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1章

17話 船の中

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「ふぇ~降参です~」


アタシたちが船の旅に出て3日が経ち、戦闘訓練で西島君に負けてしまったアタシは、その場に座り込んで立てませんでした。
これでアタシの20戦20敗が決まり、西さんと西郷君にも同じくらい負けました。


「槍の勇者のクセに、槍が使えてねぇな代々木」
「西島君たちとは違うんですよ、アタシは小学生の時に、ほんの少しやっていただけなんです」
「っち、つまんねぇな」


西島君が、舌打ちをして練習場から出たのだけど、アタシに言われても仕方ないの。
皆とはちがって、アタシは平凡な学生なんです。


「料理も出来ないし、アタシが出来る事と言えば、ここの掃除くらいなのよねぇ」


訓練場を掃除して、ガッカリしてしまいます。
西島君が舌打ちしたように、みんなにも迷惑をかけていて、みんなといる時にとても暗くなるんです。


「ミホルさん、ごめんなさい」
「爆弾は、やっぱり核融合かしら?・・・でも、外側から出ないなら普通のでも」


ブツブツと自分の世界にいるマホルさんだったので、アタシが謝っても反応がありませんでした。
皆、アタシがいても居なくても変わらないみたいで、学校を思い出したわ。


「友達もいなかったし、アタシってやっぱりダメなのかな」


誰にも必要とされない存在で、マホルさんだけは違うと思ったんだけど、やっぱりダメかもしれないです。
そんなに落ち込んでいても、お腹は空いてしまうもので、お腹が鳴ったアタシは食堂に向かったの。


「でも、しなびた食材ばかりだから、ほんとにお腹を満たすだけなんだよねぇ」


野菜をきざんで炒める事しか出来ないワタシだけど、台所に入って食料庫を開けてあれ?っと思ったの。
しなびた品ばかりの中に、何と凄くふっくらした品があったのよ。


「ど、どうして・・・まぁ良いか」


お肉も、油の乗ったキラキラしてるがあって、アタシはしなびた品と一緒に炒めて行ったんです。
とても美味しそうに出来て、一口食べてまたビックリです。


「お、美味しい~」


ただの野菜炒めなのに、アタシはとても至福を味わう事が出来ました。
これを皆にも味わってほしくて、食事を済ませた後、マホルさんにお知らせに向かったわ。


「へぇ~そうなの」
「ミホルさん、嘘じゃないんですよ、もっとちゃんと聞いてください」
「聞いてるわ、それに知っていたわよ私」


ミホルさんが何処からの支援物資なのかも教えてくれて、アタシはその国に行ってみたくなりました。
でも、その期待もミホルさんが答えてくれて、2つ目の国がそこだったんです。


「良く知ってますね、流石ミホルさんです」
「知恵の勇者じゃなくても、そんな事は調べれば分かるのよ」


ミホルさんは、自動で動く船の運転席に座って調べたそうで、そこには目的地の順番が書かれていたんです。
最後は、あの隕石なんだけど、そこに行くまでには、20ヵ所の国を経由する事になっていました。


「じゃあ、これからは美味しい食事が出来るんですね」
「そうとも言えないの、他の国は全部ダメなのよ」
「そ、そうなんですね」


そこで、アタシが問題に思ったのは、当然食事の事だったけど、ミホルさんはそうじゃなくて、アタシたちの最終目標の事だったわ。
爆弾に必要な素材は、良質の物資を送ってくれたグングニルと言う国で、そこで揃えないと終わるとさえ言ってきます。


「じゃ、じゃあ急いで」
「だから私は急いでるのよ!!」


ミホルさんが怒鳴るほどで、アタシは分かってなかったと謝りました。


「マホさん怒鳴ってすみません、ちょっと焦っていたわ」
「ミホルさん・・・食事に行きましょう、お腹が空いてるからイライラするんですよ」
「そうね・・・じゃあ一緒に作りましょ」


元気よく返事をしたアタシだったけど、台所に立って作り始めると、ミホルさんがテキパキと作ってくれて、結局アタシは野菜をきざむくらいしか手伝えませんでした。
それでも、一緒に作れて楽しかったから、次の国に着くまで一緒に料理をしたんです。


「飯が上手くなったのは良いけどよ、隕石の方はどうなったんだよ生徒会長」
「丁度良いわ、西島君の言う通り教えるわね」


ミホルさんが何処まで計画が進んでいるのかを話してくれて、それを聞いたみんながガクッと体勢を崩したわ。
ミホルさんは、全然進んでないと言って来たからで、西島君が怒ってしまったわ。


「焦り過ぎよ西島君、旅に出てまだ全然進んでないのよ」
「だからって、このままだとまずいだろ」
「そうね・・・でも、宛てがないわけじゃないの」


そこでグングニルと言う国が名指しされ、そこからは作戦が固まり始めると宣言したの。
そして、詳しい説明が入って、みんなは納得したのよ。


「大きさも分かってないし、まだまだ詰めないといけないけど、素材はそこで手に入れるわ」
「なるほどな、要は内部で破壊できるかどうかに掛かってるわけだ」
「ええそうなのよ西島君、もしかしたらみんなの武技で穴を掘る事にもなると思うけど、基本は私の爆弾で壊す事になるわ」


そこまで考えてくれてて、みんなはさすがと言って来たの。
アタシも尊敬するほどで、知恵の勇者としての力が発揮できていると分かったわ。


「それなのに、どうしてアタシはダメなのかな」


槍を上手く使えてなくて、みんなと違うのは感じていました。
だから、みんなの為に少しでも支えようと、掃除を頑張ったんです。
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