勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー

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2章 成果

26話 飛び級は許しません

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地下40階のダンジョンボス【ミスリルカブト】を倒した俺たちは、冒険者ギルドのマスターに応接室に呼ばれた。
ギルドマスターの提案は、普通なら反対する理由のない異例の飛び級昇格の話しだったが、俺は3つも上がる事に抵抗を感じ反対したんだ。


「どうしてダメなのかな?君たちは十分な実力を持っているだろう」
「ギルドマスターそれは戦いだけの実力です、彼女たちにはまだ早いです」
「1つ星として登録して、まだ1月ほどだから君が不安なのは分かるが、そちらの彼女たちはそろそろ半年だろう」


リーダーの俺が不安だから止めていると勘違いしているギルドマスターだが、足を引っ張ってるのは俺ではなくミニャルたちだった。
ランクを上げるのは、みんながカードを5種使える様になってからと思っているのに、4つ星なんてまず許可出来なかった。


「だからって、一気に4つ星とか上げ過ぎです、せめて3つ星にして下さい」
「しかしなアレシュ君、君たちは既に40階のボスを倒している、それは5つ星の実力だぞ」
「ですから、力は足りていても知識が足りないと言っています、4つ星は護衛任務でリーダーを担う事もあるでしょう」
「ふむ・・・そちらの彼女たちはそれで良いのかな?」


俺が我儘を言っている様に聞こえたのか、ギルドマスターはミニャルたちに標的を変えたが、それはやってはいけない事だったよ。
俺がずっとギルドマスターと話していたのは、みんなが怒っているからであり、喋らせたらもう止められず、間に置いてあったテーブルがミニャルたちの怒りの衝撃を受けて粉々になったよ。


「な、何をする」
「それはこちらのセリフにゃ、アレシュは断ってるのにゃよ」
「そうみゃそうみゃ」
「しかしだな、君たちの実力ならもっと上を目指せるだろう」


それが本当にミニャルたちの為を思っているのなら、俺も反対しないしミニャルたちも怒ってなかった。
しかし、この話しには裏があって、俺が本物の勇者と分かったから言って来ていて、早く実績に似合う地位に付けようとしていたんだ。


「爵位を貰う話が来てるから、その前に冒険者としてもランクを上げ、元勇者を推していたギルドの汚名から世間を遠ざけたいんだろうな」


ボソっと言っている事はミニャルたちには聞こえないし知らない、ミニャルたちが怒っているのは相手が漂わせている不穏な匂いで、それを感知してるから反対していたんだ。
俺に出会うまでにもそんな匂いの奴らはミニャルたちの前に来ていて、実力で排除していたそうなんだ。


「俺がその匂いを漂わせてなかったから、あの時簡単に会議室に付いて来たみたいだが、このギルドマスターは隠す気がない」


自分の地位を守る為に俺たちを使おうとしていて、ミニャルたちにそう言い当てられ何も言えなくなっていたよ。
そら見た事かっと、口を出すなと忠告してミニャルたちはどや顔を決めた。


「フンっ!獣人はこれだから使いにくい、言われた事に素直に従え」
「おあいにく様にゃ、アタシたちが従うのはアレシュだけにゃ」
「そうなのみゃよ、部外者は引っ込んでるみゃ」
「悪いんだがな、これはもう決まった事なんだよ」


この部屋に呼んだのは、説明するだけのつもりだったらしく、これほどに反対するとは思わなかったと勝ち誇って来た。
元から反対する冒険者はいないのが普通で、受付でギルドカードの更新をするように言ってきたよ。


「さっさと行けよ獣人にガキ」
「そうはいかないよギルドマスター」
「ほう、ガキに何が出来るんだ?」
「出来るんだよ、そのガキはここの領主と仲が良いし、第4王女とも親しくしてるんだ」


更に自分でも爵位を得る事になっていて、おまけで勇者としても宣言される。
こいつは勇者と知っているが、前者の方はまだ公表されてないから顔色を変え、王女と言う単語を聞いてさすがに薄ら笑いが消えたよ。


「何なら、俺は他の国に行っても良いんだが」
「い、いえそれには及びません、申し訳ありませんランクアップはナシにいたしますです」
「いやいや、もうギルドが処理したんだろう?それなら他に行って経験を積むよ」
「いえ、カードの受け取り前なので問題ございません、どうかこのままここでお願いします」


深々と頭を下げて来て、国とのいざこざは控えたいのが十分に理解できた。
リテュア様との仲も高める必要があるのだから、ここでちょっとランクを上げても良いのだが、こんな輩が現れるのは困るので、俺はちょっと意地悪をする事にしたよ。


