孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ

文字の大きさ
7 / 47

6話 完全勝利

しおりを挟む

 シュン…と音を立て、地面に着地する。

 視界には、親猫の喉を食い破ろうとしている、一回り大きい魔狼の姿が…。

 「にやぁぁああ!!(させるかぁぁ!! このクソ狼どもがぁぁああ!!)」

 空間魔法レベル3 次元斬り!!

 爪を縦に振るうと、魔狼は真っ二つになり崩れ落ちた。

 「キャンキャン!」

 恐らくボスだったのだろう…。

 ボスを無くした、残り3匹の魔狼は逃げ出した。

 逃すと思っているのか? 俺達の命を狙ったんだ、なら…当然、お前らも死ぬ覚悟があるんだよな?

 空間魔法レベル3 次元斬り!

 爪を横に振るい、残りの魔狼を殺した。

 大丈夫か? 親猫よ。

 俺は、ゆっくりと親猫に近づく。

 親猫は、俺が戦っている時、じっ…と俺を見ていた気がした。

 眼の前で止まると、俺は親猫の姿を見た。

 ふむ…どこも怪我はしていないようだな。

 正直、自分を犠牲にしてまで、助ける何て俺は許さんからな。

 ペシペシと、俺は怒っている! と地面を前足で叩く。

 その姿は、とても可愛いらしいものだった…。

 思わず、足を止めてしまうぐらいに。

 「にゃあん」

 む? どうした親猫よ。

 ええい! そんなに前足を顔に押し付けるのではない!

 土の匂いがするわ!

 ザラリ…ザラリ…。

 それは嫌いじゃない。気が済むまで、なめるといい。

 満足したのか、なめるのを止め、魔狼の屍に近づき…何かを取り出すように見えた。

 いったい何をしているんだ…?

 親猫は、何かを咥えて戻ってくると…俺の前にポトリと落とした。

 これは…魔石だな。

 魔物に、必ず存在する、もう1つの心臓だな。

 「にゃあ」

 何? 食えだと? 魔石をか?

 しかし…。

 俺は人間だった頃に、魔石を食うと…死ぬと言われていた。

 不純物が多いからだ。

 1度魔石を砕き、加工してから魔道具の燃料として使われていたが…。

 「にゃあ」

 やめろ、押し付けるな!

 食えばいいんだろ!

 信じてるからな親猫よ!

 「にゃ、にゃあ…(で、では…)」

 パクリ…。

 ガリガリ…ゴクン。

 味が薄くて対して上手くないな…ん? 魔力が少しだけ増えた?

 「にゃあ」

 何? 魔石を食うと魔力が増える?

 何故それを、もっと早く言わない。

 無駄に警戒してしまったではないか。

 全く…。だが…魔力が増えるのは大歓迎だ! 空間魔法は燃費が悪いからな!

 確か、レベル3の次元斬りを放つのに、1500程の魔力が消費するからな。

 「にゃあ」

 何…? 親猫よ…それは本気か?

 いくら何でもは早いのではないか?

 生まれて1ヶ月ぐらいだぞ!?

 「にゃあ」

 お前には、もうそれだけの力はあるだと…?

 確かにそうかもしれないが…。

 せっかく温もりを与えてくれる、者に出会ったというのに、直ぐにお別れなど…正直、気が進まんな。

 「にゃあ」

 野生の掟…か…。仕方ない…。

 だが…。俺がいない間に、死なれて困る故に!

 親猫には、安全な場所にいて貰うぞ!!

 空間魔法レベル7 箱庭!!

 大量の魔力を消費して、空間に丸く黒い渦が開いた。

 「にゃあ(ほら、親猫よ。そこに入れ)」

 「にゃあ」

 親猫は、何の躊躇もなく…黒い渦に入っていった。

 少しは疑えよ…親猫よ。

 俺も親猫に続いて…箱庭に入った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...