姫争奪戦〜現世で姫を射止めるのは誰だ〜

春 蓬

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1章最終話 成長

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昨日は結局、誠に謝っていない
そもそも 誠が悪いのだから謝る必要はない  …と、思う。
あー どうしてあんな事言ってしまったの私?
誠じゃなくても怒るに決まってる…

『志知、聞いてる?』
音羽が私の顔を覗き込んだ

今朝も2組の教室で、音羽と結待ち。
私は誠を怒らせた事を悩んでいるのに…
『ごめん、ちょっと聞いてなかった』
『んーもう!あのね、誠君と昨日メールしたのっ それでねそれでね…』
音羽は誠とメールのやり取りをしてるらしく、ずっとその話…

こんなに喜んでいるからなぁ…
音羽のためにも、皆んなと出掛ける前に誠の機嫌取らなきゃ…
やっぱり謝った方が良いのか?

『音羽、良かったね。誠とメール出来て』
『うん!良かった♡ でねでね、子猫の写メも来てね…』
ふふ…終わりそうにないな、誠の話。

『お待たせ!』
音羽の話を聞いているうちに結が戻ってきた
『お疲れ様。朝の業務も終わりだね』
本当は演奏練習だったけどね
『うん、ありがとう。音羽も昨日と今日ありがとうね!』
『全然!役に立てたなら嬉しいし、誠君と連絡先の交換出来たし…えへへ』
音羽は嬉しそうに言った
『それなら良かった♡』
結も嬉しそうに音羽に微笑んだ

『あ、私3組戻るね!…いよいよだね学祭。私、今までで1番楽しみな学祭なんだ…一緒に楽しもうね!』
『そうだね、楽しもうね!カフェの仕事も頑張ってね』
結が音羽の肩を叩いて言った
『うん、頑張る!2人も演劇頑張ってね。じゃあ行くね!』
そう言うと音羽は2組の教室を出て行った
『さ!志知、私達も用意しよう!』
『うん、頑張るぞぉ!』


そう言って
朝は音羽のおかげで、やる気満々だったが…
誠の怒った声を思い出して、パワーダウン…

『志知、お腹でも痛いの?』
丸まって座り込んでる私に、結が声をかけてきた
『んーいや。考え事してた』
顔を上げて結を見た
『そっか。大丈夫なら良いけど…』
心配そうに私を見つめる結は、クシナダヒメの衣装を着て立っていた

今は体育館で劇のリハーサル中。
演劇部の先生に指導されながら、ステージ練習をしている
結は劇の中盤から出番が多いし、私は最終幕まで裏方の仕事があったので…リハーサル中に話すのは初めてだ

しかし これが最初で最後のステージ練習…
遂に日曜日は本番だ。
誠の事で悩んでいる場合ではない…

岸田君がやっと登校して来て、今日のリハーサルに間に合った
何日も休んでいたのに演技に支障は感じない…むしろ迫力が増したかも。
少しは私も見習わないと…

しかし私の周りには “天は二物を与えた” って人が多いな

『また考え事?あんまり抱えないでよ、貧血の検査もしてないんだし…また倒れたら嫌だよ』
あ…結と話しているのに、また考え事してた…
しかし結は、私が倒れてから心配性になったな

『うん。大丈夫だよ、ありがとう』
私は結に笑顔で答えた
『雪弥も心配するからね、何かあるなら相談してね。とにかく無理しない様に!あっ、志知もそろそろ着替えた方がいいよ?裏方の仕事まだあるの?』
『ううん、そっちはもう大丈夫。ありがとう、着替えて来るね!』
結に言われて、ステージ横の衣装室に急いだ

「雪弥も心配するからね」なんて言われて何だか照れた
結の中では私と雪弥は恋人同士?
や…益々照れる

衣装室に入ると、係の人が衣装を渡してくれた
それを持って、男子と女子に分かれたカーテンの奥で着替える
さすが、芸能にも携わってる学校だけあってステージ周りの設備も揃ってるし、とにかく広くてびっくりだ

色々驚きながらも着替えはじめて…
だんだん緊張が高まってきた

セリフ間違えないかな…こんなに広いステージで立ち位置大丈夫かな…

教室でやってた練習とは違って、ステージがあるだけでこんなにも緊張するなんて…

衣装はTシャツと短パンの上から被って着るワンピースみたいな物なので着替えはすぐ終わった

着替えから出てくると、岸田君が衣装係の人達と話していた

最終幕の前半で私が出た後、すぐにオロチとスサノオが戦うシーンだから?
岸田君はオロチの主体となる役だし、何か衣装の事で打ち合わせしてるのかな?

