上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー

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3章 1年1学期後半

73話 故郷にプレゼント

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あの丘を越えれば、僕たちの村が見えて来る。2年も離れていたけど、僕たちの故郷はそこにある。
村には畑ばかりで、家もぼろいけどそれは僕たちを安心させた。ほんとに帰って来たんだって泣きそうです。


「何よラーツ、もう泣いてるの?」


泣き虫ねとツィーネが肘を付いて来た、でもそんなツィーネも泣いていてネサートもネザートもなんだ。
そう、僕たちは故郷に帰って来たんだ。今頃、大陸に着いてから別れたザードも同じ気持ちだと思う。


「みんなだってそうでしょ、数日前に別れたポイトたちだって、強がってたけどこの気持ちに勝てるわけないよ」
「ま、まぁそう、ね」


涙を拭いてツィーネは顔を見せなかった。村までもう少し、僕たちは涙を拭いて走ったんだ。
早く父様に会いたいし、知らせたい事もある。


「10キロを20分、この装備すごいね」


全然疲れずに村に到着したけど、ダンジョンでレベルを上げた以上に装備のおかげだと、アレシャス殿から貰った旅用の装備に感謝したよ。
ブラックホーンの皮装備一式、それは旅の疲れを減少させる効果があり、更には素早さ補正まで付いてるんだ。


「買ったら高いんでしょうね、冒険者じゃないから詳しくないけど、プラチナ装備並みよね」
「あのあの、装備よりもこっちじゃないです?」


ネサートが背中のバックパックを見せて来たけど、そっちはもっとすごくて話に入れたくなかったんだ。
アレシャス殿が言うには、この国の村では普通に手に入るとか言って渡されてたモノが入ってるんだけど、そんなにホイホイ渡せるモノではなかったんだよ。


「非常食は分かるけど肥料になる入れ物、おまけに畑の改良法にその種とか、普通渡さないわ」
「でもでも、アレシャスさんですから、きっと装備と同じですよ」


どれだけの資金を持ってるのか、僕たちはそんな疑問をアレシャス殿に持っていたんだ。
学園の生徒にプラチナソードを配ったのは、僕達が手に入れた事を考えても、アレシャス殿にとってはそれほどでもなかったのは分かる。


「じゃあアタシは家に行くわ、後でねみんな」


故郷に向かう道中で知って、帰りたいのと同じくらい気になってる。
村に入ってツィーネたちと別れ、まずは村長に会いに行ったんだ。
応接室もない屋敷だけど、オイラは品物を見せたんだ。


「こ、これをそのお方が?」


村長は品を1つ持ってビックリしてるけど、その食べ物は中身だけじゃないんだ。
外側の袋は土を元気にしてくれる肥料に変わる、そこも教えるとまたビックリしていたよ。
でも、僕の話はそこでは終わらないんだ、次は畑の事を話して種を見せた。何度も驚いている村長だけど、今までで一番驚いていました。


「栄養のある豆の種?」
「そうですよ村長、それを他の植物と一緒に植えれば共に育って行くそうです」


アレシャス殿の言葉をそのまま伝えているので、僕も確証はないんだ。
だけど嘘とは思えなくて、僕はそのまま伝えたんだ、きっと村はそれで良くなると信じているんだよ。


「それなら他の作物に邪魔にはならんな」
「はい、今すぐにでも試してみるべきです」


村長も食料の予備があるうちに試験的に行うと約束してくれた。
アレシャス殿もそんな予想はしていた、その為の非常食で同時に肥料も作れるんだ。


「ふむ、そのお方はもしや噂の聖人様か?」
「何それ?」


村長がそんな噂を聞いてるそうで、なんでもこの国の村を救っているそうです。
もしかして?っと思ったけど、アレシャス殿はずっと王都にいるから、きっと違うと僕は言っておいたんだ。


「アレシャス殿みたいな人が他にもいるんだね」
「そうじゃな、あの国にも救いはあるモノなのだな」


アレシャス殿の様な方がいるのかと、この国も良くなっていく気がして来た。
新しい女帝にもなって変わろうとしていて、僕は何だかワクワクしてきたよ。


「じゃあ村長、僕は家に帰るよ」
「そうすると良い、報告ご苦労だったなラーツ」


帰って来たのも驚かれてたけど、色々すごい物を持って帰って来た方に上書きされた僕達。
それは後に英雄とまで言われる、それだけすごい物を持ち帰って来てたんだ。


「ただいま母さん」
「ラーツ?あんた帰って来れたのかい!」


そんな事も知らず、僕は自宅に帰り母さんと再会できた。父さんと妹二人は畑に出ていて、夕方にならないと帰って来ない。
驚いていた母さんには仕送りを渡して、向こうの事を話したんだ。


「そう、良い人と契約出来たのね」
「うん・・・それまではダメかもって何度も思った。今の僕があるのはアレシャス殿のおかげなんだよ」
「元気でほんとによかったわ。実はねラーツ、仕送りが急に増えたから、何かあったのかと思って心配していたのよ」


