くそヒロインを目指しましたがなりきれませんでした。

鏡花

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皇后の器

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ドアを開くとそこにはアリアとヴィンクさん、お義兄さまが立っていた。

「あの、失礼ながら、ミラ様。ルナはそんなことをする子ではなくて、事情が……」

格上の相手に対して意見するなんて罰せられる可能性もあるのに自分のために立ち向かってくれたことに感動した。大事にしてないつもりはないけど、今後いっそう大事にしよう。

「心配しないで大丈夫ですわ。あの場では聞きづらかったので移動しただけで、ルナさんに罰を与えるつもりはありません。それくらい見抜けなくて王妃にはなれませんから」

ミラさんは慈愛に満ちた目でアリアを見つめている。ああ、これが王と共に国を支える女性なのか、と、そもそもなる気はなかったけれど自分にはできないと感じた。

「あ、忘れておりました。ルナさん、よろしければ、卒業後は私の元で働きません?養子とはいえいい家柄出身で、腕も立つ女性が欲しいのです」

「そんなに良くしていただいても良いのですか?」

「青田買いです。あなたはスカウトする価値があると思ったからであって、ただの女性ならそんなことはしません」

「ありがとうございます!期待に応えられるよう頑張ります」

「はい。この学校でしっかり学べることは学び、人脈も作っていってください。もし、2年後つまらない人間に成り下がっていたらこのお話はなかったことにさせていただきますから」

本当にミラさんが話を通してくれていたようで、王子たちは元々の目論見どおり廃嫡されて一般人になったので、学園を去っていったが、私は申し訳程度の謹慎処分で済んだ。

最初はやっぱり風当たりが強かったが、昔の生活に比べたら大したことではなかったし、堂々と自分らしく過ごすうちに徐々に受け入れられるようになった。強いて言えば、私はその辺の男に熱をあげるより可愛い女性と話すほうが好きなため、女性にモテるようになってしまったのが誤算である。

今は卒業すると本当に雇ってくれたミラ様の侍女兼護衛として働いている。彼氏はいない。私より強くてかっこいい男がいないから。

他の人はといえば、ミラ様は無事第一王子と結婚、子どもを2人もうけた。ただし、産んだ翌日にはベッドの上で仕事をしていた。どんだけ強靭なんだと思う。

お義兄さまは文官として宮廷で働いていて、アリアは卒業して数年するとヴィンクさんと結婚して幸せな日常を過ごしているようで、時々会うたびに相変わらずのろけてくるのでちょっとめんどくさいけど可愛い友人を持ったなー、と思う。
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