もしも学校の椅子がトイレの椅子だったら

五月萌

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128 生徒会の仕事5

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冬休み明け。
7時に学校についた。

「モン、あけおめ!」

僕は校門のところにいるモンに後ろから声をかけた。

「おはようございます。あけましておめでとうございます」

振り向いたモンは今日もまた元気がない。

「どうしたんだ? 参ったたぬきは目でわかるだぞ」
「なんでもないです」
「こないだから何で敬語なんだよ」
「お気になさらず」
「待てよ、きっと葉阿戸から言われたんだろう?」
「いいから、さっさと進んでください」
「うわ、絶対図星だ」
「この……! この泥棒猫ぉ!」

モンは怒りを抑えようと震える手を握ってみせた。

「ごめんごめん、意地悪しすぎた」
「私は絶対に認めない! 葉阿戸様とお泊りした事は! 葉阿戸様が優しすぎるだけだ!」

モンは一言ずつ区切って、僕に指を指した。

「その話か、他に2人メンバーいたけど。陽君に聞いたんだな?」
「うるさい。私は葉阿戸様とツインレイなんだぞ!」
「何でだよ。根拠は?」
「フー! …………昔、占い師に観てもらったんです」

モンは深呼吸して落ち着かせている。

「そりゃヤブ占い師だよ。寒いから行くぞ、葉阿戸と温泉行って悪かったなぁ」
「……言っときますが、葉阿戸様は私のことが好きですなのですよ。後、言っときますが、あなたのことは元会長に仲良くしろといわれただけですから」
「はいはい」

僕らはポンプ回しに向かった。
ポンプ室が開いて、僕は中に入ると、パンイチになった。それくらい暖房が効いている。

「ふうふう! もういっちょ!」

陽は僕の隣で気合を入れている。

「お土産、おせんべいだけど食べれるよね?」

「たい君の選んだものなら何でも食うよ」と陽。

「え? 何処か行ってきたん?」
「ああ、北陸の石川県にちょっとね」
「「「いいなぁ」」」
「「「生徒会でも行きたいですね」」」

皆は口々に羨んでいた。

「「「去年は春休みにヂュズニーランドに行ったけど」」」
「え? それ今年もある系?」
「皆さん、私語は慎めとはいいませんが、スピードを落とさないでください」

モンは厳しく取り締まる。

「モン、生徒会でも何処か行こうよ」
「予算を蟻音が出すのなら」
「そんなこと、無理無理!」
「モン君、えな君に頼もう!」

唯盛は提案をする。

「えな君? 三文字君のこと? 生徒会員だったのか? 地味すぎてわからなかった」
「三文字君に頼るのはだめです。去年は会費が余ったから春休みにヂュズニーに行ったんですが、流石に今年は……元会長が大散財したから」
「散財なんてしてたか?」
「あ、いえ、こっちの話です。とにかく予算がありません」
「もしもし、えな君?」

僕はケータイを片手に棒を回した。番号は葉阿戸のケータイを見ていたからわかる。

「お前はプライドないのか」とモンは呆ける。

『もしもし? どなたですか?』
「えっと、2年の蟻音だよ。生徒会で何処か行こうって話なったんだけど予算がなくてね」
『あいにく、資金は出せないんですよ』
「え? なんで?」
『こないだのパーティーで両親に金の使い方を詰められたので』
「ああ、そんなに使ってたか?」
『先輩は帰ってしまって知らないと思いますが、生演奏カラオケで奮発してしまったんです』
「そうなんだ」
『お役に立てなくて申し訳ないです。何処か行くとお金がそれなりに掛かるので俺の家でお祝い会でいいんじゃないですか?』
「ちょっと相談してみる、じゃ、ありがとう」

僕はえなの反応を待たずに切った。

「で、えな君はなんと?」

モンは眉根を寄せている。

「金は出せないけど、お祝い会なら歓迎だと。えな君の家で」
「そうですね、それならいいですね」
「いつパーティする?」

唯盛は棒を思い切り押したので、僕達は怯んだ。

「せっかくだし春休みに集まろう! 新一年生を集める計画をたてよう」

といとが言うので僕もその波に乗る。

「それがいいや。モンも来いよ」
「まったく、しょうがないですね」

ピピピッ!

『終わりだよ』

葉阿戸の可愛い音声で皆は回す棒を押すのをやめた。

「皆これお土産!」

僕はのどぐろせんべいを皆に渡した。

「「「ありがとう、たー君」」」
「たい、な」
僕はその後、3年生と1年生にお土産を渡すため、廊下を走る。

「おい待て、蟻音、副会長が廊下を走っていいのか?」

モンが大声で僕に注意する。

「敬語はどうした?」

僕は足を止めて振り向く。

「いちいち、重箱の隅をつつかないでもらえますか。貸してください、私は3年に渡してきます」
「いつものモンでもいいんだぞ?」
「ですから、私達の不仲を元会長に知られたら困るんです」

モンは僕の持っている袋を鷲掴みして受け取ると、少し早歩きで、僕と別れた。

「やれやれ」

僕は1年のポンプ室に向かった。コンコンコンとノックする。

「皆ー、これお土産」
「「「たー君先輩! ありがとうございます」」」
「たー君先輩じゃねえよ」

僕は動揺してお土産のおせんべいを落としそうになった。1年の生徒会委員に配る。

「ああ、それと1つ。春休みにえな君の家に集まってお祝いするから。新一年生を集める方法を皆で考えよう」
「「「はーい」」」
「それじゃ」

僕は全員にお土産を配り終えて、教室に帰還する。

「おはよう、おかえり、たい」
「おはよう、ただいま、葉阿戸」
「お土産はもう配っておいたよ」

葉阿戸の声に反応して、黄色が振り向く。

「たい、すげー美味かったよ、サンキュな」
「いや僕は選んだだけだよ」
「「「ご馳走様、美味しかったよ」」」
「それは良かった」

僕は下半身を裸にする。

キンコンカンコーン
がらら。
教室内に入ってきたのは橋本だ。珍しくマスクを付けている。

「げほんー! 後ろからーズボンとトランクスを集めてー! ごほごほー!」

その先生の指示に皆は従う。だいぶ鼻声だ。
僕は橋本の体調が悪いのだと判断できた。
(風邪か?)