奥から出てきた私に気付き、岸田君が近付いてきた
『長瀬さん素敵だね… そ、その衣装…似合ってるよ』
『そ、そうかな?照れるなぁ…ありがとう。』
こんな事言う人なんだ?

『うん…とっても。あ…僕、長瀬さんに最終幕の姫役を任せておいて、休んでたから何も力になれなかったね…ごめん。』
え? そこ気にしてたなんて…

『そんなそんな…具合悪かったんだから仕方ないよ。もう体調は大丈夫なの?』
聞いた後で失敗

すこぶる体調の良さそうな人に「大丈夫なの」なんて聞いてしまった…
体調良いから学校に来たのだろうし?
そもそも岸田君は、弓道部だから見た目も華奢ではない
学校を休んだのも今回が初めてらしい
聞くなら「風邪だったの?」とかだった…

『えっ?…うん。大丈夫… 次、出番だね?長瀬さんのクシナダヒメ初めて見るから楽しみにしてるね!』
それはプレッシャーだ…

『う、うん…頑張りまぁす。』


衣装室から出ると、結がパタパタと走って来た。出番が終わったから着替えに入るのだろうか?
ステージ裏からも着替える所に入れるのに…

『お!クシナダヒメ。最終幕、頑張ってね!』
あなたもクシナダヒメです

この感じだと緊張しなかったんだな…
羨ましいよ

『う…うう。うん…。頑張るけど緊張するよぉ』
結の腕をつかみ、足止めさせる私…
『なーに言ってるの!本番じゃないんだよ?わざわざステージから降りて、志知の顔見に来たんだぞ、頑張れ!』

そうだったの? 優しいな結…

『うう…』
わかってはいるけど…緊張でドキドキする

『志知!』
私がモジモジしてると、ステージの上から雪弥が呼んだ
黒髪を高い位置で1本に結び、黒と紫の衣装を着た勇敢なスサノオの姿…

『なに?』
ステージの下まで近付いて聞いた
『緊張してる?』
『…してる。』
優しげな話し方に甘えたくなる…
『俺がいるから大丈夫!早く上がっておいで、一緒に頑張ろう』

本当、雪弥は…
やはり兄の様な存在なのは変わらない

『うん。ありがとう…』
雪弥の顔を見てるのが照れくさくて、下を向いて答えた

『志知、イチャつくのは後にして早くステージ上がりなさい!』
結が大きい声で言った
『ゆ、結!』
恥ずかしくなって、結を怒ろうとしたけど…
他の人達からも冷やかしの声や口笛が聞こえてきたので、ステージ横の衣装室とは反対側から裏に急いで隠れた。

ただでさえドキドキするのに…
結のバカ

この後、ステージに上がって最終幕のリハーサルが始まった
演劇部の先生は怖かったけど、意外とスムーズにやり遂げれた。
逆に緊張が解れたのかも?
だけど…
いつもの練習の時より、雪弥の胸に寄り添う演技に気持ちが入った…


リハーサルを終えて、ステージの上を片付けて本番に備えた
着替えてから、クラスの皆んなと衣装室やステージ裏を使いやすく整理もした
明日は軽音部がLIVEでステージを使うから、邪魔にならない様に配慮して…。

『やる事多くて疲れたね、あの荷物ぜーんぶ来週片付けるのだよ?キツーっ』
結の声が皆んなに聞こえて、同級生達はため息をついた

『剣崎さん、これから楽しい学祭が待ってるのにテンション下げないでよ…』
岸田君が結に言った

確かに。

『あはっ、ごめーんね。』
結は軽く流して、私の腕を組んで体育館の出口に向かった

結って岸田君に対して、いつも軽くない?

体育館を出ると玄関が近いせいか、少し肌寒い…
『結、お疲れ様』
体育館の入り口近くに寄り掛かっていた村上爽が声をかけてきた

えっ!?学校に来てたの?

