もしも学校の椅子がトイレの椅子だったら

五月萌

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124 ホームクリスマス

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クリスマス。
僕は学校から帰宅した。葉阿戸とこの日を過ごす予定だったが、なんと葉阿戸が熱を出してしまった。
悲しみに暮れる僕を嘲笑うかのように雪が降ってきた。
結局いつも通り勉強をすることになった。
ピンポーン。
家のチャイムが鳴った。
母が出かけているらしく、応答しないため、僕がしかたなく1階に降りていく。

「誰だろう?」

僕はドアフォンの通話を押す。

「メリークリスマース」
「げ! 明日姉さん」

僕は反射的にのけぞった。
モニターに明日多里少がいた。

「風子ちゃんもいまーす」

風子がにゅっと飛んで顔をみせた。

「風子ちゃんはいいけど、何しに来たんだい?」
「お兄ちゃん、寒いから入れてよ」
「~~~~っ、わかったよ」

僕は風子が寒くて可哀想なので玄関のドアを開けた。

「「お邪魔します」」
「明日姉さんは許可してないんですけど」

僕は明日多里少を締め出そうとすると、明日多里少の剛腕でドアをこじ開けられた。

「君とあーしの仲じゃない♡」
「腕力ありすぎ……。本当に何しに来たんですか?」
「葉阿戸が熱でうなされてるから、君は1人で暇かと思って!」
「暇じゃないので、お引き取り願います!」

「お兄ちゃん、このサイダー飲んで良い?」
「……風子ちゃん、人んちの冷蔵庫は勝手に開けちゃだめだよ」
「ビールある?」
「運転しないんですか?」
「タクで来たし」

明日多里少は平然と冷蔵庫に手を伸ばしてビールを得た。プシュッと缶を開けるとガブガブ飲む。

「とりあえず、たー君の部屋行くか」
「もう、今日は変なことしないでくださいよ」

僕は2階の部屋に2人を招いた。

「それはなんですか?」

僕はさっきから気になっているものを指さした。
明日多里少の手には四角いケーキの箱とコンビニのビニール袋があった。

「茂丸がテストで負けたから、これは茂丸からのクリスマスプレゼント」
「あー」

僕は納得すると、ホールケーキを切りに下へ行き、果物ナイフを持ってきた。
そしてチキンとケーキを3人で分けて食べた。
明日多里少は我が物顔でベランダに出て、タバコを吸っている。

「茂丸も葉阿戸も構ってくれないから来たのかな」
「お姉ちゃん、好きじゃないのかな?」

風子にド直球に聞かれる。

「そうだな、嫌いではないかな」
「そうじゃなくて、たいお兄ちゃんの事をだよ」
「し、知らないよ、そんなの」

僕は口をとがらせる。

「例えそうだとしても何も変わらない」

がらら。
ベランダの窓が空いた。
ビュウウと冷たい風が吹き込んできた。

「なんの話ししてんだよ?」
「いや、別に……」
「あ、赤ひげ危機一髪やろう!」

風子は話題をそらして、僕の部屋の棚の上に目をやった。

「はいはい、もう、わかったよ」

僕は投げやりな態度で棚の上の赤ひげ危機一髪をとる。

「負けたら罰ゲームな。モノマネ」
「いいけど、風子ちゃんは?」
「ウチもいいよ」

風子は剣を配った。

「たー君から」
「そい!」

僕は剣を刺す。
シュポーン!
一発で赤ひげのおじさんが飛んでいった。

「「あっはっはっは」」
「そい! だって」
「じゃあ鶏のま~」
「豚のマネな?」
「何で指名されるんですか?」
「あ?」
「すみません。……ブウ! フゴフゴ! フゴフゴ!」
「はっはっは」

明日多里少は僕を指さして笑った。
風子は僕に冷めた視線を向ける。
僕はいたたまれなくなった。

がらら。
ベストタイミングだった。
「ただいまー!」と母が帰ってきた。

トントンと階段の上がる足音がする。

「あら、明日多里少ちゃんに風子ちゃん」
「「お邪魔してます」」
「ケーキ買ってきたから食べて」
「さっきケーキ食ったよ」
「はいこれ」

母が一方的にケーキを押し付けて出ていく。

「いただきます」

風子はケーキを一心不乱に食べる。

「風子ちゃん? 急にどうした?」
「ウチ、もう帰らなきゃ。ご馳走様でした。じゃああとはお若い二人で、お熱い夜を!」
「どこで覚えたんだ、そんな言葉。そんな、明日姉さんをおいてかないで」

僕は愕然としていると、風子は手を降って、いなくなった。

「お熱い夜を、か。君と過ごした夜を思い出すな。ちょうど去年か」

明日多里少が僕に近寄ってくる。

「ちょっちょっちょ! 茂丸にチクりますよ」

僕は顎をクイッと持ち上げられる。目をぎゅっとつぶった。唇に温かい感触があった。

「指だよ、ばーか」
「ええ?」

僕はゆっくりと目を開けると、明日多里少が人差し指と中指をぺろりと舐めていた。それは妖艶な姿だった。

「ケーキ食べたらすぐにご帰宅を!」
「急かすなよ。まだ遊びたりねえだろ」
「お願いします、帰ってください」
「しゃーねーな、いただきます」

明日多里少はチョコレートケーキをガツガツと食べ始めた。

「美味しいですか?」
「ああ、うめーな」
「良かった」
「ところで、大晦日の日は何時に集合だ?」
「9時までに駅の改札でお願いします」
「楽しみだな、温泉」
「は、はい。ところで茂丸とはどうですか?」
「どうって? 関係はマンネリ化してるからな。何? たー君の事いじめられたいの?」
「いやそういう意味じゃなく。茂丸が可愛そうっていうか」

僕は明日多里少の強い眼力から逃れようとパニックになる。声が裏返った。

「ケーキ、ごっそーさん」

今度の明日多里少は離れていった。部屋から出ていった。
僕は思わず、しばらく動けないでいた。
(全く、嵐のような人だった)

「勉強しないと、旅行前に」

僕は皿やフォークなどを片付けて、本格的に勉強をスタートさせた。
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