「ではではっくしょーんー、……大魔王ー」

橋本は衣類の入った袋を背負って出ていった。

「バカは風邪引かないのにな」
「まあまあ。この調子だと、世界史探求、自習になるんじゃない?」

いちは和やかなムードを作る。

「そうだな」
「お土産は昼休みに俺が渡しておくよ」

葉阿戸が僕を見た。

「よろしくー」

僕は授業の準備をした。
時は流れる。
今日の6時間目の授業の世界史探求は皆の悲願が叶って自習になった。

「ごほーんー、先生は後ろで見張ってるからなー」と、僕の背後から橋本の声が聞こえた。

皆、見張りは居心地が悪く、真面目にプリントやノートを仕上げている。
しばらく仲間とともに頑張った。
キンコンカンコーン。

「それではー! ごほんー! ずびょんととらんくしょん! を返すー」
「ずびょんととらんくしょん?」

僕の質問を無視した橋本が前の席から衣類の入った袋を流す。
ウウィイン
足の拘束が解けた。
今日は水曜日なので、部活はない。

「気をつけて帰るようにー、はあっくしょーん!!」

橋本はくしゃみしながら出ていった。

「おじさんのくしゃみって何であんなに大きいんだろう……」
「葉阿戸、また何処か旅行しような。今度は2人で」
「蟻音、いつもの仕事に行きましょう。葉阿戸様、また明日」
「モンか、うん」

僕は葉阿戸がなにか言う前にモンに手を引かれて歩き出した。

「せんべい美味しかった?」
「普通に美味しかったです。ありがとうございました」
「壁を感じるのは気のせい?」

僕が喋っている内にポンプ室の前に来た。周りを見渡して他の誰もいないのを確認する。
コンコンコン。
モンのノックでドアが開いた。

「たー君、腕章」

猫林はぶっきらぼうに言うと、腕章を投げてよこした。

「モン君も」
「ありがとうございます」
「腕章?」

僕は疑問を口にする。

「私が頼んでおきました」
「ええ? でも去年もつけてなかったじゃん」
「それは元会長の指示でしたが、今日からつけることにします。今や地味で目立たない蟻音の救済措置です」
「まじか。他の人は?」
「生徒会長と副会長だけいいのです」
「皆つけなくていいのか?」
「立場がわかっていないようですね」
「わかってるよ」
「この学校の顔とも呼べるので、不良行為などせず、むしろ注意してくださいね」
「はいはい。じゃあ、代わるか」

僕は服を脱いで、パンイチになった。
陽と交代した。

「たい君は今日も目の保養だね」
「いやいや」

僕はぎょっとして陽を凝視する。

「「「え?」」」
「「「たいと陽ってそういう関係なの?」」」
「違う、そうじゃない」
「ふうん、葉阿戸様に言ってやろ」

モンはボソリと呟いた。

「やめろ!」
「たー君力ちゃんと入れてよ、重いよ」
「はいはい。モン、絶対に変なこと言うなよ」
「もしもし、葉阿戸様? 蟻音が浮気してますよ。同じ学年の石井陽と」

モンはこれみよがしにケータイを耳に当てている。

「今朝の報復か!」
「嘘じゃないですよ、目を熱くさせてお互い見合ってましたよ」
「やめろって言ってんだろ」
「パッパラー! ドッキリでした! これにこりたら葉阿戸様に付きまとわないでください」

モンは無感情な声で告げる。

「何だよ、今、身の縮む思いであんたのケータイ壊そうとしてたのに」

僕はそれから何周も棒を押し続けた。
終りが来るまで長かった。
ピピピッ

『終わりだよ』と葉阿戸の声で僕は生き返るような感情が生まれた。

「さて、帰るか」
「蟻音、まだ帰るんじゃありません。うちわの集計をしないとなりません」
「うちわの集計?」
「誰が何組に入りたいかです」
「そんなの僕らに公表していいのか」
「私とあなたと3年生と一緒にやりますよ」
「はあ、めんどくさ」
「じゃあ来なくてもいいです」
「行きます! 僕を葉阿戸から離させはしない」
「行きますよ」

モンは僕の生着替えを待ってから、ポンプ室の外に出た。

「さむ!」

室外は寒すぎた。

「生徒会室は温かいでしょう」と、モンの言う通り、生徒会室は暖かかった。

「あ、モン君とたー君やっと来た!」
「じゃあとりあえず、2年と1年のなりたい1,2,3組の名前を書いていくぞ」
「「「おー!」」」

僕らはへとへとになるまで作業につきあわされた。

「でもこれで、来年は葉阿戸と同じクラスだ、ウヒヒ」
「何1人でニヤついているんですか? キッショ」
「いや別に。キッショとか言うなよ」

僕らは解散していった。
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