手紙には書いたんだけど、母さんはそれでも心配だったみたいで泣いてしまった。父さんたちにも説明が大変かもっと思っていたら、僕の危機感知スキルが反応したんだ。
何事かと外に飛び出した僕は、村の外から殺気を感じた。あれは人が発するモノで、モンスターじゃないのが分かったよ。


「きっと盗賊だ、母さん僕は退治してくる」
「ラーツ危険よ」
「平気だよ母さん、僕たちは凄く強くなったんだ」


僕1人だったら分からない、だけどここにはツィーネたちがいるんだ、盗賊くらい倒せる。
村の入り口に走った僕は、途中でツィーネたちと合流した。みんなも感じた様でぶちのめすとはりきっていました。


「油断は禁物だよツィーネ、モンスターとは違うんだからね」
「分かってるわよラーツ。でも後悔させてやるわ」


入り口を出て、その先の道に盗賊風の女たちがゾロゾロと歩いて来ていました。
数は20人くらいで、僕たちの姿を見て立ち止まり笑って来たよ。


「何がおかしいのよ」
「なぁ~に簡単さ、良いようにおびき出されたあんたらがおかしくてね」
「どういう事よ」
「なに簡単さ、ここにいるだけが全部じゃないって事だよ」


村の方に視線を向けられ、僕たちは焦って視線を向けたんだ。母さんたちがあぶないと思ったんだけど、そこには煙も上がらず叫び声もしなかった。


「何も起きないけど?」
「おかしいわね」


盗賊たちも「あれ?」って顔をしているけど、その原因は僕たちでも分からなかった。
そしてその原因が近づいて来て、僕はゾッとして体の毛が総毛立ったんだ。


「ななな、何か来るわよラーツ」
「ツィーネも感じたんだね。いままで感じなかったしまだ姿が見えないのに、いったい何が村にいるんだよ」


ネサートとネザートは怖くて震えてる、盗賊のたくらみを阻止してるみたいだから敵ではないと思うけど、正直味方だとは限らなくて僕はドキドキです。
その力の持ち主が現れると、僕たちは更に緊張して逃げたくなったよ。その力を感じないのか、盗賊たちは相手が1人なのを見て警戒を解いたんだ。


「何だい、ただのコボルトじゃないかい」
「確かにボクはコボルトでワフが、お仲間を拘束したのはボクだワフよ」


コボルトの言葉に盗賊たちは、信じられないって返していたけど、僕たちは違った。
それだけの力を感じているし、何より村の人たちが騒いでないんだ。


「誰にも気づかれずに盗賊を捕らえたって事?」
「そうだと思うよツィーネ」


盗賊たちに投降を言いつけてるコボルトは、僕達の傍まで来て小声でもう平気と言ってくれた。
それが無かったら、きっと僕たちは怖くて逃げだしていたかもしれないよ。


「み、味方みたいねラーツ」
「そ、そうだねツィーネ」


どうしてなのかは分からないけど、少しは安心できました。
もし敵だったなら、オイラ達が逆立ちしても勝てない力を感じていたんだ。アレシャス殿のダンジョンで死にそうになったことはあるけど、これはそれ以上と感じた。


「フンっ!誰だろうと関係ないね。あたいたちの邪魔をするなら容赦しない、やっちまいな」


盗賊たちは武器を抜き、反抗しようと騒ぎ出したけど、コボルトがそれを見た瞬間姿が消え、盗賊たちが1人ずつ拘束されて行った。
その速度は、早さに自信を持ち始めてた僕とツィーネでも見えなかったんだよ。


「これで良いワフね」
「こ、この化け物!!」
「化け物とはひどいワフね、ボクはちょこっと走っただけワフ」


そんなはずはないっ!!ここにいる全員が口を揃えてしまったよ。
盗賊と同じなのも変だったけど、僕たちとは違い大人しくしてなくて、コボルトにふざけるなって叫んでジタバタしてた。


「あ、あなたは一体」
「ボクは、ある人に言われて村の改築に来たワフ。ちょっと予定と変わったワフが、その作業が終わったら帰るワフね」


作業は直ぐに終わると言って、コボルトは村に入って行きました。僕達も追いかけたけど、途中で拘束されてる盗賊たちがいてほんとだったと驚いた。


「これを誰にも気づかれずにって、凄いわねあのコボルト」
「ほんとにコボルトなのかな?」
「本人が言ってるし、そうなんじゃない?」


不思議に思っている僕たちだけど、もっと驚いたのは畑に変わったテントが、いつの間には幾つも建てられている事だった。
コボルトはそれをビニールハウスと言っていたけど、良く分からないとみんなで声を揃えた。


「要は、中で野菜が育てられるという事ワフ」


それだけ分かれば良いと、コボルトは村から出ていきます。僕たちはお礼を言ったけど、もっと感謝すればよかったと後になって後悔する事になる。
ビニールハウスは、僕達の村を食料難から救ってくれただけでなく、他の村の見本となる様に指導していたんだ。
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