もしも学校の椅子がトイレの椅子だったら

五月萌

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101 修学旅行当日2

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2日目。

僕は6時に起きた。
朝、廊下に出てトイレに入ると、橋本が小便器を使っている。

「おはようございます」

「朝はビュッフェだー」と言って、橋本は出ていった。

今日は那覇市観光だ。国際通りにはアニ◯イト、ポケ◯ンセンターなどがあると書かれていた。

「んぐう」

僕はトイレから出て伸びをする。部屋に戻ると皆まだ寝ていた。早起きはショートスリーパーの僕にとって苦痛ではない。
窓から見ると海が遠くに見える。見事な水平線だ。

「おお! 皆起きてよ! すごいよ」
「おはよう、たい」
「おはよう、葉阿戸」
「おはよう、たい、葉阿戸さん」
「ボッキマンはまだ起きないのか?」
「竹刀君、竹刀君」

いちが竹刀を揺さぶる。

「だがオレのふとももはいつの日か必ずお前にヤング弁当食い放題だ!!」
「寝言?」
「竹刀君、起きて!」
「……はーちゃん、いち、たい、おはよう」

竹刀の目だけがぎょろぎょろ動く。起き上がるとトイレに行こうとしてるのか、部屋のドアに手をかけて1言。

「昨夜は襲うの忘れてたよ。いち」

そして竹刀は出ていった。

「……冗談でもやめて! 怖いから」といちはがくがく震える。

「何かあったら大声で起こして、助けるから」
「たい! ありがとう!!!!」
「竹刀君は気にせず、着替えて食堂行こう」
「朝ごはんはヴュッフェだって」
「パイナップルとマンゴー食いまくろう」
「おー」

僕らは私服に着替えて、布団を畳む。

「ちょっとメイクする」
「「それじゃあ待ってよう」」

いちと僕は声を合わせた。
竹刀が帰ってくる。

「ふーすっきりした、皆、はえーな」
「あんたが遅いだけだよ」
「たいのくせに偉ぶるなよ」
「全然怖くないからな」
「もう、喧嘩はやめてよ」

いちが仲介する。
竹刀は甚平から私服に着替える。そして雑に布団を畳む。
葉阿戸のメイクも終わり、4人一緒に食堂の方に進んだ。
僕は横を向いているじゃいに出会った。

「ん? じゃい君、香水臭いよ」

葉阿戸が告げると、じゃいは慌てて言い返す。

「おいら、汗臭いて言われただ。だから――」
「誰がそんな事を?」
「それは言えないだ」
「ほら、俺の制汗シートあげるから、着替えてきな」

葉阿戸はポケットから真新しい制汗シートを出して、じゃいにあげた。

「分かただ」
「モン君かな?」

いちは顎に手を当てる。

「わからないけど、じゃいのこといじめたら許さんよ。俺は」
「まあ……飯食おうぜ」
「そうだね」

僕は事を荒立てるようなことはしたくない。事なかれ主義なのだ。ヴュッフェではご飯に味噌汁に漬物があるだけで幸せだ。

「お前何食ってんの? オムライス、ハンバーグ、唐揚げは外せないだろう?」

久しぶりに茂丸が登場した。持っているプレートは特盛だ。

「あ、遅刻魔だ。いいんだよ、僕はしょっちゅう脂っこいもの食べてLDLコレステロールが高いんだから」
「おじいちゃんみたいだな、たい」
「はいはい。茂丸はおこちゃまだな。好きなもん食えばいいよ、誰も咎められないよ」

僕は椅子に座り直して、梅干しとご飯を少しずつ食む。

「なあ、たいのとこは、ポ◯モンセンター行くの? てか、今日、12時から雨降るらしいよ」
「国際通りはとりあえず一周するだろ? え? 雨? それま?」
「まじまじ! 傘あるん?」
「俺が持ってるよ」

葉阿戸が目の前の席に座った。葉阿戸も肉類は少なく、サラダが充実していた。

「俺はクレープ食いたい」
「普段でも食べれるものは却下ですー」
「じゃあおそろいの服買おうよ」
「いいけど、ここでは着ないよ」

僕は葉阿戸と話していると茂丸は何処かに行った。入れ替わりにいちと竹刀が来た。

「いち、俺等もおそろいの服買う?」
「嫌。するわけ無いでしょ」
「ひどーい、塩!」
「竹刀君にお清めの塩をかけたいくらいだよ」

いちはハムスターのようにオムライスを頬張る。
ゆったりと時間が流れていった。



国際通りにて。
僕らは皆で安価のサングラスを買って、付けて歩いた。
葉阿戸がカメラで写真を撮る。

「やばい軍団に見えてきたな」
「今更かよ」

葉阿戸と竹刀が喋る。
おみやげ屋が多い。

「ちんすこうだ」
「いち、すを抜くと?」
「……ちん……」
「何言わせようとしてんだよ」

僕はいちのフォローをする。

「俺ここみたい。パックが売ってるんだ」
「パック?」
「顔につけるやつだよ」

ドン!

