失創エデン

法月杏

文字の大きさ
8 / 8

あとがきという名の余談とオマケ

しおりを挟む

 失創エデンをお読み頂き、誠にありがとうございました。

 この『失創エデン』という名を冠した創作、元々は全く違う主人公の視点で描かれる異能戦争モノでした。
 シロという白髪赤目の少年主人公が楽園で目を覚まし、現実の自分に何があったかを少しずつ思い出して行きながら楽園からの帰還を目指す、というのが本来の失創エデンの本編。法月が語る崩壊前の楽園のことはこのシロがいる間の話ですね。
 そしてシロ視点では法月は黒幕でした。何せ楽園を作った張本人であり、現実に絶対に戻りたくない派閥の人なので。


 ただまあなんというか色々あって、2020年辺りに一度失創エデン自体を畳んでしまうかどうかで悩みまして。
 その結果、法月とあと二人(作中出てくる抹茶ラテの人&灯璻の目撃情報くれる友人)を残してあとの全員が居なくなったことにして、法月視点で終末となった楽園の話を書くか、となり、数年越しに書き上げたのがこの話になります。
 まさかこんな形で本編が生まれると思っていなかったため自分でも驚きつつ、大満足の顔をしています。好きな創作の本編があるのはやはりとても嬉しい。


 ところでこの創作には現実世界(登場人物達の肉体がある世界。普通の現代日本)と、楽園(法月が作り出した異次元の世界。各々が現実世界で生み出した創作作品を元にした異能が使える)があり、今回書いた話では更にラストで辿り着いたもうひとつの楽園、紅雨世界(法月の自創作の世界。法月の異能の元)が出てきます。
 そして法月本人視点だと分かりにくいのですが、実は裏設定として灯璻と共に喫茶店の扉をくぐったあとの彼岸花の道は本当に黄泉への道で、紅雨世界に辿り着いた時には現実の法月の肉体は死んでいる、というのがありました。

 楽園にいる間は生命活動はしている(楽園は本来は睡眠時に訪れる場所で、現実と楽園との記憶の共有はされない。帰る気がなく長期間楽園に留まる者は現実では生きてはいるが目覚めない状態になる)といった感じなので、楽園に引きこもっている間は現実の法月も生きてはいたのですが、紅雨世界に辿り着き意識を失った際に現実の肉体が機能停止していました。紅雨世界で灯璻の姿をしていたのは、法月という器を手放したから。
 なので捉えようによってはメリバともとれるエンドになっているような気がします。

 ただ大好きな紅雨世界で生きていくことを選んで、その先で人生で一番愛した人(法月と同じような形で紅雨世界に辿り着いた焔)と再会し、大好きな人達と一緒に息をし続ける、というのは現実が地獄だった法月にとってこれ以上ないくらい幸せなことなので、実質ハッピーエンドじゃないかと思っています。
 書きながら思いましたがこれあれですね、作者の理想の死に方の話でしたね。こんな風にして現世を離れられたらいいのにな。

 そういえば、法月が離れても荒廃した楽園自体は残るので友人二人は現実を生きながらもたまに訪れたり、だんだん訪れなくなったりなどするんじゃないでしょうか。
 紅雨世界に行ってからの法月も、もしかしたらまた楽園に現れたりするかもしれない。本体というか魂というかの居場所が現実から紅雨へと変わっただけなので、両方と繋がる楽園への意識の出入りは可能なはずなんですよね。

 ちなみに楽園で死んでも現実で死ぬわけじゃないので、法月がブチギレて世界を壊した時に殺された人達は現実ではピンピンしています。例えるならばこう、楽園という会員登録必須のサイトで運営にアカウントを消されたのでアクセス権を失った、みたいな感じです。その上で新規登録を完全停止した状態、みたいなのがこの話での荒廃した楽園でした。

