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3章 1年2学期

93話 秘密の共有

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僕はみんなにすべて話すため語り始めます。
ダンジョンを複数持ちモンスターを使役していること、そしてダンジョンに入ってレベルを上げていることをです。


「ボーナスポイントの方は、エマルたちの検証で分かっているから、これからレベルを上げるんだ」
「にわかには信じられんが、確かにそれなら分かる気がするな」


ジャケン君が複雑な心境のようで、レベルが上がってダンジョンに設置出来るモノが増えると聞いても、唸るだけでしたよ。


「2レベルになって通路に種類が増えたので立証できたんだ。とにかく僕は色々出来るのを知ったから、モンスターを使役して探検をしてる」
「そして探索をしている側の気持ちや、モンスターの気持ちも分かったというのか?」
「うんそうだよジャケン君。だからダンジョンの作り方もみんなとは違ったんだね」


だねじゃないっと、ジャケン君が突っ込んで怒ってきます。
前世の記憶がある事は言いませんけど、ダンジョンの作り方は皆と違って変わっていますね。


「設置したモンスターの気持ちですか・・・確かにそんな事考えたことも無かったわ」
「そうですわねイサベラ、それにアレシャスが特別なことも分かりましたわ。ダンジョンヒューマンがダンジョンには入れないのは常識でしたモノね」


確かにそうなんだけど、レベルを上げる方法は他にもあるんだ。
どうして誰も気付かないのかと思って聞いたんだよ。


「ケリーさん、ダンジョンには入らなくてもモンスターとは戦えるよね?レベルを上げた人っていなかったのかな」
「いたかもしれませんが、聞いたことありませんわね」
「そうなんだね・・・もしかして秘匿してたのかな?」


それだけで難易度が上がるので、もしかしたらそうかもしれない。
そんな結論を出したんだけど、マリアルさんがどうすれば入れるのかと詳細を聞いてきました。



「武器を持ち、装備をしっかりと整えて入ろうとすれば入れるよ。要は心構えだね」
「そ、そうなの?何が違うのかな」
「ダンジョンが拒絶するんだ、危険だと判断されていれてもくれない。それと注意しないといけない事だけど、護衛を付ける時は、1PTになる様にする必要も出て来る」


はい?っとみんなの声が揃ったけど、エマルたちは既に超えた道です。
30秒と言う制限時間もみんなは知らず、どれだけ研究が遅れてるのかと思ってしまったね。


「死に戻りは実験のしようがないので試せないけど、そんな感じだよ。そして、それが僕が黙っていたもう一つの理由だね」


僕のその言葉を聞き、すぐに理解したのはジャケン君とケーニット君、それとケリーさんとイサベラさんでした。
マリアルさんとライラさんはハテナマークを浮かべてますね。


「どう言うことですかケリー様?」
「ライラ、もしこれを知られたら必ず試す者が出てきますでしょ・・・でも、もしも戻ってこれなかったらどうしますの?」


ライラがそれを聞き顔色を青くした、マリアルはまだ分かってない感じだね。
ケリーさんはその顔を見て、マリアルの方を諦めてしまった感じで話しを進めた。


「どういうことなの?」
「あのねマリアル。死んでも戻ってこれないか分からないでしょ、でも論文に出すには試すはずなんだ。そしてそれの実験対象者は下の人たち、僕はそんなことさせたくないんだよ」


エマルたちを見て僕はそう言いました。
家臣の人たちは、喜んで名乗りを上げるかもしれないけど、僕はイヤなんだよ。


「確かに、オレたちの担任はやりかねんな」
「ええ、犠牲は付き物と言いそうですわね」


ジャケン君たちも納得してくれたようで、僕はそれを聞いてホッとしました。
この二人に声を掛けた僕の判断は間違ってなかったよ。貴族たちにもこう言った人たちはいるんだ。


「あのぉ~ちょっと良いですかね?」


僕がみんなを見てホッコリしていると、ライラさんが手をあげました。
もう話が終わっていると思っていた僕たちは注目しましたよ。


「アレシャスさんは、死ぬかもしれない戦いをずっとしてきたんですか?」
「そうだね、冒険ってそう言うことでしょ?」


簡素な答えを出した僕をみんながどん引きして見て来たよ。
ちょっと居心地が悪くなってきたので、その後の話は嫌な予感がするんだけど、ライラは止める気はないようです。


「も、もちろん安全は考えてるよ、死にたくはないからね」


そう補足は入れたんだけど、みんなの顔色は変わらず、そしていよいよライラが聞いてきたんだよ。


「アレシャスさんは、今レベルいくつなんですか?大講堂でマリアルの攻撃をまともに受けたのもワザとだったんですよね?」
「あれね、あれは当たったように見せかけたんだ。受け流しスキルを5以上にするとできるようになるよ」


レベルを伏せた僕の答えに、またまたみんながどん引きです。
正直に答えてるのにこんな空気になって、僕はどうしたらいいのか分からなくなりましたよ。


「お、おまえは一体どれだけの死線を越えてきたんだ。普通スキルを5以上にするなんて、熟練した騎士でもいないぞ」
「そうですね、この国一番の騎士エメローネ様が剣術6ですから、ほんとに驚きです」


ジャケン君とケーニット君が補足のように言ってきました。
死線はかなり越えてきましたけど、それほど低いとは思わず、みんなの視線が痛いよ。


「と、兎に角ね、レベルを上げると出来ることが増えるのは公表しません。これは僕たちだけの特権で良いですね!」


僕の必死の答えにみんなが頷き、秘伝の様なモノはあっても良いとか、僕のレベルは結局いくつなんだとか、色々と小さな声が聞こえてきますけど、そこはスルーさせていただきました。


「では、わたくしたちの集まる日取りを決めましょう」
「それは良いですねケリー様・・・騎士たちの様に放課後集まることにいたしましょう」


イサベラさんからそんな提案を貰い、僕たちも反対はせずに賛成しました。
派閥で集まるのではなく、それを越えた派閥同士の集まる集会、なかなか怪しいです。



「これなら、この中から新たなダンジョンの製作方法が見つかっても、きっと誰も不思議に思わないね」
「ではまた放課後だな、楽しみにしているぞアレシャス」
「失礼します」


ジャケン君たちが会議室を出ていき、僕は手を振って見送りました。
でも、ケリーさんたちはまだ何か言いたげで、席を立ち動きませんよ。


「どうしたのケリーさん?」
「あのアレシャス、あの時はすみませんでしたわ」


4人が頭を下げ、大講堂の件を謝ってすれました。
僕は気にしてないと、これからの関係が大切と伝えた。


「これからは、仲良く楽しく行こうね」
「でしたら、わたくしの事はケリーと呼んでください」


もじもじしながらそう言われたので、僕は友達になるのだからと普通に了承しましたよ。
喜んで帰るケリーたちを見送り、僕たちはお茶会のお片付けです。


「さて、みんな帰ったから片づけをして僕たちも解散しようか」


僕が振り向くと、エマルたちがジト目をして見て来ていました。
シャンティまでもがそんな目で、どうしてそんな顔なのか聞いちゃったよ。


「いえ、アレシャス様はそう言う人なのだなと」
「そうですね、これは大変そうです」


よくわからない事をエマルとリリーナが言って、片づけを始めたんだ。
それにシャンティも頷いていて、僕だけが分かっていませんでしたよ。
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