世界ってなんなんですか?

仲里トメ子

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ナッツトラブル

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「かね…あかね!」
ハッとして目を覚ます。
服がベタついて気持ち悪い。
どうやらうなされていたみたい。
「大丈夫か?何か怖い夢見たのか?」
心配そうに秋輔がこちらを見ている。
「大丈夫よ。ありがと。シャワー浴びて来るわ。」


冷たいシャワーを温くなるまで待っている間、昨日のことを思い出す。
急に熱くなったシャワーと同じように自分の体温も急上昇。
キス…しちゃった!
どうしよう。秋輔に合わせる顔がない。
とりあえずシャワーを頭から被り気持ちを落ち着けて、全て洗い流した。
夜の出来事の衝撃に、昨日の夢のことなんて忘れてしまっていた。

私、秋輔のこと、好きになっていたんだ…。

秋輔はどう思ってるんだろう?

朱音。俺が今いちばん大切に思ってる女の子。

…急激に顔が熱くなる。これって両想いなんじゃないの…?

ますます出づらい…。
「ええええええええ!!!!!!????」
秋輔の悲鳴が聞こえた。
何かあったのかと、とにかくタオル巻いて直ぐに出て秋輔の様子を伺う。
「秋輔どうしたの!?」
「あ、アキさん!?誰ッスかこの女!ってうわああああああ!は、裸!?」
「朱音!?うわあああああ!?服!服!ふ!」
なにこのカオス…。





目の前に鼻血を垂らしながら正座するアイドル2人。
服を着て仁王立ちしている私。
「何があったの?秋輔?」
「そそれは…。ナッツが苗木持って来てくれたんだけど…。」
「この通りッス…。」
枯れてしまった苗木を夏目くんがしょんぼりと抱えている。
「え、嘘。やっぱり一晩でもまずかったのかしら…。」
「そうみたい…。どうしよう。朱音。」
気まずい空気が流れている中、小刻みに震える夏目くんが瞳を濡らし、声を上げた。
「違うんス!オレが悪いんス!」
「ナッツ、どうした。お前は悪くないよ。」
「取りに行った時は花が咲いてたッス!オレが不要枝を剪定しようと触ったら急に枯れてしまったんス!ホントにごめんなさいッス!」
花が咲いてた…?
「そうだったのか…。でも、なんでだろう…。」
「夏目くんが取りに行ったのは何時なの?」
「今朝の九時頃ッス。見たことない花ですごく綺麗で…。ところで、誰ッスか?アキさん。」
申し訳無さそうな表情、花を語る嬉々とした表情、きょとんとした表情。ころころと表情を変える夏目くんは画面で見てた彼よりなんだか可愛い。
答えに困っていると、秋輔が答えてくれる。
「ナッツ、朱音は俺の大事な人だよ。」
「アキさんの恋人ッスか!?し、失礼しましたッス!オレ夏目って言うッス。」
「古賀朱音よ。よろしくね、夏目くん。」
さらりと大事な人って…!夏目くんの手前取り乱せない!平常心!平常心!
「古賀さん顔真っ赤スね。アキさんいいなぁ、こんな可愛い人見つけて。」
「はは、まぁな。とりあえず、ナッツはもうすぐ仕事だろ。行っていいぞ。ごめんな、朝から。」
「はいッス。じゃオレ行ってくるッス!」
体格に見合わない人懐っこい笑顔で部屋を出て行った夏目くんを見送り、秋輔はこちらに向き直る。
「朱音、悪いんだけど、ネコ吉先生のところまで苗木なんとかしてもらえないか聞いてきてくれないか?俺も行きたいんだけど、どこで目が光ってるかわからないからさ…。」
「わかったわ。」
俯いた秋輔の瞳は昨晩と同じ疲れたような瞳で、つい頷いてしまった。
特に道中は何も変わった様子は見られなかったが、秋輔のマンションの前にじっと窓を見つめている不審な女がいたが素通りし、ネコ吉先生の部屋へと向かう。
インターホンを鳴らしネコ吉先生を待った。不審者からの視線が刺さるようで長く感じ、早くあのほっこりする笑顔にすがりたくなった。
「朱音よ。ネコ吉先生開けてちょうだい。」
「はいはい。おや、1人なのん?早く中へお入んなさい。危ないからね。」
ガチャリと鍵が開いた音がして、優しいおばあちゃんが出てくれた。
案内されるままにスッと中に入り鍵を閉めた。
「彼とはうまくやってるのん?でも、私に会いに来たんだから何かあったのね?」
ぽんぽんと座布団を叩き座るように促され、少し安心する。
「ネコ吉先生…。」
「おばあちゃんって呼んでほしいのん。」
「おばあちゃん…。」
「なあに?朱音ちゃん。大丈夫よ、大丈夫。」
おばあちゃん…そう呼んだら何故だか涙が溢れて止まらなくなって、ネコ吉おばあちゃんが抱きしめてくれて、頭を撫でてずっと大丈夫と繰り返してくれるその声はとても優しかった。
「おばあちゃん。私、帰れないかもしれないの。」
「あら、そんなに彼とうまくいってないのん?」
少し落ち着いた私は世界樹の苗木が枯れてしまったことを話した。
「朱音ちゃん。一度枯れたって強い愛は必ず復活するわ。朱音ちゃんは彼のこと、愛してるの?」
おばあちゃんは優しい声はそのままなはずなのに少し厳しい表情で、私を見つめて言った。
愛してるのか…好きと自覚したのは昨日。愛してるとは気恥ずかしくて、言えなかった。
まごまごしているとカチンと音が響き、おばあちゃんの空気が和らいだ。
「お茶が入ったのん。ゆっくりガールズトークしましょ?」
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