がいったようで、ブツブツと何かを言っていました。


「イサベラさんたちは75ですか、これでもすごいことですね」
「はい、私たちは1つ星を出来るだけ使うようにしたんです。ポイントを出来るだけ多くケリー様に渡すために動いています」


イサベラがそう言うと、他の子たちも頷いて、素晴らしい忠誠心って奴ですねっと、先生は付け足し移動を始めた。
他の子たちはそれほどでもなく、先生も驚かなかったけど、エマルの番になり先生はしりもちを付いてしまったんだ。


「105点・・・そそそ、そんなバカな!?」


腰を抜かせたのか、バルサハル先生は立ち上がらずに後ろに下がって行きます。それをケリーさんたちが見過ごすはずもなく、みんなが集まってきました。


「ど、どうしてこの広さでそこまでの難易度が、いったいどうやれば」
「簡単ですわよ先生、最後の部屋は中ボス部屋なのです。それにより難易度が格段に上がったのですわ」


ダンジョンの難易度は、部屋や通路が主な判断材料だけど、モンスターが強ければそれだけで上がるとエマルは説明し、生徒たちが「おおぉー」っと驚いて声を揃えました。
僕の予定通りだけど、ケリーさんとジャケン君は僕を見て来て、納得いってません。


「そんなはずねぇ!」「そんなはずありませんわ!」


二人の声が重なり、僕の時の様になると思ったんだけど、そうならない様しっかりとエマルには言ってあります。


「さすがですわおふたり様。細かな事は極秘ですが、最後の中ボスが関係しているのは確かですわよ」


それ以上は言えませんわと話を両断し、ジャケン君たちは僕をチラッと見て来る。僕はニッコリとするだけで何もいいません。
それを見て、ジャケン君は公表会が楽しみだと下がって行きましたね。


「さぁ最後はアレシャス君ですね」


僕がエマルにナイスって親指を立てていると、バルサハル先生が僕を標的にしました。
僕はエマルたちに負けたので、相当下がってると思っているんでしょうけど、サイラスたちがまだ僕のダンジョンに入ってる時点で分かってほしいよ。


「難易度90ですか、相変わらず数値は高いですね、ふむふむ・・・え!?下がってない?」


先生は、ポイントが取られていなくても、ダンジョンの方向性は変えなければいけなかったはずだと不思議そうです。
それが上下関係と言うモノだけど、僕は変えずに6階までを作っていて、バルサハル先生はそれに驚いてるんです。


「ど、どうして」
「なにをそんなに驚いているんですか先生?畑のダンジョンを作るだけが下の者のダンジョンではないですよ。エマル様は、PTを沢山入れられる僕のダンジョンをそのまま使ってくれたんです、その方がポイントが集まると褒めてくれました」
「そ、そんなバカな!?」


僕は補足のように説明を始めます。弱いモンスターばかりなので、ポイントにならないと僕のダンジョンは思われていますが、ラーツたちの様に集団で戦えば、それは蓄積される。
奥に進めば進むほどそれは加算され、途中で手に入る装備でお金にもなる。


「良いことだらけの僕のダンジョンをエマル様は分かってくれたんです」
「わ、私が言いたいのはそんなことではありません!6階層もの深いダンジョンを作ってなお、この数値を出すなんて信じられないと言っているんです。一体どうやって作れば数値を下げないで作れると言うのですか」


先生はそっちに気を取られていたようで、僕を真剣な目で見てきます。今までは平民と思って拒絶していたのに、随分変わったねと思ったけど、その答えはさっきエマルが言った事なんですよ。


「先生、僕のダンジョンは数値が下がっていますよ、良く見てください」


ダンジョンの画面を切り替え、階層毎の全体図で表示しました。
みんなも見てきていますが、これはエマルが秘密と言ったことなんだけど、いずれ知られるのでここで使わせて貰います。


「これは!?エマルさんの作りと似ていますね」
「そうですよ先生。僕のダンジョンは、中ボスがいないこと以外エマル様とほぼ同じです。なので1階だけの数値は90あるかどうか、そして同じように階層を作ってるので、少しずつですけど下がっていき、ギリギリ90なんですよ」


僕の隠し通路は、全体図を表示しても見えないようになっています。
この全体図は、ダンジョン制作者が製作しないといけないので、わざわざ教える事もないと作っていません。


「なるほど、あなたは広く作り数値を上げる事は得意ですものね。エマルさんはそれを参考にして、狭いダンジョンでも数値を上げる方法を編み出した。中ボスの設置はその成果ですか」


先生がエマルの方を見て答えを待つと、エマルは突然の事だったのでビクってしてますが、うなずいて返事をしましたよ。


「すばらしい発見ですよエマルさんっ!これはダンジョンヒューマンの歴史に残ります。早速レポートを作りなさい、通路や部屋の設置等細かくです」


エマルの肩を掴み先生がかなり興奮してきました。僕の方を潤んだ目をしてエマルが見てきたので頷いて了承します。
レポートを作って公表する事になり、先生は嬉しそうに授業を終わらせましたよ。
僕の点数はあのままで通すようだから問題なしで、みんなの平均点が高いので予定通りと笑顔が絶えません。
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