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第2部 皇女姉君編
040 マルチナ皇女の解放
しおりを挟む【39日目 午後11時頃 シリトン市街地】
サーラ三姉妹と合流した亜神アリス以下アリス軍団。サーラ姉妹が宿屋「高目」の三階スイートに泊まれるようにベッドを3つ運び込んでもらった。
マイホームの拡張については直径6mの球状異空間を2つ追加で作成できていた。
このうちの1つをサーラ姉妹専用居住区とするための改造を急いで実施した。そして低反発ウレタンフォームを使った寝具と洗面道具を作成。下着とかタオル類は予備品を渡して使ってもらう。
夜に寝る時はマイホームに入るようににしているのです。たとえ高級宿屋とはいえども絶対安全とは言えないからね。
もとのマイホーム第1層とサーラ姉妹居住区の第2層が接続していて行き来できるようになっている。トイレ洗面所はそれぞれ設置されているので余裕です。第3の球状異空間もあるけどいずれ活用することにする。
換気用の開口部は開けていない。空気清浄用神器「イース大気」を複数作成して設置したから。
物質創造「イース大気」はイースの大気を既存のマイホーム内の空気と入れ替えで創り出す。いったん稼働させれば神力の負担がほとんどゼロで放置していても稼働し続ける。この神技を障壁で固定したものが空気清浄用神器なのだ。
マイホーム開口部を直径5cmほど開けておいて偽装用障壁で隠蔽。念話と動物調教そして神託が繋がるようにしてキアラさんが動物調教で屋外にデザートオウル4羽。屋内にネズミ4匹を配置して一晩中警戒させている。宿屋二階で寝ているフィリッポ曹長以下4名の安全のためである。
「調教した動物達には何かあったら報告しなさい」と指示してあるんだけど割とどうでも良いことで起こされるらしい。
高級宿屋「高目」三階スイートの寝室で眠りにつくアリス達。とはいえ全員がマイホームの中に入って寝ているから全く人気は無いのであった。
【50日目 午前9時頃 シリトン市街地】
サーラ三姉妹と合流してから11日が経った。合流の翌日からシリトンの演習場を使わせてもらってサーラさん姉妹とフィリッポ曹長のチームの魔術の確認と訓練をしている。
この演習場にはキアラさんの調教が効いているプレーリードックとロードランナーがまだ大量に居るしカラス飛行隊とデザートオウル夜間飛行隊に召集かければ昼夜の空中警戒監視も十分だから都合が良かったのだ。
訓練のやり方は演習場に行って最初にマイホーム開口部を展開。各々好きに魔術を試したり遊んだり昼寝したりといった様子。かなりフリーダムな10日間だった。
結局、球状異空間の3つ目をフィリッポ曹長達に充てがった。ただし。女性側の居住区とは接続しないで独立フィリッポホームとして常時開口部開放。隠蔽用障壁一枚で運用してもらう。男女の区別はしっかりとしておきます。これでキアラさんの夜間警戒の手間が省けた。
エミリーさんとラウラさんの「巫女」という称号はちょっと特殊で称号を持つ人のステータスに幾つかの条件がつくものだった。
一つ目。「攻撃魔法を習得出来なくなる」睡眠など状態異常付与攻撃は可能。
二つ目。「神楽」という魔法がついてきた。これは神域から複写可能な魔法には含まれておらず今回初めて見た魔法だけど名前を見た瞬間に魔法の概要がわかる。神様知識のお陰だね。
「神楽」は魔力の負担なしに自分または他者の魔力を完全回復するというもの。ただし24時間のクールタイムがある。
また、巫女が全魔力を費やす事によって神託で繋がった状態の神を降臨させられる。つまり瞬間移動である。これもクールタイムは24時間。
だから私は神託が繋がりさえすればエミリーさんやラウラさんの所に瞬間移動できるということになる。
ファンタジーA型標準宇宙の仕様においていわゆる職業的なステータス制限・優遇というのがあったんだね。
巫女の「攻撃魔法が使えない」というペナルティは大きいけど魔力回復と限定的瞬間移動は有用である。神様が欲しがるのも分かる。
あと、なんとなく感じているのは使徒と巫女は一つの宇宙に対して合わせて10人程度が限界だろうということ。
既に5人を任命したのであと半分である。
使徒に任命した人の効果はいまいち分からない。何かあるのだろう。いずれ分かるはず。多分。
私は訓練にはあまり参加せずにマイホームの整備や神器の作成をしていた。といっても半分以上の時間は昼寝したりカウチでゴロゴロしてお菓子を食べたり駄弁ったり。ボードゲームで遊んだり。
エミリーさんラウラさんからアースの食べ物を食べたいとお願いされるのでドンドン作りましたよ。
ハンバーガーをはじめとしてお好み焼き、たこ焼き、たい焼き、ラーメン各種、カレーライス、うどん、お菓子やスイーツ各種。
そうそう。私が好きだった「武蔵野肉汁うどん」
久しぶりに食べたら超美味しかったた。みんなも美味しいって言ってくれたよ。埼玉県は日照時間が長いから昔から小麦の生産が盛んでご当地うどんが色々あって楽しい。
食べ物ばっかりで神力を使ったわけじゃなくてサーラ姉妹用戦闘用軍装や普段着、ブーツ、日用生活品など。フィリッポ曹長達の分もね。
神力節約のため使えるものは南部方面軍に準備してもらった。食器とかカラトリーとかお酒とか。
あと凄く気になる身体強化魔術があってどうしようか考えた結果。グレタさんとサーラさんに聞いてみることにした。
マイホームのカウチでお茶を飲んでいるグレタさんとサーラさんに声をかける。
