孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ

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33話 罠?

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 ネロが汚物と化して暫く…。

 エルフが、なんでも浄化効果のあるという植物をネロに渡し…綺麗になった事で探索を再開し順調に進み、そろそろ10階層に続く階段が見えてきた。

 ここまでのネロの活躍は、悪くない物だった。

 身体強化したネロは、相手に気づかれない速度で近づき…棍棒で叩き潰す。

 完全な脳筋な戦い方だ。

 だが…肉片や血を浴びたのが、よっぽど嫌だったのか、攻撃したら直ぐにバックステップするようになった。

 手加減を覚えさせないと駄目だな。

 肉片を飛び散らすネロを見ながら、俺はそんな事を思っていた。

 「いや~楽ちん楽ちん。このままネロちゃんに任せちゃおうよ」

 エルフは腕を首の後ろに回しながら、そんな事を言っていた。

 「本来なら私とパン2人でダンジョンに行くはずだったのだがな…」

 少しだけ、残念そうな雰囲気を出しながら前を歩くアリーに、聞きたかった事を聞いてみた。

 (そういえば、このダンジョンは何階層まであるんだ?)

 「ん~そうだねぇ、このダンジョンは中規模だから…だいたい30~40階層ぐらいまでかな?」

 (ん? このダンジョンは攻略されていないのか?)

 「そうそう。アリーさんもいるし、ついでにお願いしちゃおうかな~? って思ったんだ…それに、君もいるしね」

 そう言って、エルフは片目をパチリと閉じた。

 何か腹が立つな。

 「ほう…ついで…か。確かお前はパンと一緒に出歩くのに、このダンジョンを勧めてきたのではなかったか?」

 ふと、エルフの顔を覗くと…『あっ…忘れてた』と顔に書いてあった。

 「あはははは…は…」

 俺はエルフがボコボコにされているのを、横目に10階層に下りる為の階段の側までやってきた。

 (おい、遊んでないで早く下りるぞ)

 「そうだな。おい、何寝ている。早く起きろ」

 「り…理不尽」

 「行くにゃー!」

 ネロだけ片手を腕を上げ…俺達は10階層に続く階段を下っていった。

 暫く階段を下ると、次に細い道が続いていた。

 更に進むと、金属で出来たであろう大きな扉が眼に入った。

 扉の前は広い空間が出来ており、まるで『ここで休んで下さい』と言っているようだ。

 …罠だな。

 何故、侵入者たる俺達に休む場を与える? 普通に考えれば誰でも分かる。

 休む場所は見つけるのではなく作るものだ。

 「セーフティエリアが見えてきた。ここで少し休憩しよ?」

 (は?)

 何を言ってるんだこの

 「どうしたんだい? そんな間抜けな声を出して」

 「(あ?)」

 「ヒィ!」

 エルフの言い方に腹が立ち、少しばかり魔力が漏れ、エルフを威圧してしまった。

 それに、俺に失礼な事を言ったせいか…ネロの頬を膨らませていた。

 てか、威圧したのは俺だけだったか? アリーの声も聞こえたよな気がするが

 俺は震えるエルフを見て、ため息をつき…口を開いた。


 (お前さっき、こんな見えすいた罠の場所で休憩すると言ったな?)

 「え? 罠?」

 「ああ、パンはダンジョンが初めてだったな」

 納得がいったように、アリーは頷き…俺の足の間に手を通し持ち上げた。

 おい…

 「ダンジョンには、必ず階層ボスの前にセーフティエリアが存在する。そこでは魔物が現れたという話は聞いた事がない」

 意味が分からん。

 てか、自然に頭を撫でるな!

 (はぁ…ダンジョンが俺達を殺しにきている事は、ここまでの道中で分かった)

 なのに…なのにだ!

 (何故、殺しにきているダンジョンが安全な場所を作ったりする!?)

 「分からん」

 「パン君…そうゆう物なんだと理解した方が楽だよ?」

 「????にゃ???」

 エルフの遠い眼を見て、俺は考える事を止めた。
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