右足首辺りにギブスをして松葉杖を持っている…
『村上!?』
結より先に声が出た

まだ松葉杖じゃん!学校に来て大丈夫なの?

『ありがとう…』
結は驚きもせず、小さい声で答えた

あれ?結、全然驚いていない…

『うん。 あのね結、お見舞い来てくれてありがとう…嬉しかったよ』
眼差しが柔らかく、声も優しい…

なんだ?なんか村上爽がいつもと違う…

『いや…誠の付き合いで行っただけだから。 じゃあ…お大事に。』
結はそう言って軽く頭を下げて、村上爽の前を通り過ぎた

ええっ、それだけ?
結らしくないな…いつもの接近戦とか…
あ、村上爽が怪我してるから?

『ありがとう これからも色々よろしく。』
村上爽に言われて、結は驚いた顔をして振り向いた

なぜ驚いている?
登校して来てる事に驚こうよ…

『村上、いつ…』
結が聞かないから、いつ退院したのか聞こうとした時…
声を上げながら、雪弥と岸田君がこちらに向かって走って来た
『あーーーっ!!』
『うおおーーっ!!』
雪弥なんてスサノオのままだ…

ステージの辺りからここまで、凄い勢いで私達の前に着いた

『村上君!剣崎さんは業務があるから、僕と一緒に戻るから!』
『村上…いやエアリーブルー、話がある!!』
2人が走って来た理由は村上爽?

『岸田君、業務って?』
岸田君に結が聞いた
『あるでしょ?あるのさ!早く行こう!』
岸田君は結の背中を押しながら、急いでその場を離れ様とした
『え、ちょっと岸田君?』
結は戸惑っていたが、そのまま連れて行かれた
村上爽はそんな2人の事は気にしてない感じだ…

でも雪弥には驚いている様だ
目を見開き、姿を直視している…
『エアリーブルー? ああ…テレビ観たんだね』
そう答えると、驚いていた顔は普通に戻り…
村上爽は優しげに微笑んだ

そりゃ…スサノオの姿で迫られたら、誰だって驚くか

『…っ!む、村上君。退院したんだね?』
1度興奮を抑えた様だ

でも…村上爽の姿をマジマジと見詰めている雪弥は、すっかりファンだ。

『うん…昨日ね。 所でエアリーブルーに用があるの?』
薄茶色い髪をかき上げて、相変わらず綺麗な茶色い瞳を雪弥に向けた
くっきりとした二重の吊り目…結いなら悲鳴をあげてるな

『うん…その…なんて言うか…』
雪弥が照れてる?
『まさかナンジャーのサイン欲しいとか?』
話を切り出し難そうな雪弥に村上爽が聞いた
『んん…』
『違う?じゃあエアリーブルーの…ファンだったりする?』
村上爽が少しニヤけて言った…

あ、やっぱりいつもの村上爽?

『い、いや違う…絶対違う!!』
『だってエアリーに話があるんでしょ…?』
また村上爽は優しげに微笑みながら、雪弥に話している…

なんか、さっきから違和感…
あ、村上爽の雰囲気が変わった?

『ん…まずは、この前廊下で絡んで悪かった。それと…足、大丈夫なのか?本調子じゃないなら気を付けてな、あの…あれだ、戦隊の仕事も頑張れよ』
雪弥は自分の鼻を人差し指で探りながら、照れくさそうに言った

『あ、エアリーに対してじゃないんだね?…ありがとう』
村上爽は終始笑顔だ…

雪弥、本当はエアリーブルーの大ファンなのに…サインも欲しいんじゃないの?
意地っ張りだな。

『後さ…廊下での件、あれは俺も悪いからさ… これからは仲良くしようよ?生徒会長の山寺君。』
そう言うと村上爽は、右手を雪弥に差し出した
『えっ!?…よ、よろしく』
雪弥もつられる様に右手を出して、2人は握手をした

やっぱり違和感!
村上爽が握手?
そんな平和的な人だっ…あっ、もしかすると…
自分を変えたいって言ってたから?

『じゃあ、これから軽音の練習あるから…心配してくれてありがとう。またね』
村上爽は雪弥に手を振って、体育館に入って行った

村上爽…私の事1回も見なかった
私に変わる所見て欲しいって、言ってたのにさ…
でも頑張ってるなら良いか

『志知…握手しちゃったよ俺』
『よ、良かったね…?お友達になったのかな?』
『わかんねぇ…』
握手した手を見ながら困惑している雪弥…

私がわからないのは、結の村上爽に対してのよそよそしさ…
何かあったのかな?