「あ、すみません、ってなんだ茂丸か」
「わり!」
「茂丸その手にあるのは?」

僕は茂丸がパックを買っているのに気がついた。

「姉に買ってやるんだよ」
「へえ、優しいじゃん」
「俺等、お昼、ハンバーガー屋で済ませるけど、どこ行くん?」
「昼食は料理茶屋のタコライス」
「エモいな」
「うっせ、葉阿戸ー買えた?」
「うん、待っててくれてありがとう」
「いち、竹刀も置いてくぞ?」
「喋るチキン買ってかなくていいかな」
「いいよ! ドン・◯ホーテで買えるから!」

僕らはまた見て回った。
僕は葉阿戸とおそろいの服を買った。

そんなこんなでいると、風が吹いてきて、雨がぱらついてきた。

「あそこだ、料理茶屋!」

僕らは駆けて、お店に入った。

「すみません、タコライス4つ、後はドリンクはコーラでいいかな」

僕は店員にアイコンタクトをしてオーダーした。

「「「いいよ」」」
「じゃあ、コーラ4つ」
「タコライス4つ、コーラ4つ、以上でよろしいでしょうか?」
「はい」
「少々お待ち下さい」

とりあえず乾杯をした。タコライスは流石にサルサソースがかかっていて辛い。レタスやひき肉やトマトなどをのせたライスだった。
僕は辛いのが特段得意でもないが、葉阿戸がよこしてくるので葉阿戸の残りも平らげた。
そのうちに雨がやんだ。
その後、波の上ビーチまで500円タクシーで向かった。
10分もかからず到着した。
自由時間は17時までだ。
今は13時過ぎだ、まだまだ時間はある。

石垣から下に向かって砂浜や海が広がっている。

「この辺ラブホ街なんだよな。休憩してく? はーちゃん、いち」
「何3Pしようとしてんだ! 葉阿戸は僕の彼氏だかんな」
「うちも嫌だね」
「あ、そうだ、夕ご飯、ホモ弁で食べよう?」
「いいけど、海見ろよ、せっかくなんだから!」

僕はさり気なくいちの方に寄りかかる竹刀の手を掴んだ。自然と遊泳している女子に目が行く。
(皆、遊泳して寒くないのかな?)

「……海だな」

葉阿戸はほうけた顔をしている。

「海だね」といち。

「それしか感想ないのかよ、綺麗だなーとか思わないのか?」
「あのちゃんねー、乳デカいぞ」

竹刀は海辺で遊んでいるお姉さん2人に注目した。

「……、ナンパしてこいよ!」

葉阿戸は悪ノリしている。

「分かった、行ってくる!」
「ボッキマン、鏡、家にないのか?」
「馬鹿だからね、ふふふ」

葉阿戸は竹刀の様子をうかがっている。
竹刀が近づくと、女子がなにか言っている。竹刀の勃起をガンミしている。

「俺、日焼け止め塗るの得意なんです!」

すごい大きさの声で自慢にもなってないことをのたまう。

「「きゃーー!!」」

当然、2人の女子は悲鳴を上げて逃げていった。

「どんまい、竹刀君」

葉阿戸は戻ってきた竹刀を励ます。

「はーちゃん、日焼け止め塗る? 背中塗ってあげるよ」
「葉阿戸、別に水着じゃないだろうが」
「しょうがないな、君の勃っている大事な部分に塗ってあげるよ」
「そんなことしたら、俺の特製日焼け止めが出ちゃう!」
「あーあー、葉阿戸、あんたふざけすぎな! ボッキマンも葉阿戸に変なことするなよ!」
「ちょっとしたジョークだよ」
「なんだジョークか、っけ」

竹刀はあからさまにがっかりした顔をする。

「この辺、神社あるって? 参拝しに行こう?」
「いち、ナイス! そうだな」
「そうしよう!」

先程からシーサーをよく見かける。

「ハイサイー!」

橋本がタバコを吸いながら神社の前に突っ立っていた。

「先生、来年もこの4人同じクラスにしてください!」
「神社に願っておけー」
「先生の幸せを願うんで無理です」
「言うようになったなー、そうだなー、考えておくー」

橋本はウンチングスタイルでタバコの火を地面につけて消し、灰皿に入れると、もう一服するように煙草の箱をトントンと叩く。

「このタバコの名前はうるまだー、テストに出るぞー」
「ホラこかないでください。酔ってるんですか?」
「時は金なりー、楽しんでー」

橋本は言葉少なめにいうと、タバコを美味そうに吸った。
僕らは階段を登って、神社に参拝した。
(葉阿戸ともっといい関係を築けますように)

僕は横目で葉阿戸を見ると、葉阿戸は一生懸命お祈りをしていた。おみくじは大吉だった。
葉阿戸は末吉、いちは凶、竹刀は吉だった。
そして、僕は歩いて国際通りに戻りつつ、ホモ弁でゴーヤチャンプルー弁当を買った。お土産を見たり、買ったりしていい時間になった。
B組はクラスの集合場所に着き、ゴーヤチャンプルー弁当を宿泊施設で食べた。個室の風呂に入って体を癒やして、ゆっくり休んだ。

「竹刀君、風呂覗かないでね」
「僕らが見張ってるよ」

僕と葉阿戸は風呂への道の前に座ってトランプを始める。

「俺、はーちゃんといちなら裸見られてもいいわ」
「下半身裸なら見せつけてんだろ、裸と大して変わんないし、あんたの裸なんて誰も見たくねえよ」

僕はけんかを売ってくる竹刀に正論パンチを食らわせた。

「はーちゃんどう思う?」
「竹刀君が悪い」
「いちー! どう思う!?」
「竹刀君が悪い!」
「あんたが悪いって!」

僕は悪い笑みをこぼした。

「くっそー! バーカバーカ! お前の母ちゃんでべそ!」
「小学生かよ」

僕の言葉に竹刀は顔を赤くして部屋から出ていった。
0時まで起きていたが竹刀は帰ってこなかった。そういうわけで僕も眠りについた。
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