「グレタさんサーラさんちょっと良いですか。お話あるんですけど」
「はいはい。良いですよ?なんですか♪」
サーラさん機嫌良さそう。
「はいアリス様なんでしょうか」
グレタさんは平常運転。では話しますか。
「実はね。私が転写可能な魔術の中に『老化緩和5』というのがあるのです」
「!!!!!!」
二人は驚きのあまり絶句している。こんなにビックリしている人の顔って初めて見たかもしれない。
「これは老化速度を概ね32倍に引き伸ばすというか、生存可能期間を32倍にして伸びた分は現状の年齢に固定するというものです」
「!!!!!!」
驚きによる二人のフリーズは継続している。しかし二人の瞳にはキラキラとした光が宿っていた。
「例えば私が100歳まで生きる基礎的な生命力があったとします。すると。老化緩和5を使うと生存可能期間が3200年となります。
今私が老化緩和5を使うと身体年齢15歳が3100年続きます。その後に普通に老いていく。分かります?」
「それは、グレタが使えば35歳が3100年間固定されてその後普通に老いていく。合ってます?」
グレタさんが食い気味に確認する。
「うん。合ってる」
私は大きく頷く。
「おおお、それは素晴らしいのですが。使徒としてそして亜神アリス様と行動を共にする上でどう評価されるのでしょうか?」
「うん。あたしもそれを聞きたい」
「私のことを言うと私は殺されない限り無限に生きていけます。その方法は定期的に依り代を若返らせるか交換する、です。
私は後1年経つと。いや。あと11ヶ月経つと物質創造、生命体干渉、精神構造干渉と神域干渉によって生命体の創造と若返りをすることができるようになるのです。
この生命体の創造というのが分身を作るって事ですよ。
もちろん使徒や巫女の皆さんも若返り可能ですよ?
だからこの老化緩和という魔術はあっても無くても良いのかなと思っていたのです。問題はこの11ヶ月の間ですね。
この11ヶ月間を現状維持するか普通に歳をー」
「老化緩和ください!!」
「アリス様? いま35歳の私は1日1日が既に老化と衰えの日々なのです。
アリス様とお会いして既に一か月。この様な価値ある魔術を教えていただいていれば。少しでも若々しい第1使徒としてお仕え出来ましたのに。
今すぐ頂戴したいと存じます。是非是非」
「私もたったこの11ヶ月間とは言え、アリス様との外見年齢の差を少なくしたいな~お願い。あたしにも頂戴?」
「うん、分かったよ。二人にあげるよ。えーと
エイ! 2人に転写 老化緩和5!」
「緩和5は一回起動させてね。起動させると効果が有効になるから。はい。これで身体年齢は固定されました」
名前 グレタ・アルタムラ
種族 人(女性)
年齢 35(身体年齢35)体力G魔力F
魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5
闇弾5回復5ステータス5
暗視5遠視5隠密5浄化5結界5
探知5魔法防御5念話5飛行5
睡眠5神託5
身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5
睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5
反応速度5防御5老化緩和5
称号 マルチナの侍女頭
亜神(時空)アリスの第1使徒
亜神アリス軍団少佐
名前 サーラ・ビアンコ
種族 人(女性)
年齢 21(身体年齢21)体力G魔力F
魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5
闇弾5回復5睡眠5ステータス5
暗視5遠視5隠密5浄化5結界5
探知5魔法防御5念話5飛行5
神託5
身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5
睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5
反応速度5防御5老化緩和5
称号 ビアンコ男爵家長女
ジェダイト公国軍中尉
亜神(時空)アリスの第3使徒
亜神アリス軍団中尉
亜神アリス軍団士官候補生指導官
「りょーかい。起動させたよ。へえ、ステータスの年齢表記も変わるんだね。身体年齢かあ。なるほどね」
「これで35歳固定ですね。しかし若返りですか。11ヶ月後には25歳位でお願いしましょうかね。いずれキアラは20歳位で固定すれば若作りの母でギリギリ通りそうですし」
「じゃあたしは20歳にしてもらって、アリス様と同じ年齢で固定してもらって良いですか?」
「分かったよ。私は大体20歳位で固定しようと思っているから。何歳で固定するかはみんなに任せるからそれぞれで決めてね。
? おっと、神託だ。カルロネ司祭(邪)だ」
……アリス様 カルロネ司祭でございます
……アリスである どうした
……マルチナ皇女の事に御座います
皇女及び使節団全員の帝都帰還が決定致しました 5日後に公都を出発してシリトンへ 然る後に 帝都へと向かう予定
公都ーシリトンは10日 シリトンー帝都は30日間の移動を見込んでおります
……それと弟子の件手配整いまして何時でお迎え出来ます
……わかった 取り敢えず演習場に来い
……承知致しました……神託終了……
私はグレタさんに向き直る。
「グレタさん。みんなを集めてくれる? マルチナさんが解放される」
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