『とりあえず教室に戻ろうか』
『そうだね。 岸田君、結連れて行っちゃったね』
話しながら私達は歩き出した

すると目の前の階段から、数人の男子が駆け降りてきた
『お!雪弥!!爽、見なかった?』
そのうちの1人に誠が居た

うわ…ヤバくない?

『今、体育館に入って行ったよ』
『やっぱりか!まだ松葉杖だから1人で動くなって言ってるのにウロチョロしてて参るよ…』

へぇ… 誠は村上爽の事、割と心配してるんだな

『それは心配だな。 でもさっきは杖ついてると言うより、持ってるって感じだったから大丈夫じゃないか?』
誠の心配をよそに素っ気なく言う雪弥

『そうなんだけどな… まっ、教えてくれてサンキュー!!』
誠は雪弥に手を振った
そして私の方を見て…
『ブスダナ姫、バイバイ! くく…』
そう言って、私にも笑いながら手を振った

ブスダナ姫!?

『ウケる!』
『誠、失礼だぞ…クスクス』
誠と一緒に居た人達も笑いながら、走り去った…

『はっ!!あはははは!!』
何がツボなのかわからないが、雪弥も笑い出した
『なにがおかしいのよ!!』
少し怒って私が言うと雪弥は
『ぷっ…いや、ごめん…うまいなぁと思って』
笑いをこらえながら言った

『誠って、いっつも私の事ブスって言うの!!この前もそうだった!今もひどいでしょ?たくさんの人の前で!』
雪弥の手を掴んで、ブンブン振り回して私は怒った
『この前って?』
『この前も、その前も!!』
雪弥の手を振り回し続けた
『別にいーだろ、誠にすれば愛嬌だ』
『愛嬌?雪弥、すぐ誠の味方する!』
私は雪弥の手を離し、階段を駆け上がった

『志知、走るな走るな!』
私を追いかけて、雪弥も駆け上がってきた
そしてすぐ捕まって、肩を組まれた
『危ないな…また倒れたらどうする?』

う…

『でも良かったじゃん?誠、昨日の事全然気にしてなかったな!』

顔が近いのですよ…雪弥

『な?志知!謝らなくて良さそうだ!』

ふぇ…近いって

『なんか言えよ?』
雪弥は更に顔を近付けてきた

もう!鈍感!!

『顔が近いの!恥ずかしいから離れてよ!!』
『えっ……』
雪弥は驚いて、肩から手を離した
『ご…ごめん』
『う、うん。』

「離れてよ!!」…は言い過ぎた

その後は離れて階段を上がり…お互い無言のまま教室に向かった
教室に入る時も無言…

中に入ると、教室に着いてる人達はお弁当を食べる準備をしていた

何も話さないまま雪弥は岸田君達の所へ行った
私も自分の席に着いた

…また?
アップルパイ食べてた時みたく、気不味くなった…

だけど、さっきは雪弥の顔が近かくて恥ずかしかった…
あんな時どうすれば良いのかわからない

『どした志知?お弁当忘れたの?』
隣の席から結が話しかけてきた
『い、いや持ってきたよ』
結に言われてリュックからお弁当を出した
『お弁当お弁当嬉しいな~♪』
結は鼻歌を歌いながら、何かを探している
お弁当箱は机の上に出ているが?
『やっぱりない!』
『なにが?』
『スマホ!体育館に置いてきた…志知、取りに行くの付き合ってぇ』
手を合わせて私に拝んでいる
『うん、いいよ。着替えた時かな?』
『そうかも?』
すぐに立ち上がり、教室を出た

『ごめんね、付き合わせて』
『いいよいいよ』
何となく教室に居づらかったし…丁度良かったかも。

『そういえば教室に戻って来た時、雪弥とやけに離れてたけど喧嘩でもした?』

よく見てるなぁ…

『ううん…喧嘩はしてないけど』
『なにかあった?』
『うん…階段でね、雪弥に肩組まれて私…恥ずかしくなって「離れて」って強めに言っちゃったの。そしたら謝ってくれたんだけど、その後話さなくなって…私も何だか気不味くて』
私はモジモジしながら結に話した

