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125 年末の旅行
しおりを挟む大晦日。旅行当日。
僕達は朝から新幹線に乗っていた。母に作ってもらったおにぎりを皆で分けて食べた。茂丸は遅刻するだろうと思い、家まで迎えに行った。案の定、起きがけで出てきたので、さっさと用意させた。そして2泊3日の旅をスタートさせたのだった。
「たい」
葉阿戸の声で目が覚めた。
僕は気づいたら眠っていた。
外は日本晴だ。
「ん? 葉阿戸、今どこ?」
「もう石川県に入ったよ、次の駅で降りるよ」
葉阿戸は窓際で大きなキャリーケースの上に小さくて高そうなカバンを置いている。
僕は小さなキャリーケースに大きなリュックを載せている。
「明日姉さんと茂丸も起こさないと、たい、起こしてあげられるかい?」
葉阿戸は後ろの2席を占領している2人を流し目で見て、軽く背中をひねる。
「……待って、宿についたら、葉阿戸が言ってた……ほくろ探し……する?」
僕はドキドキしながら聞く。
「なんで俺がそんなキモい事するんだよ」
葉阿戸が目を細めて怒り出す。
「したいって言ってたじゃん!?」
「言ってねえよ! 俺の姉さんじゃないのか? また間違ったのか?」
「明日姉さん、どうなんですか?」
僕は後ろの席まで屈んで移動した。
「う~ん! うるさい!」
ベシッ
僕は明日多里少にチョップされた。脳天に地響きが起こる。
「痛い! もう、茂丸に明日姉さん、起きてください」
「あれ? もう着いたのか?」
「ん? たいか? 俺、確か今、カードゲームで戦ってたんだけど」
茂丸は寝ぼけている。
「次の駅で降りるぞ!」と葉阿戸の一声で皆の目が冴えてくる。
僕ら4人は新幹線から降りて、旅館近くの駅にあるコインロッカーにキャリーケースを入れる。そして、再び新幹線に乗って、タクシーで金沢にある某市場に向かった。
大晦日で年末だからか、大盛況の市場だった。
新鮮な野菜に海の幸を求める人で大賑わいだ。
僕はそこで、切ってあるズワイカニを買って自宅へ送ることにした。
「2杯で1万でどう?」
いきなり声をかけたのは魚屋のおっちゃんだ。
ザルの上のカニを見ていた。
「買った! 送ることってできます?」
茂丸は即答した。
「はい、送料無料でできまっせ」
「あーしも! クレカ使えます?」
「悪いね、うち、クレカやってないのよー」
「茂丸、金」
「ええーそりゃないですよ、姉さん」
「貸せよ、後で返すからさ」
「それなら」
茂丸は財布から2万円を出し、おっちゃんに支払った。
その後、2人は発送の紙を書いていた。
はぐれないように4人は手をつなぎ、市場の端から端まで歩いていった。
いろんな物産が見れて僕は楽しかった。
夕方になり、旅館へ行くことにした。
「ヘイ、タクシー!」
葉阿戸は大通りのタクシーを捕まえて、4人で乗り込み、駅まで乗った。
駅の改札から出ると、ひょうたんの置物が飾られていた。ガラス越しだ。茶色くて小さなひょうたんが幾重にも折り重なっていた。
「わー、綺麗だなー」
僕が感動している横で、3人は歩くペースを落とさない。
「今はとにかく花より団子だ。夕食は高級料理なんだよな? あー腹減った」
明日多里少がお腹をさすっている。
「ところで葉阿戸、あんたさ、温泉はどうする?」
「普通に早朝にタオル巻いて入るけど?」
「たー君、旅館の人に葉阿戸のことは伝えてあるから大丈夫だぞ」
そんなこんなで旅館に着いた。
◇
夕食の時間。
「「「いただきます」」」
4人は4人がけのテーブルの椅子に座っていた。大きなテーブルには料理が並んでいる。
前菜、造里、温物、中皿、お凌ぎ、蓋物、揚物、酢物、食事、吸物、香の物、デザートといった感じでコース料理は目白押しだった。
僕は新鮮なマグロの刺し身から頂いた。身がぷりぷりして美味しかった。次に伊勢海老のグラタンに舌鼓をうつ。これも、海老の濃厚な味とホクホクしたじゃがいも、そしてチーズの優しい味わいで、夢中になっていた。
