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アイテム整理
しおりを挟む放課後の部室はいつもにぎやか。
特に探索の翌日なんかは。
「せんぱーい、次のアイテム名おねがいしまーす」
手元のキーボードを軽く叩きながら、クレアが訊いてきた。
「ああ、はいはい。ちょっと待って。いま整理してるから。えっと、確か『妖精の角笛』ドロップしたよね。あれ、どこいったかな」
部室の中央にデンと置かれた長机には探索でドロップしたアイテムが所狭しと並べられていて、僕はその中から目的のアイテムを探す。
「んー、ないなぁ。まず、ポーションが4つでしょ、気つけ薬は3つで、毒消しも3、聖水1……あれ? 聖水は2つだったような。ああもう、なんでこんなにゴチャゴチャしてるんだ……」
「あらあら、創介。ドロップアイテムはちゃんと整理整頓しときなさいって、いつも言ってるでしょー?」
「それをいまやってるんですってば。というか部長、そう思うなら手伝ってくれません……?」
「手伝ってるじゃない。武器と防具のほう、もう仕分け終わったし」
「へ?」
部長の方を見ると、確かに昨日入手した武器と防具がきれいにずらりと並べられている。
片手剣、両手剣、槌に斧、鎖帷子、ガントレット……うん、ちゃんとしっかり整理されてる。完璧だ。
「ん? ……あっ。まさかあんた、私がサボってると思ってたんじゃないでしょうね?」
「いや、そうじゃなくてですね。完璧に揃えてあるから凄いなって思ったんです」
「言っときますけどサボってないからね、私だってやるべきことはちゃんと――って、え?」
「さすが部長です。僕もがんばらなきゃ」
「え、え? いや、あの、その……むぅ……」
「? どうしました?」
「ど、どうもしない」
「本当ですか? あ、部長、少し顔が赤いような。もしかして風邪でも……?」
「!? ち、ちがう、これはちがうわ!!」
「部長?」
「~~~っ!! あああもう!!!」
と、部長が突然、僕の背中にしがみつくように乗っかってきた。
「……っ!? ぶ、部長? いきなりどうしたんです?」
「あああ! いまこっち見るな! 顔見るな! くそう!」
「ええ? ほんとどうしちゃったんですか部長!」
「だから! ど、どうもしないっての! ああもう、だから、こっち見るなって言ってるでしょ!」
「だ、だって、そう言われても!」
そうやってギャーギャーと騒ぐ僕たち二人の様子を、ソファーに座って眺めているツインテールを視界の隅に捉え、僕は懇願の声を上げる。
「こ、こよみ先輩っ! 助けてください! 部長の様子がおかしいんです!!」
「……ううん、創介くん。エマちゃんはどこもおかしくないよ」
「えっ? そ、それってどういう――」
「こ、こよみーー! 余計なこと言うなぁ!」
「う、うわ!? 部長、暴れないで!」
「なかよし……、いいこと」
く、だ、だめだ、こよみ先輩はアテにならない!
というか、なんのことを言っているのかさっぱりだ!
「あーあー、もー、すぐそうやってじゃれあうんだから先輩たちはー」
パソコンの前で頬杖をついてプクッと頬を膨らませたクレアが、こっちを見ながら言った。
いやいや、じゃれあってるんじゃなくて!
「クレアー! 助けて! お願いだから!」
「ふん、おしごと中に他の女とイチャイチャし始める先輩なんか知りませーん」
「い、イチャイチャってどういう! クレア! 部長を落ち着かせてくれってばーーっ!」
「そ、創介め……不意打ちなんてしやがってぇ……」
「ふ、不意打ち? どういう意味ですか、部長!」
「う、うるさい! 知るか! 自分の胸にきけ!」
――と。そこに。
ガララッ。
「お疲れさまです! 日直で遅れまし、た……って、え? ふ、二人ともどうしたんです?」
「!!! あ、アイリっ! よ、よかった! 部長の様子が突然おかしくなってさ! ちょっと落ち着かせて――」
「だからこっちを見るなってば!!」
「み、見てませんてばー!」
「ええ? さっぱり状況がわからないんですけど……?」
結局アイリでも騒動をおさめることは出来ず、春ちゃん先生が部室にやって来るまでドタバタは続くのだった。
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