 それでいうとサイト管理人の分身バグみたいな存在の灯璻さん。だいぶ謎めいた感じでしたが、法月の言っていた通り楽園の外へ出たい、過去に縋るだけの今を変えたい、でも現実には帰りたくない、と思っていた法月が生み出した分身でした。案内人であり眷属、という存在を法月が無意識で創造していた。あと一人で喋っていた、もある意味正しいのですが友人が目撃している通り楽園内では実体のある別個体なので、幻とかでは無いです。
 そして思考が読めなかったのは灯璻側は自我がまだない人工物だったからです。アンドロイドみたいな感じなので出力が全自動で、灯璻自身は何も考えてないようなものだった。(ちなみに意識共有が一方通行なことの元ネタというかは解離性同一性障害の交代人格の方は主人格の記憶も持ってる、のそれ)
 そしてその無感情人外なことをなんとなく察していた法月は紅雨世界での表向きの灯璻としてのデフォルトの振る舞いをわんこ系ベースで若干アンドロイドちっくにしていたりします。焔の前だとつい法月が出ちゃうんですけど。

 あとこれは狙ったわけではなく本当に偶然なのですが、荒廃した楽園で一人(と相棒の遺体)で喫茶店を拠点としていたところから、新たに紅雨世界で生きていく舞台が(生きてる相棒含め)人で賑わう喫茶店になるの、良いなって……。
 この話の構想を練る前から別々で決まっていた舞台が、何故か綺麗に繋がっていたんですよね。おかげで泥水と美味しい珈琲の対比が発生したという。偶然……(偶然)

 ……と余談がありすぎて気を抜くと本文より文字数多くなりそうなので、この辺にしておきます。

 改めてここまで読んでくださった方、ありがとうございました。『紅雨』は実際に法月が連載している長編なので、気になって頂けましたら是非そちらもよろしくお願い致します。








おまけ 人物ざっくりまとめ

◆法月

俺。楽園の創造主でありぶっ壊した張本人。楽園での姿が華奢で長髪タレ目泣きぼくろ僕っ子美人なため、楽園の全盛期は紅一点と言われチヤホヤされていた。(周りが全員男だった故)
精神疾患持ちのガチのヤンデレ。機能不全毒家庭サバイバー。
その経験からか、過酷な環境に耐え忍んで生き延びる忍者(忍び)が大好きで、異能の元となった自創作『紅雨』も忍びの話。対象者の思う悪夢や実際のトラウマを強制上映する空間に飛ばす異能持ち。


◆焔

法月と二人で最凶コンビと呼ばれていた相棒。掴みどころのない飄々とした性格で、猫のように気まぐれ。貼り付けたような笑顔と片目隠れとパーカーが特徴の男。胡散臭い。水を操作する異能持ち。
自分から法月に近づいたが想定外の愛され方をしてしまい、最終的に殺されて遺体を監禁される可哀想な人。わざわざ目の前で死んでトラウマ植え付けようとするようなサイコパスなのが悪かったと思う。でも実際は不器用で小心者なだけだったり。


◆灯璻

法月の生み出した案内人兼眷属。本人は神の使いを自称している。
白髪赤メッシュ緑眼で中性的な少年のような見た目。敬語ぼくっ子あざとわんこ系。
紅雨世界で法月の器となったが、次第に灯璻としての自我が生まれたり生まれなかったり……?


◆古馴染み

とにかく抹茶が好きな男。目が死んでるハイテンションロリコン。動物と話せる異能持ち。
闇が深いからこその穏やかさと人当たりの良さを持つ。顔が広く友達も多い。
楽園全盛期も戦争には参加せず中立を貫いて傍観していた。平和主義。


◆友人

ちょっと過保護気味な法月セコム。黒髪眼帯お兄さん。自分のことを詮索されるのが嫌いなためわりと何もかもがミステリアス。だが身内に甘いことだけはダダ漏れている。
楽園全盛期はもちろん法月と同じ陣営で戦争に参加していた。実は人外。


◆探偵二人組

明るいポジティブ眼鏡(水色髪)とクールに見えるノリの良い変態紳士(緑髪)の謎の男二人組。かなり仲良しで互いを相棒やら親友やらと当然のように呼んでいる。
紅雨世界での灯璻(法月)の祖父がやっていたらしい喫茶店と探偵事務所を引き継いだ。何やらワケありで稼がないといけないらしく基本どんな依頼でも引き受ける。
やたら諜報力があるのは実は忍びだから。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...