4人はしばらく何も話さず自分の前の料理に夢中になった。無論、カニも食べているので、無言になるのは当たり前だった。
「茂丸、その伊勢海老のグラタン残すのか? あーしが食べてあげる!」
「ああ……! これは最後に残しておいたのに……!」
茂丸は悲しげに言葉を発したが、知らん顔で明日多里少に食べられてしまった。
「たー君、そのサラダ、食べないのかいただき!」
「よく食い意地はってるのに太らないなぁ」
「明日姉さんはいつもこうだから、自分は好物から食べるようにしてるよ。いつも泣かされてきたから」
「なんだよ? あーしは胃にも歯がついてるんだぞ? 文句あるのか?」
「「いえ、ないです」」
茂丸と僕の声は重なる。
「すみません、生ビールありますか?」
「はい、ご用意できます」
「ビール1つ、後はコーラ3つ」
「かしこまりました」
旅館の作務衣をきた従業員に注文が入る。
しばらくして、ドリンクが運ばれてきた。
「そんじゃあ、1年間、お疲れぃ! カンパーイ」
「「「乾杯!」」」
皆で乾杯した後、食事はまるっと平らげられた。
「「「ご馳走様でした」」」
皆で挨拶した後、僕らは先程案内された部屋に戻った。
「風呂行こうぜ!」と元気ハツラツな茂丸。
「まだ待ってくれよ。食ったばっかだよ」
「お茶入れるから飲む人?」
葉阿戸は気を利かせてお茶をくんでくれた。
「「はーい」」
茂丸と僕の声が合わさった。
「ちょっと一服してくる」
明日多里少が部屋からいなくなった。
「おい、茂丸、あんた、変なことされてない? 大丈夫?」
僕は明日多里少がいなくなって即座に問いかける。
「実は、内側のあそこのチクチクパンツ、履いてる」
「「はあ? それって」」
「勃起しなければ大丈夫だから」
「明日姉さんは何がしたいの?」
僕は疑問に思った。
「これを履くのは約束だから、理由もなく脱げないんだ」
「それは辛いな」と葉阿戸。
「でも、なんか一周回って、俺愛されてない?」
「愛されてはないと思うよ」
「オブラートに包めよ。たい」
「あー学校も来年で3年生かー、早いなー」
「誤魔化しきれてないぞ」
「何はともあれ風呂行こうぜ」
茂丸はフロントで借りた浴衣を抱えている。
「行くか、葉阿戸は?」
「ああ、俺、明日の朝、貸切で入るから、心配しないで」
「そっか」
僕らは露天風呂に入って、ゆっくりした。人はまばらだったので、サウナにも入って茂丸と喋り倒した。
「あーさっぱりした」と僕は浴衣に着替えた。
「気持ちよかったな」
「茂丸、牛乳奢ろうか」
「背が低いことの当てつけか?」
「イライラしてるんだろ、マンネリ化してて……」
「なんでその事を?」
茂丸は顔を真赤にしてプルプル震えだした。
僕は牛乳を2個買って、茂丸に恵んであげた。
「おっぱいドリンクうめー」
「それ、某ハンバーガー屋のシェイクの事も言ってなかった?」
「今日は徹夜するか?」
「んー、僕は早寝したいな10時までには寝たい」
「はえーな。そういや旅館ってテレビ見れるよな? エロいやつ」
「見ねえよ。彼女の前で見るなよ。嫉妬するぞ」
「童貞みたいだな、お前」
「ど、童貞ちゃうわ! 僕は見たくないから諦めろよ。リモコンはフロントに預けよう」
僕らは張り切って部屋に入りテレビのリモコンをビーチフラッグばりに取り合いした。茂丸の方が一瞬早くリモコンを手に入れてスイッチを押した。
しかしこの旅館は1つのチャンネル以外動かなかった。
それはシャチがアシカを食そうと、アシカが一斉に逃げる、大自然を謳った番組だった。
明日多里少と葉阿戸が冷ややかに僕らを見ていた。
「明日姉さん。こいつ変態です! その、18禁のテレビを見ようとしてました」
「君もだろうが! 嬉々としてリモコン取り合うなよ、この、えろたー君」
「もうやってらんない! 歯磨いて寝てやる!」
僕は寝る前の準備をした。雪国であるがゆえなのか、布団の中は温かい。眠りにつこうとするも、3人がギャーギャー騒いでいて寝付きが悪かった。
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