上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー

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3章 1年2学期

86話 学期末試験選抜会議

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「こ、これはほんとの話なのかバルサハル!」


6年の担任をしているホビロイが立ち上がり、驚いているダンジョン科の教師全員を代表して声を荒げて聞いた。
普通科のオレも論文を見ているが、よく分からんと言うのが本音だ。バルサハルが黒板に説明文を書き始めたが、それでも分からん。


「落ち着きなさいホビロイ、黒板を見れば分かります」
「同じじゃないか!!内容がほんとなのかと聞いてるんだ!」
「それがほんとだから集めたのですよホビロイ、少しは落ち着きなさい」


黒板と論文には、通路の使い方が書いてある。直線と曲がり角、それと分岐のティー字路と十字路の使い方だ。


「ちょっとちょっとバルサハル、分岐が難易度と関係していたはずよね?その考えは間違いだったの?」
「そこまでは言ってませんよイクサーノ。その先の通路も反映できるのが分かったのです」


バルサハルが今度は立体図を魔法で出し始めた。そこには曲がり角を使いジグザクにダンジョンが作られている。
バルサハルがそれを使い説明しているが、オレには良く分からない。ダンジョン科は唸って聞いていたよ。


「通路の先を見えない様にする、これこそがダンジョンの難易度が変動する要因だったのです」
「なるほどねぇ~だからこの論文では、分岐以外の道でも難易度が上がってるのねぇ」
「そうですイクサーノ。そして、直線通路を一切使わなかったダンジョンでは、それだけでモンスターの上位種が生まれます」


バルサハルの言葉にダンジョン科がざわついた。
そんなにすごいことなんだろうが、やはりオレたちにはよく分からん。オレたちは必要なのかと言いたいな。


「必ずなのかバルサハル?」
「ええホビロイ、広さも関係しているかもしれませんが、1年生のダンジョンでそれが立証までされていて、必ず出るのです」


そしてここからが重要だと、バルサハルは念押しをして来た。そしてダンジョン科が驚き、オレたちでも知っている事が話されたんだ。
それは、難易度の最高得点を塗り替えたんだ。


「女帝様でも79点なのに、凄いわね」
「し、しかし1年だろそいつら、まだ階層が浅すぎる」
「難易度は、確かに深くすればしただけ下がってしまう。ですが、1階層だけでも50点が最大でした」


その言葉にざわつきが増した。それはオレでも知ってる事で、それ以上はどうしても上がらなかったらしい。


「しかもですよホビロイ、その最高得点以上を取った生徒は3人います。まさに天才です」
「「「「「おおー!?」」」」」


ざわつきが驚きの声に変わり、3人もいたのかと騒ぎ出す。ほんとに天才なのだろうとオレも思うが、その中にサイラスたちが気に入った彼は入っていない。
あれだけ問題児だったサイラスたちを会心させ、更には強くした彼こそ天才だとオレは思っているよ。


「この論文を見て思ったっすけど、こんな単純な事だったっすね。正直自分が情けないっす・・・いや、単純だからこそ1年の生徒が気づいたっすかね?」
「その可能性もありますバートン、でも私が持っているこの論文には、更に驚くべきことが記されています。6ページを見てください」


そう言われたからページをめくり内容を読んだが、さすがのオレもビックリしてバルサハルに視線を動かしたぞ。
何とそこには、中ボス部屋の使い方が記されていたんだ。


「皆も分かったと思いますが、これは大発見です」
「ほ、ほんとにそうだ・・・だが我も実験をしたことがあるが、ほんとにこれで使えるのか?」


ホビロイの質問は、他の教師たちも同じ疑問を持っていた。それだけ研究されて失敗を繰り返している問題で、不可能とされていた事だった。
オレでも知ってるんだ、どんなに頑張っても無理だと思われている事だった。それだけすごいことを見つけた生徒がいたんだな。


「ワタクシも知った時は驚きました。詳細は次のページに書かれていますが、中ボス部屋をただ普通に作っても意味がなかったのです。あれは空間の特別化をする必要があったそうです」
「「「「「特別化?」」」」」


バルサハルの説明に、オレたちまで疑問の声を出してしまったが、ダンジョン科の教師は、詳細を知る為に論文を読み始めたぞ。


「のぅバルサハル先生、よう分からんのじゃが、この直線通路を3つ繋げると言うのは必要なのかのう?」
「それが必要なのです校長。更に言えば、それこそが特別化をする為のモノで、その先の小部屋は中ボス部屋の戦いを意識させるモノなのです」


