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1章

2話 収穫

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「せぇ~のっと」


枝の畑に生えていた大根を引っ張り【スポン】と抜けて、立派な大根を空に掲げ喜びの声を上げました。
ここに来て、何度も野菜は取れてて何度も叫んでるけど、僕はこの喜びを何度でも味わいたい。


「感無量ってやつだね」


こんな生活を夢見て、今それが叶ってるのが嬉しいんだ。
一度掲げた後は、普通に大根を抜いて行き、すべてを採取したら隣の畑移動してまた採取をする。


「ニンジン、取ったぞ~!」


そして大根と同じ様に、1本目は掲げて喜びを堪能して次々に抜いて行きます。
そして、単体で取れる畑から複数取れる場所に移動して、それが成功してるのかドキドキです。


「最初はジャガイモだけど、ツルを引っ張って切れたら、枝の中に残って腐るかもしれないよね」


それは怖いけど、最悪は枝操作で何とかする事になるから、この実験が成功する事を願って問題の畑に移動です。
枝をツルの様に使って移動するのも慣れたモノで、ターザンみたいで楽しいんだよ。


「ここにきて、ほんとに楽しい事ばかりだけど・・・さて、普通に引っ張って良いのかな?」


ツルを持ったんだけど、それよりも枝を操作した方が良いかと、念じて見ます。
枝の中のジャガイモが感じ取れて、ニュルニュルと動かして抜くことが出来たよ。


「考えすぎたね」


大根とかと同じ様に、抜いた穴が塞がり新たな葉っぱが伸びてくれた。
2日から3日で収穫できるから楽しいし、枝の採取の応用も出来るようになったから、僕はそこから更に加速すると嬉しかったよ。


「これなら、動物を増やしても良いかも」


1匹ずつにしていた動物を増やす時、そう思って小屋を増設して10匹ずつにしてみます。
採取できるまでは畑と違い、時間はかなり掛かるけど、葉っぱの牧草地で世話も出来る。


「卵も牛乳も取れる様になれば、加工もしたくなるんだよねぇ~」


そう言う事で、枝でそんな道具が作れないかと念じると、何と畑が同様に変形してくれました。
マヨネーズ製造機や、チーズ発酵機にヒツジ毛加工機などが出来上がり、早速枝から切り離してみます。


「枝で持ち上げれば、小さな僕でも運べる」


軽々と持てるのが凄いんだけど、問題はどこで加工するかで、加工小屋も新たに作る事になったんだ。
森は20キロくらいの広さがあり、敷地としてはまだまだ余裕があって、僕は自分の家も作ってみます。


「木の上の家とか、メルヘンだね~」


木を移動する為の橋も作り、自分では使わないけど立派な集落が出来上がっていき、僕の趣味が全開でもっともっと広げたいと気持ちが高ぶってきます。
そんな何でも出来る枝に、僕は何処まで出来るのかと実験する日を作って見ます。


「自動車とかは無理だけど、自転車は作れるんだね」


動力の問題なのか、どうしてか枝が動かない製作品もあり、どうしてもダメだった。
枝の反応する物を作って行くと、なんとなく理由が分かってきます。


「これって、僕が必要と思ってる物が出来上がってるね」


車は木の移動には使わないけど、自転車はあっても良いと僕は思ってた。
他の道具は勿論農場で必要だし、動力関係なしに動いてくれてるのが証拠だね。


「燃料もゲージもないし、何で動いてるのかな?」


そもそも、僕が分からない事が多すぎるから、出来るからもういいやっと、布織りの道具も作っていきます。
皮と肉の加工道具も用意して、みんなの命を対価にする準備を始めた。


「まぁ、僕が食べなくて良いから使うかは分からないけど、覚悟は必要だよね」


農場経営は、そう言った覚悟も必要で、楽しい事ばかりじゃない。
その時が来るかは分からないけど、僕はその日、ちょっとナイーブになって動物たちと一緒に過ごしたんだ。


「そういえば、ここって森は広がってるのに、動物がいないね」


下にいないのは仕方ないとしても、空や木にもいませんでした。
もしかしたら、この世界に僕だけなのかと思ってしまい、あの島の事を思い返します。


「そうだよ、空に浮かぶ島があっても、そこに人がいるとは限らない」


あの有名な映画でも、人は滅んでてロボットだけの島になっていたし、僕はまだいなくなっても働くそれも見てない。
あの城が綺麗なのは、誰も使っていないからと言う可能性を考えてしまい、僕はまたまたナイーブになってしまったよ。


「人見知りの僕が人恋しくなるなんて、何だか変な気分だよ」


農場で作物とかを作るのも、もしかしたらそんな時の為で、仲良くなりたいのかもしれません。
自分の気持ちがグルグルと周り、僕はその日、ここに来て初めて何もしませんでした。


「空を見るだけの生活・・・それも良いのかな」


この体は、太陽の光を浴びて光合成をすれば、数日は不眠不休で働けます、だからその日はのんびりと過ごしたけど、僕は次の日には農場経営に戻ったんだ。
やっぱり僕はこれが好きだ!そう答えを出して、せっせと作物を採取したんだ。


「例え、それを誰にも渡さないとしても、僕はこれを作り続けるよ」


ここに来た目的も分からないけど、僕は自分のやりたいことをして行くんだ。
木の幹に作物を収納して、いっぱいになったらまた次と、どんどん備蓄を増やして行き、数日後には漬物や干物まで作り始めた。


「味噌もショウユもあと少し、良いねぇ~」


お米も欲しいと、幹なら水を流して水田も作ったんだ。
残念な事に魚は作れなくて、もしかしたら僕がお魚を嫌いだからかもしれません。


「食べなくても良いのも原因だけど、あった方が便利なんだよね」


何度も挑戦して、作れる様になればいいと、僕は更に実験を続け農場を広げて行きます。
何段にも連なった畑に大きな牧草地と、ほんとにここは木の上の楽園です。
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