孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ

文字の大きさ
5 / 47

4話 夜の森

しおりを挟む

 初めての狩を見事に成功させてから数日…。

 俺は、今日も【隠密】を発動させていた。

 あれは、たまたまに過ぎない。

 正直、この前と同じ事を、もう1度やれと言われても、出来るか分からん。

 ならば!

 俺は1番使えそうな【隠密】を徹底的に鍛える事にした。

 スキルを鍛えるには、親猫いわく…使えば使うほど、狩に役に立つらしい。

 そこは、魔法と同じなんだな…と理解した。

 しかし…。

 今の俺のステータスがどうなっているんだ?

 そればかり気になってしまう。

 人間の街に行き、教会にある水晶に触れれば…自分のステータスが表示される。

 隠密の熟練度が上がれば…忍び込むのもいいかもしれないな。

 うむ、そうしよう。


 それにしても…。

 親猫は遅いな…。いったい何をしているんだ?

 いつもなら、もうすぐ帰ってきてもいい頃だと思うんだが…。

 まぁ、寝て起きれば、帰ってきていることだろう。

 俺は丸くなり、眠りについた。


 €€€€€


 …おかしい。

 親猫が夜になっても帰ってきてない。

 洞窟から顔を出し、キョロキョロと、親猫の姿を探すが…見当たらない。

 いったいどこで何をしている?

 親猫がいない中…初めて外に出るが、心配だ。

 今の俺は【隠密】の熟練度はさほど高くない。

 眠る以外、【隠密】を使っているのもあり…多少は熟練度も上がったと思うが、それでも不安は残る。

 だが…。

 このまま、何もせずに親猫の帰りを待つだけなど、俺には出来ない。

 種族は違えど、親猫は俺が求めた温もりを与えてくれた。

 まだ親猫に、何も返せていない。

 かつて英雄と言われた男が、ただ黙って親の帰りを待つなど、とんだ笑い者だろう。

 そして、何より…そんなの俺のプライドが許さない!

 待っていろ親猫よ!!

 俺がお前を見つけ出し、危機的状況ならば助け出してみせようではないか!!

 いざ行かん!!

 そして、俺は【隠密】を使って夜の森へと入り込んだ。



 €€€€€


 ふむ…。いないな。

 いったいどこにいるんだ?

 俺は森に入ってから、20分が過ぎようとしていた。

 夜行性の魔物も、徘徊していた。

 その魔物どもは、明らかに俺よりも強いのは分かった。

 流石に、巨体には勝てん。

 もう少し、成長すれば分からんがな。

 魔物が通るたび…俺は隠れてやり過ごした。

 今は、親猫を見つけるのが最優先だ。

 勝てそうな相手に、出くわしたとしても…今は無視するのが得策だろう。


 ふぅ…よし、行ったか。

 俺は、通り過ぎた魔物が、視界から消えた事を確認し…走った。

 すると…見覚えのある足跡を見つけた。

 親猫のだ。それも、新しい。

 冒険者だった経験も役には立つな。

 そんな事を思いながら、足跡を追うと…。

 少し開けた場所にたどり着いた。

 そして…1本の木が眼に入った。

 いる…。眼には映らないが間違いなくそこにいる。

 親猫だ。

 そして、何故、親猫が帰ってこれなかったのかも分かった。

 その木の下には、狼の魔物が8匹眠っていた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

処理中です...