孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ

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7話 箱庭

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 黒い渦の中に入ると…木で出来た家と、草原が広がっていた。

 空は青く、白い雲がいくつも流れていた。

 どうなっているんだ!?

 俺が人間だった頃の、箱庭は家だけだったぞ!?

 「にゃあ」

 ペシペシ…と前足を叩き、顔を覗く親猫がいた。

 ここはどこかだと?

 箱庭って言う魔法だよ。

 と…「にゃあ」と返すと、親猫も「にゃあ」と返す。

 返ってきたのは、「そうか」の一言だけ。

 ずいぶん、親猫は淡白な反応だよな。

 別にいいけど。

 しかし…。

 俺は、草の上で丸くなっている、親猫を置いて…歩き出した。

 草は本物。上を見上げれば、青い空に鳥もいる。

 生き物もいるのかよ…。

 それなら、親猫にずっとここにいてもらうのもいいかもな…。

 まぁ、俺が一緒にいられればいいんだが、独り立ちをしろ。と…言われた以上それも無理か。

 自然とため息を吐く。

 心なしか、寂しいと思ってしまっているんだよな…。

 これも、まだ体が幼い事も関係しているのやもしれん。

 む? ここには川もあるのか!?

 しかも、美味そうな魚が泳いでいる。

 これなら、食料に困る事はなさそうだな!

 ……何故だ。

 泳いでいる、魚から眼が離せん!

 クッ! これも猫に生まれたからか!

 「にゃぁああ!(もらったぁああ!)」

 バッシャーン!

 む!? 逃したか!!

 次こそは!!

 バッシャーん!

 まだまだ!!

 バッシャーン!

 うおおおおお……


 €€€€€


 俺はいったい何をしているんだろう…。

 足下に転がる、身がぷりっとした魚が3本を見て、青い空を見つける。

 …帰るか。

 この日、俺は猫の本能には勝てないと、身を持って思い知った。


 …さて、飯の準備をするとしようか。

 大きめな葉で包み、ツタで縛り…引きずって運んだ魚の調理だ。

 もちろん、身が傷つかないように、引きずる所は、厚めに葉を巻いておいた。

 恐らく、今日の飯を食ったら、暫く会う事は出来ないだろう…。

 なら、美味い飯を作って、たまに俺の飯を食いたい! と思わせるぐらいの魚料理を作ってやる!!

 幼い体を舐めるな!! どうやら俺が思っている以上に…誰かに甘えたいみたいなんだよ!!

 それも、信用できる奴からだ!

 にゃあにゃあ言いながら…空間魔法レベル5 召喚(小)を使う。

 すると…人間だった時、いつも使っていた調味料が何もない所から、手の平サイズの2つの瓶と、小さな木箱が目の前に落ちる。

 人間だった時は、片手で受け止められたが…猫の今、両手を使って受け止める事しか出来ない!

 クッ!

 受け止める事が出来なかった、瓶と木箱が草の上に落ちる。

 …受け止める必要無かったな。

 俺は、気持ちを切り替えて、魚に巻いていた葉を取り…1つ1つ内臓取り…川の水で洗っていく。

 洗い終わると…。魚2本に1つの瓶に入っていた、塩をこねこねと、よく染み込ませる。

 後、2つの調味料に眼を向ける。

 もう1つの瓶には、黒い液体が入っており…舐めると、かなり、しょっぱい。

 もう1つの、小さな木箱には、初めて見た時は凄く驚いた。

 あれだ…ウ◯コだ。

 俺はそう思った。

 だが…俺は、調味料を願って召喚したのだ、ならこれは、そうゆう事だろう。

 あの時の俺は、勇気を振り絞り…指に付け舐めた。

 それは、しっとりとした味わいで、スープにすると…とても美味かった。

 今回は、その茶色い調味料を、最後の魚に付ける。

 そして…味付けした魚を、焼く。

 それだけだ。

 火を起こすには、火の魔石を使う。

 これは、砕くと火が出る魔石だ。

 これで、木を集めた所に、置き…砕く。

 すると…火がパチパチと音を立てて、燃えた。

 その次に、その側に…木の枝を刺した魚を地面に突き刺す。

 完璧だ。

 さて、後は焼ける前に親猫をーーー

 って、親猫よ…いつの間に後ろにいたのだ。

 背後をとるのは止めてくれ。

 「にゃあ」

 これか? これは飯だ。

 焼いた飯は初めてだろう…。

 特と味わうのだな!

 待て待て待て! まだ食うな! まだ完全に焼けていない!!

 俺は今にも、魚を食おうとした親猫の体を引っ張り…必死に止めた。

 その後、焼いた魚を食べた親猫から、5日に1回会いにくる許可をもらったのだった…。
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