こんな話、私がしたのははじめて…

『あらあら…雪弥は悪い事したなーって思ってるんだろうね? でも志知の気持ちわかるわぁ』
『え?本当?』
『うん。今までは何でもなかった事でも、意識しちゃうと恥ずかしかったりドキドキしたりするよね』
あ…共感してもらえて嬉しい

『そ、そうなのよ なのに向こうは気にしていないから困っちゃうよ…』
『ん…そうだねぇ ドキドキする事増えるかも?』
『ええ!? 身が持たないよ…』
これは悩みになるのか、わからないけど…私は肩を落とした

『きっと志知の中で、雪弥との距離が中途半端なんだよ。さっさと付き合えば良いのに…』
『えっ…そんなの無理だよ』
『どうして?両思いなのに?』
当たり前の様に言われた言葉に息が止まった…
しばらく結の顔を見てから、息を吐いた
『ふぅ…』
『ま…これは本人同士の問題だよね』
結はそう言いながら、スキップする様に階段を降りて行った

本当に両思いなんだろうか…

私はトボトボ階段を降りた
先に降りて、体育館に向かって歩いていた結、私が追い付くと立ち止まった
『どうしたの?』
『体育館…軽音が練習してる?』
まだ体育館の前ではないが、扉が半分開いているので楽器の音が聞こえていた

あ…そういえば村上爽が言ってた

『大丈夫じゃない?静かに入れば』
結ならいつもそう言うし、誠も居るから大丈夫だと思って私は言った
『え…でも…やめよ』
意外な返事が結から出た

いつもと違うな結…

ゆっくり歩いてはいたが、体育館の前に着いた
私の後ろに結が隠れたので、私が前に出てる形になった

いつもと反対だ

ギターとドラムの音が鳴り止み…
『長瀬、何か用か?』
私に気付いた誠がマイクを通して聞いてきた

は、恥ずかしーーっ

『志知、衣装室行ってスマホ持ってきて…』
『えっ!?一緒に行こうよ、結が行けば誠も怒らないし…』

なに私みたいな事言ってるの?

『おーい!ただの覗きなら帰れ!!』
返事をしない私に、またマイクでキレ気味に言う誠…

『結が…』
『志知、後にしよう…行こ』
私は誠に答えようとしたが、結に止められ…手を引かれて体育館から離れた

また誠を怒らせたかも知れない…

何も言わずに歩いてる結
『結?ちょっと待って…』
声をかけて足を止めさせた
『ん?』
『スマホ、いいの?』
『うん。衣装室にあると思うし、軽音の練習終わってから取りに行くよ』

気持ち悪いぐらい結らしくない

『村上も居たよ?』
『そうだね』
『いや、それだけ…?』

前だったら、少し見て行く!とか言ってる
そもそも誠にさえ、ワガママ言わなかった
さっきも今も絶対おかしい…

『それだけ…だよ? もういいから教室戻ろう』
『待って。なんか…今日の結、村上の事避けてない?いつもと違う気がするよ?』
また歩き出そうとした結の前に立って足止めした
『そう?気のせいだよ…避けてないし』
結は私から目を逸らして答えた

何か隠してる…

『そうかなぁ…いつもは村上を見たらグイグイいってたし、今みたいに誠がいる時は強引に見学させて、とか言ってたよ?さっき廊下で村上に会った時もよそよそしかった…』
『そうかもね… 実は前に戻った…』
顔を伏せて結は答えた

前に戻った?

『どういう意味?前より好きになった、ならわかるけど…戻った?』
村上の事で私に嫉妬までして、どうして良いのかわからなくなる程…今は好きなはずだよね?

『志知…少し玄関で話そうか。』
私の話には答えず、結は玄関の扉を開けて出て行った
私も後ろについて行き、玄関に出て扉を閉めた
生徒や先生達は校内で作業やお昼を食べているので玄関には誰もいない

『私ね もう村上に近付くのやめて、前みたく見てるだけに戻ろうって決めたの。』
『えっ、どうして?』
『村上と音羽が別れたって聞いた時、もしかしたら可能性あるかなーって思ったけど、結局音羽には敵わないなって気付いたし…』
結は私に背中を向けたまま淡々と話した

『でもあの2人は付き合ってなかったし、仲の良い友達なのわかったから… また頑張るって言ってたじゃない?』
『そうなんだけどね…所詮、村上とは次元が違うのよ。だから前みたく見てるだけでいいの』

そんな…
私でもわかるほど村上爽の事、大好きなのに?

