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1章

6話 罠には罠を

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お城に到着して、アタシたちは晩餐会に招待され、とてもきらびやかで楽しそうなんだけど、アタシはイライラが収まらないわね。


「姫様、そう怒らないで、こちらのお茶をどうぞ」
「ありがとマエノ・・・でも、何事も無かったように晩餐会ってどういうことよ」
「それは仕方ない事ですよ姫様」


それは分かっているのよ!っと、アタシは怒りながらお茶の一気に飲みました。
襲撃して来た者が名乗り出て来るわけもなく、それでも声を掛けるくらいはするでしょう。


「アタシを招待したのも、何かあるんでしょうけど、良い空気は感じないわね」
「それはいけませんね、姫様の不安を取り除きましょう」
「え?」


マエノは笑顔のままで歩き出し、その先にはこの晩餐会の主催者であり、ファード国の第1王子がいます。
ある程度、マエノが近づくと兵士たちが王子の前に出て来て守ったわ。


「まぁ当然なのだけど、マエノは何をしようとしてるのかしら?」


まさか変身しないわよねっと、凄く心配になって来て見守ったの。
マエノは、兵士を威圧しない様に手前で跪いて見せたわ、そしてなんと謝罪する様に言いったのよ。


「な、何を言っている?なんの話しだ」
「お分かり頂けないようなので、ここは僕マエノがご説明いたします」


アタシが襲撃された責任と謝罪、マエノはまず最初にそこを伝えたわ。
更にマエノは、襲撃された恐怖が残っていると、アタシの気持ちを言ってくれたの。


「そんなサザンカ姫様に、このような人の多い場に出席しろとは、あなたは鬼ですか?」
「なっ!?」
「無礼者っ!」


兵士たちが剣を抜き、一気に会場が緊張したわ。
だけど、マエノは跪いたままで、無礼なのはそっちだと言い放ったのよ。


「僕は平民ですが、姫様を違うのですよ王子様」
「そ、それなら、出席を断れば良いだろう」
「おやおや、あなたはそんな事も分からないと、これはファード国の先が心配になってきましたね」


ファード国に支援をしてる話をスラスラと喋ると、相手は段々と青い顔をし始めたわ。
そして最後に、この晩餐会を延期しなかった理由を告げて、更にはその相手を睨んだのよ。


「まさか、ライラックが」


その相手は、王子の横にいた騎士で、それが信じられなくて、周りの兵士も王子も目をパチパチさせてるわね。


「誤解です王子、襲撃なんて考えてません」
「おやおや、それならそこに隠れてる人達と、変装してる会場の人は違うのですか?」


とんでもない事をマエノは跪いたままで言って、問題の人たちを指差しすと、そこから黒服の人たちが出て来て事態は変わったわ。
ドレスを着た人たちは、スカートを上げ武器を太ももから取り出し、これからなにが起きてるのか誰が見ても分かる状況よ。


「ライラック、これは一体どういう事だ」
「簡単な話ですよ。これは、我ら魔族が世界を蹂躙する為の宴なんですよ、あなたはそれに使われた、ただのバカ者ってだけです」
「な、何を言ってるんだ、衛兵!」


兵士たちは、マエノに向けていた剣を王子の横にいる騎士に向けます。
だけど、それを向ける前に王子の傍に行かないと守れないわよっと、アタシはツッコんだわね。


「いえいえ、近くにいても変わりません、オレが本気を出せばこの国は消し飛ぶんだからな」
「なっ!?」


王子は驚いてるけど、事態が急変し過ぎて理解できてない感じで、そんな空気が会場を満たしたからか、ライラックが余裕をもって説明を始めたわ。
魔王が世界を征服に動いた、ライラックの長い話のまとめがそれだったわね。


「その為には、あの国は邪魔なのだ、だからこの国を使わせてもらった」
「何を勝手な、オレたちを何だと思っている!」
「何を言ってるんだ王子様、お前たちなんて道具だよ、あの国を亡ぼす為のな」


アタシの国が邪魔なのは分かったけど、どうしてそんな事をするのかが疑問ね。
世界は平和で困る事はなくて、誰もが協力してるわ。


「世界が平和で何が不満なのよ」
「魔族は最強種だぞ、その魔族がトップにいないのが不満なんだよ」


そう言うモノ?っと、ここにいる魔族でない者たちほとんどが思ったわ。
そして、その気持ちになるのが当然とマエノが言ってきて、魔族が問題だと言って来たわ。


「ど、どういう事よマエノ」
「簡単ですよ、姫様と同じ様な人が魔族に溢れ、姫様と違い回復しなかった、それだけです」
「そ、そうなの?」


こんな風に、アタシもなっていたかもしれない、それはとても怖い物で、アタシは震えて来たわ。
自分たちがトップになりたい、ただそれだけの為とか信じたくなかったの。


「恐怖するがいいぞ人間ども、これからは魔族の時代だ、ゴホッ?!」


ライラックは、最後の言葉を口にした時、紫の血を吐き膝を付いてしまったわ。
ライラック本人も訳が分からず、他の魔族たちも次々に膝を付いて倒れたの。


「やっと効いてきましたか、これだから影響の薄まった人は困るんですよ」
「お、お前・・・オレたちに何をしやがった」
「あなた達が罠を張って待ち構えていたように、こちらも準備していたんですよ」


会場の料理にちょっとねっと、マエノは笑顔で言ったのだけど、アタシたちもそれを食べていたから、冗談じゃないって怒ったわよ。


「な、なんてことするのよマエノ!」
「ご安心くださいサザンカ様、影響の薄まってない人には効きません、そう言うモノです」
「く、クソっ!」


ライラックは何とか立ち上がり、何も無かった手の平から剣を召喚し、マエノに向けて来たけど、剣先がフルフルしてるわ。


「よくもオレ様の計画を、何者なんだお前は」
「それよりもライラックさん、魔王の指示でほんとに襲撃をしてきましたか?」
「そ、それは!?」


ライラックは、確実に動揺してしまい、マエノはそこでニヤリとしたわ。
そしていつもの様に、昔話を始めたの。
こんな時にとアタシは思ったけど、ツッコんだら負けな気がして、黙って聞く事にしたわ。
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