もしも学校の椅子がトイレの椅子だったら

五月萌

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122 会長就任、会長退任

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次の日。
言わずもがな、僕は7時に校門前に立っていた。

「おはよう、モン」
「おはようございます」

あとから来たモンは珍しく挨拶を返した。
空はどこまでも青い。まさしく晴天だ。

「今日もポンプ回しか?」

その僕の言葉には答えずにモンは隣を歩いていく。目線はやや下だ。
そして、僕らは例の場所に着いた。
僕はポンプ回しに加わった。

「全員聞いて下さい。今日は会長退任・就任会を行います。放課後、生徒会室まで来てください」

いきなり、モンは無表情で声をひそめて言った。視線は僕を見ているようで空虚を見ているかのようだった。

「ええ? 雷神先輩、辞めちまうのか?」
「はい。今日から私が新たな会長になります。もっとも、ポンプ回しは卒業式まで、どの学年も滞りなく行いますが。……おや? 手が止まってますよ?」
「生徒会室に全員入れるのか? 狭くない?」

僕は見事なパスで場を制する。

「大丈夫です。先輩のおいてあるラグビーボールやら漫画家の直筆のサインが入った絵など、生徒会室を一掃したので」

モンは涙目だった。
僕は圧倒されて何も言えず、ポンプ回しに励んだ。
(そういえば、モンは先輩のことが好きだったな)



作業が終わって教室に入る僕を、葉阿戸が一瞥した。

「葉阿戸、おはよう」
「おはようございます、葉阿戸様」
「モン君、おはよ」

葉阿戸がモンに笑いかける。
僕は不思議そうに葉阿戸を見つめる。

「おはよう、たい、葉阿戸さんに謝ったほうがいいよ」

いちが慌てた様子で話しかけてくる。

「いち、おはよう」

僕はのんびりとケータイを開く。
そこには葉阿戸の着信履歴が60件程着ていた。そしてメールも僕の体調を気遣うものが多かった。他はなにか用事でもできたのかと聞いていた。
僕は葉阿戸に気を使ってもらったのが嬉しくもあり、バツが悪くもあった。

「葉阿戸、昨日はごめん。遊ぶのはいつでもできるけど、勉強は今しかできないから」
「もう誘ってやらないから」

葉阿戸はアヒル口で頬を膨らませる。
おそらく、本気で怒っているのではないのだろう。

「うん、じゃなくて、テスト前だと遊ぶのは憚られると言うか」

キンコンカンコーン。
僕が話している時にチャイムが鳴った。
僕は急いでこの学校に似合うように体裁を取り繕い、ズボンとトランクスを脱いだ。
がらら。

「はいー、おはようー。来週の今日はテストだぞー、部活はしばらくないー。勉強をしておくようにー。それじゃあズボンとトランクスを前にー」

いつも通りの橋本で変わらない日常だった。




それから放課後。生徒会室。
モンはいつの間にか花束を用意して拓哉に渡していた。

「名残惜しいぜ」と拓哉が言うと皆が一斉に口を揃える。

「「「3年間ありがとうございました!」」」
「「「ありがとうございました!」」」

モンを始め2年生、そして1年生までもが、ピンと背筋を伸ばして言うと、それから会釈した。
僕も流されるままお辞儀をした。

「社会人になっても、椅子がトイレになる会社、作る努力するからな」
「「「絶対そこへ、面接申し込みます!」」」
「取らぬ狸の皮算用だな」

春木が吹き出すと3年生全員が笑った。

「”もしも会社の椅子がトイレの椅子だったら編”、次週からスタートだぜ!」
「おいやめろ、何を言ってんだ。高校生活、まだ終わってないぞ」

土井が拓哉にツッコミを入れる。

「たー君も入ったことだし、来年は新1年生大量にゲットするんだぞ!」

拓哉はそう言うと、いきなり僕の手と握手した。

「は、はぁ」
「会長の前ですよ?」
「はい、わかりました」

僕はその手を握り返した。

「モン君も」と拓哉はモンの手を掴んだ。
「新たな副会長はどうします?」
「そうだな、テストで1番の成績のいい野郎だな」
「了解しました」
「じゃあいつもの店で、今日は肉祭りじゃ!」
「「「おー!」」」

かくして、居酒屋に連れて行かれた僕は某有名映画の千と千◯の神◯しの豚になるのではないかと思うほど、肉料理を食べていた。
橋本は酔っ払って、どじょうすくいをしている。皆にウケてもらっていた。
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