「さて、話は済んだが、獣人を集める時間が無くなってしまったな、せっかくクランを作って大きく動こうと思ったんだがな~」
「そ、そういう事でしたら、このギルダルが集めさせてもらいますです」
「それは助かる、何せ獣人の中にも良からぬ奴らもいるからな、選別をするのも一苦労だったんだ」
「え・・・獣人なら良いのでは?」


そうはいかないっと俺は否定して、どうダメなのかを説明した。
仕方なく悪さをしている者は助ければ良いが、そうでない者は逆に困ると却下したんだ。


「そ、その選定をオレがするのですか?」
「今自分で言ったんじゃないか、よろしく頼むぞギルダル君」
「は、はい~」


こちらでもラットたちが調べてくれているんだが、ギルダルにはクギを刺して置く必要があったから頼んだよ。
俺が行うよりも時間もかかるだろうから、モンスターを使って困ってる獣人を支援する算段も頭の中で検討したが、ギルダルは凄く暗くなっていた。


「そんな顔するなよギルダル君、ギルドの力を使えば簡単だろう?」
「ど、どうしてそれを」
「暗殺ギルドとかに顔が効くのは知ってるぞ、悪い事はするなよな」
「は、はい、すみませんでした」


横のつながりは大切だが、悪い事を考えるからこうなると身をもって教え、これからは俺の下で働けと忠告した。
ラットたちの情報網は半端ではないから、いつでも見ているとニヤリとして見せたんだ。


「すすす、すみませんアレシュ様、もうしません」
「そうだな、頑張ったらランクアップも考えるからな」
「あ、ありがとうございます」


分かってくれた様で何よりだが、ギルドマスターギルダルの顔は真っ青だった。
これで悪さをしないだろうと席を立ち、俺たちは部屋を退出したが、ミニャルたちは俺にくっ付いて来たよ。


「みんな、どうした?」
「アレシュは何処にもいかないにゃよね?」
「心配みゃ~」
「そんな事か、俺は何処にもいかないよ」


圧力がどこかから掛かってもそれは無いし、みんなを守る為に戦うと約束した。
その為に貴族の位も勇者も即答で受け入れたし、これからはその地位を使って獣人を守ると決めていた。


「ギルドにはツテがなかったが、これで向こうから来てくれるだろう」
「そう言う事だったにゃ?」
「ああ、ギルドを束ねる長と言うのは外に出ない事で有名だからな」


森の民と言われるハイエルフの長で、すべてのギルドを管理しているちょっと困った者たちだ。
森から出ないで管理しているため、ギルドはやりたい放題の所もあるから、先ほどの件の様になると教えた。


「そうだったのにゃか」
「まぁランクアップの方は、本当だったら拒否はしないで喜ぶのが普通だからな」
「ランクが上がれば箔が付くにゃからね」
「そういう事だミニャル・・・だが、力を過信して失敗する恐れも出て来る」


ランク4からは、俺の言った事以外にも大変な依頼が来る事があり俺は拒否したんだ。
ランク4からは、貴族からの声掛けもあり、俺から引き離す算段をギルマスはしていたんだ。


「みんなの為になるなら良いが、失敗してほしいからとかありえないよ」


グラフィたちの裏にいた貴族、オジュアル子爵が没落したから、上にいたエバースル伯爵が動いたんだ。
仕掛けてくるのは、策として当然でやり手とは思うが、国の為にその無駄な力を注いでほしいとため息が出てしかたない。


「リテュア様の勢力が上がるのも、そいつは抑えたかったんだろうにゃ~」
「そうだな、勇者が付くんだから気持ちはわからないでもないが、勝てると思っているのがなぁ」


そんな輩を抑える為、今国中に知らせる準備をしていて、数日後に俺は王都に行く事になっていた。
そのタイミングでランクアップを目論んできたわけだが、逆に利用してやった事は今まさに見せたのでミニャルたちは笑っていた。


「アレシュは、向かって来る相手を利用するのにゃね」
「味方には出来ないが、その方がこちらが楽だろう?全部を跳ねのけていたらこちらが倒れるぞ」
「そうにゃねぇ~」


イースズたちと旅をしていて築いて来た基盤も利用でき、俺はこれから世界を平和にする。
その最初の一歩が獣人となったのは、頼もしい仲間が出来て嬉しかったからで、夜はまったく寝てるヒマが無くても問題なかった。
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