校長がフムフムっと相槌を打っているが、オレは分からない。
これ以上分からない話をされてもつまらんから、オレは口を挟むことにしたよ。


「要は、あれだけ無理だと言われた、あの中ボスが使えるようになったんだなバルサハル先生」
「そうですよジャンガル先生。ですので普通科の先生方には、更に訓練の強化をお願いします」


やっとオレたちに指示が来た、しかし最近は装備が充実してきた所だから、誰もが訓練の強化を独身に行っていた、だから難しい。
獣人のオレたちの言葉を生徒はあまり聞かない。レベルが上がれば良いと思ってる奴らばかりで、スキルや武技や魔法を強化する様に説得するしかない。


「ダンジョンヒューマンでない方には分からないかもしれませんが、普通通路は分岐に繋げるモノなのです。まして同じ物を何個も繋げる行為は、難易度を下げるとされていました」
「ふむ、それはワシも知っておったが理由は分からなんだ。しかしこの論文に書かれている、道の先が見えてしまうのが原因じゃった訳か」
「そうです校長。そして、中ボスを設置出来るようになった生徒は、何と難易度100を超えているのです」


バルサハルの言葉に、ダンジョン科の教師は静かになってしまう。
最高得点が上書きされた事と何が違うのかと思うが、恐らくすごい事なんだろう。


「これはわたくしの推測ですが、難易度100を超えるには、中ボスの設置が必須だったと考えられます」
「ど、どうしてっすか?」
「実は、100を超えてる生徒とそうでない生徒がいまして、彼女たちは同じ派閥で違いはそれしかなかったのです」


派閥で同じ様なダンジョンを作るのは良くある。なるほどとオレは納得だ。
ダンジョン科の教師たちも納得したが、ホビロイがある事に気づいてバルサハルに聞いたんだ。


「ちょっと待てバルサハル、じゃあなにか?お前のクラスは100を超える生徒は、天才の3人だけじゃないのか?」
「そうですよホビロイ。本来派閥の中でも教える事はないのに、彼女たちはそれを広めてほぼ全員が中ボスを使い、難易度100を超えてるのです」


そんなバカなって顔をダンジョン科の教師が見せて来た。この論文も、3学期の発表会に出す予定らしく、まだ外には出さない様にバルサハルが言って来たぞ。


「まぁ、大発見だものね」
「そうですイクサーノ。ですのでくれぐれも情報を漏らさぬように気を付けてください。発見者のエマル・マルトークさんの功績は絶大で、今日集まってもらったのは、今後ダンジョンが飛躍的に伸びると予測され、その対策を今のうちに考えてほしかったからです」


バルサハルがオレたち普通科の教師に視線を向けて来た。そこでやっとわかったと、オレたちは納得だ。
バルサハルは、今まで見下していた他種族のPTを使いたいんだ。数を増やせばダンジョンが良くなっても対処できる。


「先に何か特別なモノが待っていると思わせるっすね。こんな事気付かなかったっす」
「ワタクシもですよバートン。そしてこれは、もう1つの難問にも言える事だとワタクシは確信しています」


バルサハルの言葉に、ダンジョン科の教師が顔色を変えた。恐らく、その謎を自分が解き明かそうと思っているんだろう。
会議はそこで終わったんだが、ダンジョン科は速足で部屋を出て行ったよ。


「まったく、利益優先な奴らだのう」
「アタシたち普通科は蚊帳の外じゃない」


普通科の教師だけが残り、誰もが文句を口にした。オレも言いたいが、それよりも考えている事がある。
レベルも必要だが、他の力も上げなければならない。その為には、今それを成している者の協力が必要不可欠だ。


「サイラスたちの契約者アレシャスに、話を持ち掛けなければならんかもしれんな」
「ジャンガル?」
「シャレール、お前も知ってるだろう。特技を有効に使う事を考えている生徒だ」


アレシャスの考えは、新たな女帝となったマリア・ロード・ディクスルーデント様に似ている。
女帝は、有能な者なら血筋関係なく認める方で、これからこの国は変わるとオレは思っていた。


「それは知ってるけど、それがどうしたの?」
「実力主義の女帝にオレたちが認められるには、彼の力が必要だという事だ」
「「「「「ああ~」」」」」


全員が納得の声が漏れ、同時に策略を巡らせている表情が見れた。
ダンジョン科の教師が力を振るう時代は終わり、俺たちの時代が来る。


「他種族が蔑まれる事もなく、ダンジョン科と普通科が対等な立場になる時なんだ」
「なるほどのう、それは良い」
「面白くなりそうね」


ほんとに楽しみだと、オレはサイラスたちに話を持ち掛ける準備を始める。
アレシャスと言う生徒はとても変わり者で、どんな事で機嫌を損ねるか分からん。
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