もしも学校の椅子がトイレの椅子だったら

五月萌

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131 生徒会の仕事6

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明くる日。

「モン、おはよう」
「おはようございます」

モンは僕を上から下へ眺めた。
僕は腕章はしてるし、校則は守っているはずなのだが、緊張して顔色をうかがう。

「な、何?」
「寝癖をなんとかしたほうがいいですよ」

モンは小さく言うと、振り返って歩き出した。

「はぁー……、ひぃー、ふぅー、へぇー、ほぉー」
「黙ってください」

モンは冷たく言い放つ。
僕は今日もパイプ回しを行った。
といとは戻ってきたので、モンは見張り役だ。
朝のうちに僕は葉阿戸から、ワックスを借りて、寝癖を誤魔化した。

「たい、数学教えてー」
「この問題は、この公式をつかってこうやって解くんだよ」

僕は得意げに葉阿戸のノートに書き込む。

「へええ、なるほど」
「わからなかったら、また言って」
「ありがとう」

葉阿戸は前を向く。

キンコンカンコーン。
がらら。

「はいー、おはようー、それでは出席はいつものメンバーねー。後ろから衣類を集めてこいー」

橋本は完全復活していた。
皆は何事もなかったように過ごした。
2時間目にブリブリと黄色がうんこしたので昼休みまで臭かった。




そして放課後。
僕は生徒会室でフラワーペーパーを作っていた。ちまちました作業に首がこってしまう。
モンは筆を執る。卒業生への挨拶を書いているようだ。

「モン、卒業式の門はどうするんだ? モンだけに」
「5つの花の門を作って生徒会の在校生に持たせます」
「10人かー」

この場には僕とモンしかいなかった。
後の人はパイプ回しをして、3年生は生徒会室には来ないようになっている。

「2年と1年でなんとかします」
「そうなんだ、ふぁあ、眠たくなってきた」

僕は目を擦る。
その時だった。
ドアがバン! と開いた。

「モン君、俺にも手伝わさせてよ!」

陽が息を荒くして入ってきたのだった。

「陽君、もう少し静かに来てください。それで、パイプ回しが終わったようですね。手伝うならどうぞ」

「猫の手も借りたかったくらいなんだ」と僕が言うと、陽は当たり前のように僕の隣に座った。

「間に合ってよかったよ。その、愛の共同作業に」
「やめて、蕁麻疹が……、対面に座ってよ」
「たい君の右腕だもん、誰にも渡さない」

陽の手は、次のフラワーペーパーをとる僕の手と軽くぶつかった。

「あぁ……」

陽は左手を右手で掴んで照れているようだ。

「いや、変な感じにしないで。あと、モン、写真撮るな!」

僕には中二病の人が、「魔力の封じられた左手がっ……」、とやっているようにしか見えない。

「お似合いじゃないですか」
「僕と陽君はそういうのじゃないから」
「俺等はまだ友達……だよね?」
「もうやだ、帰りたい……!」

僕はぼやいてると再びドアがバーン! と開いた。

「はいー! 蟻音減点ー」

橋本がやってきた。

「開閉は静かにお願いします。生徒会室のドアが壊れたらどうするんですか?」
「新しいから壊れないよー、壊れても予算があるしー?」
「いや本年度の予算はあまりないですよ。元会長に言ってください。去年、私用で海に行ってサーフィンしまくってたんですから」
「来年度はあるんだろー?」
「あるだろうけど大切に使いますよ。ドアの修繕費用は頭にございません」

モンが言い返す。
その時、2度あることは3度あるのか、さらにドアがドンッバキバキ! と開けられた。
ドアのHPヒットポイントは0だ。
ドオオオンン! バアアン!
僕はドアがなぎ倒されるのを見逃さなかった。

「予算が! 予算ーーー!」

モンは瞬時に青くなる。

「予算予算って、小姑みたいだぞ。もうちょっと寛容になれよ」

廊下と生徒会室の間に立っていたのは拓哉だった。

「先輩! もとはといえば先輩のせいで予算を使われることが多かったんですよ!? それをドア壊しておいてよくも」
「すまんすまん! そのかわり俺の立ち上げた会社が軌道に乗ったら賄える以上の投資をするからさ」
「それって何年後の話ですか?」
「まあ、……まあ気になったら見学に来いよ」
「はあ」
「何の会社なんですか?」

陽は不思議そうに質問した。

「よくぞ聞いてくれました! アダルトグッズの会社をだな!」
「そりゃまた、明日姉さんが好きそうな……」
「あすねえ? 女性か? いや、待て、たー君の行動範囲から割り出す……、確か、日余葉阿戸の姉か?」
「そうです。割とSな大学生です」
「有能そうだな。よし、今のうちに引き抜いておこう」
「今ー、俺らは忙しいんだー、これ以上用がないなら帰れー」

橋本は壊れたドアを持ち上げながら口を挟む。

「モン君、たー君、生徒会を頼んだぞ、じゃあな」

拓哉は僕らに目線を投げかけて、大股で歩き去った。

「壊れたドアはどうするんですかー」
「しばらくはこのままかなー」
「寒いですぅ」

陽はここぞと言わんばかりに僕の腕にくっつく。

「こらー、離れろー、先生の前でいちゃつく奴らは皆爆発しろー!」
「いちゃついてないわ!」

僕は腕をブンブン振って、振りほどいた。
ドアはガムテープで補強され、立てかけられたのだったが、皆引き戸だと思っているのか、ドアは何度も倒れて、大きな音をたてた。
ドォオオオン!
バァアアアン!
生徒会員は総出で卒業式の準備に取り掛かった。

「大丈夫かな、この学校」

僕はどんどん大きくなる不安をかき消せなかった。
結局、19時までの労働になった。
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