騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

agapē【アガペー】

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【ウィルフレッドside】手紙がもたらした変化



「アバンス騎士団長様は、この一年の間毎日手紙を送ってくださったんです」

「毎日だと!?」




一年・・・一歩間違えばしつこい男だっただろうな・・・
少しでもレティシア嬢に気持ちが届けばと
この気持ちが届かなくても、レティシア嬢が俺のものにならなくても・・・この愛しい気持ちと出会えた喜びを無にする事はできなかった




「えぇ、まぁ、辺境まで離れていますから、数日分まとめて届く事もありました。しかし、毎日書かれていた事がよくわかるものでしたわ。この一年で何通きたと思います?400通ですよ?おかしいですよね?一年は365日しかないのに400通。後の35通は何故多いのでしょう・・・ふふっ、1日に2通書かれていた日もありましたの」




俺、400通も書いていたのか・・・
そうだよな、毎日書いた
レティシア嬢を考えない日など1日もなかったからな
しかしその35通・・・ふっ、俺は何をやってるんだろうな
忙しい中にも月に2、3度はきちんとした休みを取る
以前はただ屋敷にいてのんびりしたり、ブルーノを連れて遠出をしたりして過ごしていただけだった
だが、そんな1日の中にレティシア嬢が浮かんでくる
これまでには無かった事だった
騎士団の仕事をしていれば、忙しさに流されている事もあったが、休みに一人でいるとどうしても彼女の事を考えてしまった
だから気付かぬうちに手紙が増えたのだな・・・





「こそこそと文通していたと言うのか・・・」




文通か・・・
返事が返ってきていたら俺は舞い上がっていただろうな
今、こんなに周りの目を気にせず抱きしめるなどしなかっただろう




「私の手紙には返してきていたではないか!」




殿下も手紙を・・・しかも、返事を?俺は貰えなかったのに・・・




「えぇ、王族からの手紙を無視するわけにはいきませんもの。きちんとお断りの内容でお返事しましたでしょう?」

「くっ・・・」




断りの返事?

・・・そうか・・・そうなのか・・・王族だから

俺の手紙に返事はなかったが、断る事はされなかった

最初から受け入れられていたのか?

いや、そんな事はない。辺境で最後に会った彼女は、俺に対して気持ちなど一切なかった。だが、この一年で何の心境の変化があったのだ?

俺、何かしたか?




「アバンス団長様くらいのお方なら女性は放ってはおきませんでしょう?手紙だって、いくらだって何とでも書けますわ。でも、裏切らない真実がありますの」




レティシア嬢に送った手紙には嘘も偽りもなかった

格好悪くても、全てを曝け出す方がいいと思ったからだ

元々好かれてなどはいなかった

怒られてばかりで、呆れられてばかりで

隠し事はしたくなかったし、寂しい、会いたい、抱きしめたいと気持ちを曝け出した

しかし、裏切らない真実とはなんだ?彼女は何かを確かめたのか?それが彼女の気持ちを変えたのだろうか・・・変えることができたと言うことなのだろうか

あっ・・・

髪を梳かれて・・・まるで甘えている事を許されているみたいな気持ちになるな

彼女に甘えていいのは俺だけだと、許されているみたいだ




「無茶をして、倒れ込むまで鍛錬して自分を追い込んでいたみたいなのです」




王都に戻ってからは、レティシア嬢に関わる事は何もなかった

彼女に恥じない自分でいたい

辺境の騎士に勝てるか

それがレティシア嬢から出された課題だと言うかのように、自分の中の指標となった

毎日倒れ込むまで剣を振るった

それしかなかった。それに縋って自分を奮い立たせるしかなかった




「夜会の前に他の騎士様達に聞きましたら本当でしたわ。騎士団長が自分の体調の管理もせずに鍛錬にあけくれるなんて、なんて考えなしなんでしょう」




・・・その通りだな・・・

返す言葉が見つからない

鍛錬していたのは騎士団長としてではなく、ただの邪念しかない一人の男としてだった

しかし、騎士達に会ったのか・・・

少し妬けてしまうな

会いたくて仕方がなかった俺は会えないのに、望んでもいなかった奴らはレティシア嬢に声をかけて貰えたなんて・・・

これが嫉妬か・・・




「もしも緊急の事態が起きて駆けつけられないなんて事があったら・・・騎士団長失格ですわよ?わかってますか、アバンス騎士団長様?」




怒られ・・・た・・・

でも嬉しい・・・

彼女が怒っているのはいい事ではないのだろうが、その感情を向けられているのが嬉しい

この1年間、その声さえ聞けなかったのだから




「でも、それは私がけしかけてしまった事なんです。辺境の騎士に勝てますかって。もちろんアバンス団長様はお強いですわ。でも、辺境の騎士達と手合わせして、危機感を覚えたのだと思います。この一年、無茶な鍛錬を続けてきたのはそれが原因なんですの。それだけ私の言葉が彼の中にあったという事です。嬉しかったんです」




嬉しかった・・・?

俺がレティシア嬢の言葉を気にした事がか?

俺は彼女の中に何かを残せたと言うことなのだろうか・・・

この一年耐えた俺、鍛錬し続けた俺を褒めたい

無駄じゃなかったんだな・・・




-----------------


次回

手紙の内容も素敵でしたわ


感想 1

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