『…と言う訳なので、卒業まで推し活頑張るね。』
まだ背中を向けている結…
私の顔を見て話せないのかもしれない
このまま、いつもの様に結の話に頷いて終わらせていいのか…?

『私…納得できないよその話。』
思い切って自分の気持ちを声に出した
『えっ!?』
驚いたのか結は振り返った
『だっておかしいよ…絶対前より村上の事好きになってるよね?次元が違うとか本当に思っている?嘘の言い訳しないでよ…』

こんな言い方したら結が怒るかもしれないけど…
明らかに本心を隠してるのを放っておけない
ここで引き下がったら、今までと同じ…

『嘘の言い訳って… 私にお説教したいの?』
やっぱり少し怒らせてしまったか…

『お説教じゃないよ…私はずっと村上を好きで頑張ってきた結を見てきたの、笑ってキラキラしてる結を知ってるの…だからずっと結の恋が叶います様にって願っていたから、そんな理由じゃ納得出来ない…』

もう怒られても良いから本心を聞きたい

『キラキラって…恥ずかしいな』
『ごめん…』
『別に良いけど』
結は腕組みをしながら私に顔を近付けた

叩かれても、これだけは退かない

『志知のそんな顔はじめて見たかも…わかった、話すよ本当の気持ち』

良かった…

『うん…ありがとう』
何を聞いても結の為なら頑張る

『本当はね…村上に対してどうしたいのかわからなくなったの 今は志知が大切だから、変に関わろうとしてる村上とは私も距離を置こうって考えたの』

なっ…なにそれ?私のせい?
ああ…私がずっと結に守られてばかりだったから、結は我慢するのが当たり前になってるんだ…

『そんなのダメだよ!私の為に我慢ばかり…もう1人で悩まないで話してよ、結も私にそう言うでしょ?結の悩みも私の悩みも一緒に考えよ、村上の事も…』
『…そう言ってくれるのは嬉しいけど、村上は志知が好きなのかも…だったら志知の方が大切だから…村上を…』
結の声が震えて、話すのをやめた…

『私が大切だから村上を諦める?…そんなのおかしいよ、そんなの悲しいよ…。こんなに人を好きになれたのに諦めないで?これからは私も結の力になるから頑張ろうよ。今までごめんね、私が甘えてばかりだった。でも今は結の為なら、前に出れるよ!私がいつでも結を受け止める!』
なぜだか私は少し調子に乗っていた…
だけど今話している事は本心だ

『志知…バカになったの?おかしくて涙出てきたよ…』
結が涙をためながら微笑んだ

『バカでいいよ。結が結らしく居てくれるなら』
『偉そうに…ぷぷ これから泣きついたりするかもよ?』
『うん、任せて!』
『わかった…頼りないけど志知に甘えるよ』

私と結はその後、抱き合った
少し肌寒い玄関も2人で抱き合っていたら暖かい…


『やっと見付けた!…って何してるんだお前ら?』
玄関の扉が開いて…
入って来たのはお弁当箱を持った雪弥

『ぷっ…なんでお弁当箱持ってるの?』
結が笑いながら雪弥に言った
『ゆ、結には関係ない…志知にオカズ分けようと思って探してた』
『私に?』
『うん…さっきのお詫び』
雪弥、気を使って…本当いつも優しい
『ありがとう…』

あ…そういえば私のお弁当箱、どこに忘れてきたのかな?

『いっただき!』
結が雪弥のお弁当箱を奪って走り去った
『ゆ、結!!』
雪弥も結を追い掛けて行った…

あら…

玄関に取り残された…
でも寂しくはない。
多分結とわかり合えたからだ…
これからが本当の親友なのかもしれない

そして少しずつ自分を成長させていこう
まだまだ甘ったれで、すぐ泣くけど…
みんなも頑張っているんだ
私も一杯頑張ろう!

まずは日曜日の演劇でクシナダヒメを頑張るぞ!!









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